
ゆらぎやすい女子高生の友情と複雑な心情を描き、その繊細な心理描写が各メディアで絶賛された柚木麻子のデビュー作「終点のあの子」(文春文庫)が映画化、2026年に劇場公開される。
「終点のあの子」は、2008年に第88回オール讀物新人賞を受賞した短編「フォーゲットミー、ノットブルー」を第一話においた全四編からなる連作集で、世田谷区小田急線沿線にある私立女子高校に進学したばかりの少女たちが登場する。第一話は、中学校から上がってきた内部生の希代子と外部生の朱里(あかり)が主人公。第二話は、朱里に親友の希代子を取られた奈津子を主軸にした物語。第三話は3人のクラスメイトでもあり、リーダー格の華やかな美人、恭子に焦点をあて、第四話はそんな彼女らの7年後の話となる。映画では、第一話の「フォーゲットミー、ノットブルー」に注力している。
入学式の日。中学からの内部進学者の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマンだった。希代子は風変わりな朱里が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、ある変化が訪れるー。
本作で主人公、希代子と朱里を演じるのは、當真あみと中島セナ。當真は「自分も何者かになりたい」という気持ちを抱き、今とは違う場所に身を置きたいと思っている希代子をまっすぐな存在感で体現している。一方、希代子が惹かれる朱里に扮した中島は、自由奔放で他のクラスメイトとは異なる、知的で大人びた風格と孤高さを纏った朱里とまさに同化したような実在感を作品に刻んでいる。
そして、希代子と朱里の同級生、奈津子と恭子に扮するのは、平澤宏々路、南琴奈。
狭い世界に固執する私立女子校を舞台とし、痛くて切ない青春時代を魅力的に共感させてくれる本作の監督を務めたのは、『好きでもないくせに』(16)や『愛の病』(18)などで知られ、2021年には、ロッテルダム国際映画際に招待され話題を呼んだ『Sexual Drive』など、これまで女性を主体的に描いてきた吉田浩太。
本作は、女性を多角的に描き続けている柚木麻子の小説を原作に、今後の日本映画を担う次世代の役者陣を起用し、文学作品初挑戦にして吉田監督の新境地となる作品。これまでの“青春映画”とは一線を画す作風が評価され、今年の6月13日より中国・上海で開催される第27回上海国際映画祭のGALA部門でのワールドプレミア上映が決定した。映画『終点のあの子』は2026年に劇場公開。
吉田浩太監督 コメント
今から10年以上前に柚木麻子先生の小説「終点のあの子」を読みました。自分は男性かつ既に思春期は過ぎてしまいましたが、女子高校生である登場人物たちの行動や気持ちに痛いほど共感したことを覚えています。小説で描かれる若者特有の感情はとても普遍的であり、その普遍さによって自分の心は強く動かされ、すぐに映画にしてみたい衝動に駆られました。原作として向き合い続けた故、映画化へのプロセスはとても長いものになりましたが、當真あみさん、中島セナさんという今の時代を象徴とする若く素晴らしい感受性に満ちた二人に主役を演じてもらえたことで、この小説が持つ瑞々しい普遍的な「終点のあの子」の世界を映像化することが出来たと思っております。
映画『終点のあの子』は、初めて小説を読んでから10年以上経て念願叶って映画にすることが出来た、自分にとって奇跡のような映画です。この度、上海国際映画祭でワールドプレミア上映が出来ることを大変光栄に思っております。
《Story》 私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と奈津子は、通学の途中で青い服を着た見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から外部生として入学してきた朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた朱里を希代子は気になって仕方がない。
朱里は学校では浮いた存在でありつつも、羨望の眼差しで見られていた。希代子は朱里と一緒に共に時間を過ごすような仲になり、「親密な関係」になったと思っていた矢先、希代子は朱里の日記帳を見つけるーーー。
映画『終点のあの子』 2026年全国公開
原作:柚木麻子『終点のあの子』(文春文庫)
監督・脚本:吉田浩太
出演:當真あみ、中島セナ、平澤宏々路、南琴奈
配給:グラスゴー15 ©2025「終点のあの子」製作委員会