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実力派俳優が本気で観客を騙しにかかる―加藤和樹主演舞台『罠』の騙される爽快感

2017/7/14 01:55

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

2009年の初演で絶賛の嵐を巻き起こし、7年ぶり3度目の再演となる加藤和樹主演舞台『罠』。開演を翌日に控えた712日、東京・かめありリリオホールで行われたゲネプロがマスコミ向けに公開され、加藤和樹、白石美帆、筒井道隆、そして演出の深作健太氏が囲み取材に顔を揃えた。

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時を刻む柱時計の音。低く流れるトランペットのジャズの音色。マイルス・デイヴィスの名曲「シャンゼリゼの夜(Nuit sur les Champs-Elysees)」だ。ふと演奏が途切れると、突然鋭利な刃物が空間を切り裂くように響き渡るクレーメルのヴァイオリン音色がピアソラのタンゴのリズムと相まって、緊迫感を高め、観客は一気に物語の中に引き込まれる。

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フランスの劇作家ロベール・トマによる同作。フランス戯曲の最高傑作とも称されたサイコサスペンスだ。物語は見知らぬ女(白石美帆)が、行方不明になったダニエルの妻・エリザベートの名を語り突然家に入り込んでくることから始まる。

そこに届いたのは彼女の叔父が病に倒れ、多額の遺産がエリザベートに残されたという知らせ。こんな女は知らない、この女は詐欺師だと言い張るダニエル、夫は記憶障害で妻の私を忘れているのだと主張するエリザベート。息をつかせぬ展開で、観客は心理的な緊迫感と罠にはまっていく恐怖を感じながら主人公と共に追いつめられていく。主人公・ダニエルを演じる加藤自身も初演の時は、物語に入り込みすぎて「稽古場に行きたくなくなるほど、人間不信になったりしました」と語るほどだ。

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登場人物はたったの6人。場面転換もなく主役の加藤は2時間を通して出ずっぱり。とそれでもなお、物語に惹き付けられ、あっという間の2時間と感じるのは、巧みなプロットもさることながら、実力派の俳優陣が集結しているからだろう。

演出の深作氏が「裏の裏、そして表にも何枚もの層を積み重ねて厚みのある人物像を一人ひとりが作り上げている」と語る通り、登場人物全てに存在感とキャラクターとしての深みを感じる。とりわけ加藤演じるダニエルの怒り、不安と焦燥、狂気、そして深い絶望感から閉ざしていた心のガードを解いてしまうダニエルの心理的な変化の演技は圧巻だ。今回エリザベートを演じるのが2度目となる白石も、深作氏が核となる部分の解釈を深く掘り下げてくれたため役柄に対する理解が五感を通じて深まったという。

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昨年11月にV6・長野博と結婚しプライベートでも新妻である白石。報道陣から「結婚が役作りにいい影響を与えたのでは?」と質問され「1960年代のフランス人(の役)なので、全くの別人ですね」と答えていたが、夫役の加藤が語るように「8年前(白石が演じたエリザベート)はクールで怖いという印象があったんですけど、今回とてもキュートなんです。ダニエルとしては可愛ければ可愛いほどイラっとする」と話していたが、観客としても可愛さとその裏の顔のギャップにより恐怖を感じ、ストーリーに説得力が増していた。会見でもやわらかい表情をし、幸せオーラで輝いていた白石。結婚が与えた良い影響は少なからずあったのではないだろうか。

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ちなみに加藤は、昨年のエイプリルフールに中村勘九郎からどぎつい嘘をつかれ、「うわー、やられた」となったらしい。「役者さんにここまで巧みにやられると怖いですね」と話していたが、観客は今回の舞台で同じような気分を味わえるかもしれない。

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不条理の連続の中で、ダニエルがもがき苦しむ様は、巨大な蜘蛛の糸に絡めとられて身動きができなくなっていく獲物のようだ。観客は主人公ダニエルと共に見えない敵が仕掛けた罠の中に一緒になって翻弄されていく。望みを絶たれ、息苦しさに耐え切れなくなった時、思いもかけない形で救いはやってくる。衝撃のラストシーンでこれまで築いてきた物語の登場人物と観客の心理的な絆が見事なまでに覆される。それは爽快感すら伴っていた。

実力ある役者が本気で観客を騙しにかかるこの舞台。13日にかめありリリオホールで開演後、88日から15日まで池袋・サンシャイン劇場で上演される。

公式HP http://wana2017.jp/

 

 

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