白石加代子・主演 KAAT キッズ・プログラム 2022 『さいごの1つ前』
KAAT キッズ・プログラム 2022 『さいごの1つ前』が8月10日(水)に初日を迎え、作・演出の松井周、主人公・カオルを演じる白石加代子からの初日コメントが届いた。
劇作家・演出家の松井周が、自身初となるキッズ・プログラムの創作を手がけ、出演は白石加代子、久保井研、薬丸翔、湯川ひな。
松井が本作で描くのは、「記憶」にまつわる物語。人間にとって「記憶」や「思い出」が持つ意味や価値とは何か――。さらには、「生きる」ことの定義やその喜びとは何か――など、人間の「生と死」について、こどもたちとともに思いを巡らせる。
松井周・コメント
子どもたちがとても真剣に、そして楽しそうに観てくれていて、とてもよかったです。
戯曲にも子どもたちとやりとりするところがあって、そこは半分白紙状態のようにしていましたが、白石さんはじめ演者の皆さんが客席を丸ごと包み込む勢いで楽しそうに演じてくれていて、自分の想像を超える舞台になっていました。
子どもが冒険する、ちょっと知らない世界に足を踏み入れることは、ちょっと怖かったり、 わくわくしたりする。そういう気持ちが客席にあると、自分もそういう気持ちになって、ま た新たに冒険しようという気持ちになりました。
半分の世界を俳優が創って、残りの半分を観客が創っている、まさにライブのようになったこともよかったです。物語を書いた私自身が、こんな物語だったっけ、と新しい物語を発見しているような気持ちにもなりました。
コロナ禍で初日を迎えることができたことは奇跡のようなことで、皆さんのおかげだと感謝しています。
コロナであれもしてはいけない、これもしてはいけないという中で、劇場に行って異世界 に冒険することを楽しんでほしいと思います。
白石加代子・コメント
今日はたくさんのお子さんに観ていただいたことをとても感謝しています。
子どもたちと一緒に一つの空間を立ち上げることは初めてです。舞台に立って、子どもたちの姿が見えるととても元気をもらいます。
舞台は、自分で発電機のように元気を出していくものですけれど、客席から大好き なお子さんたちの笑い声を聞くことができ、心身をくすぐっていただいたような楽しい経験でした。
記憶の薄くなった人と、その人を元気づけようとしてあの世とこの世の境目で話をする言葉は、意識のとっても不思議な所へ入っていくようなセリフで、大人も考えさせるような内容ですけれど、何かを潜り抜けて助け合いたいという気持ちは、子どもたちにもしっかりと伝わったと思いました。大人にも子どもにも届く作品だと思います。この舞台がどういう風に子どもたちの心の中に残って、大人になってから思い出してどんな風に感じるか、とても楽しみです。
今日はKAATの舞台ですごい宝物をいただきました。たくさんのお子様と大人の方に観ていただきたい作品です。
KAAT キッズ・プログラム 2022 『さいごの1つ前』
2022年8月10日(水)~21日(日) KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>
ストーリー: ここは天国と地獄の分かれ道。女・Kはそこで忘れ物をして立ち往生している。
天国に行くには「生きていた頃の記憶」が必要なのだという。Kの忘れ物はその記憶だ。
どうやら彼女は記憶喪失のゆうれいらしい。Kは逆戻りして記憶を取り戻そうとする。そのためには生きているこどもたち(観客)の意見もヒントにしてみようとする。彼女の周りには、同じように天国行きの乗り物に乗ろうとして記憶を取り戻せない青年や、地獄に行きたいと言い張る少女が集まってくる。
Kはどうやら認知症を患っていて、ニセの記憶も混じっている。集まった人間たちはKのために知恵を絞る。しかし、ふと現れた怪しい男に翻弄されて、Kはなかなか記憶を取り戻せない。Kは無事天国へ旅立つことができるのか?
掲載写真すべて撮影:宮川舞子