
第34回日本映画批評家大賞受賞式典が6月9日(月) に東京国際フォーラムで行われ、主演男優賞に吉沢亮(『ぼくが生きてる、ふたつの世界』)、主演女優賞に河合優実(『あんのこと』)が受賞した。
吉沢は「このような栄誉ある賞をいただき光栄です。呉美保監督とはご一緒する機会があれば嬉しいなと憧れていました。この作品『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では、助演女優賞(忍足亜希子)、編集賞(田端華子)、作品賞と合わせて4つの賞をいただき、自分の関わらせていただいた作品がこのような形で評価いただき、この上ない喜びを感じております。これからもこの賞に恥じないよう芝居と向き合っていきます」とコメントした。
選考委員から受賞理由について「手話の演技は、まさにCODAの人の手話だということに驚いたこと。彼の演技はまだ原石で、もっと磨いて輝いてほしい」と激励。
吉沢は「この作品に関わらせていただくにあたって、手話に関しては0からのスタート。コミュニケーションなので、ただ覚えるわけではなく、手話を使いながら、芝居を構築していくのが難しいと思いながら・・・。でも手話指導の方たち、お母さん役の忍足さんだったり、本当に温かく支えてくださって、そのお陰でどうにかカタチにすることができ、本当に皆様のおかげで今日はこの場に立てております」と述懐した。
学生時代を演じた吉沢だが、役作りについて「監督からはもうちょっと声を高くするようずっと言われていて、当時30歳になった年で15歳を演じるんです。恥ずかしいというより、申し訳ないみたいな。とにかく自分の出る限界のキーを狙いながら演じました」と苦心した点を明かした。
続いて、主演女優賞に輝いた河合は「この度は、素敵な賞をありがとうございます。『あんのこと』を撮っているときは、1つ1つのカットに臨む際にどれだけ心と体を捧げられているかを大切にしていました。それが私の演じた彼女を守りながらスクリーンに残すことなのかと思っていたので、まずは真摯に自分が毎日現場に行って作ることに務めていました。こういう形で評価していただき、たくさんの方に観ていただいたことは、すごく有難かったですし、この素晴らしいスタッフ、キャストの皆様が誇りに思えるような作品になったと思います。これからも自分が映画を作ることが、世界にとっていい働きかけになっら嬉しいので、これからも頑張って続けていきたいと思います」と挨拶、さらに前を向いていた。
選考委員より選考理由について「吸引力がありました。入江監督が『役へのアプローチ、演技は、全部河合さんに任せていた』というとおり、まさに心と体を捧げて演技された。希望や絶望を言葉少なく表現するあんちゃん。印象に残っているのが、あんちゃんの照れた顔。笑顔だからこそ、この映画のメッセージをすごく示していると思いました。『ナミビアの砂漠』を筆頭に目白押しの河合さん。この賞がゴールでもないし、この賞がご自身のピークではない。ご自身が一番分かっている河合さんだからこそ、主演女優賞を差し上げたいと思いました」と河合を称賛した。
河合は「いろんな作品に関わる度にフィレッシュな気持ちでいたいし、いいものを皆さんに届けたいなと思っているので、この受賞は嬉しかったです」と喜びを噛みしめていた。
1991年に水野晴郎が発起人となり、淀川長治、小森和子といった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された、映画人が映画人に贈る賞が「日本映画批評家大賞」。映画批評家たち選考員の独自の視点によって厳密に選定した16賞18組に授与。主演男優賞、主演女優賞のほか、助演男優賞に綾野剛(『まる』)、森優作(『ミッシング』)の二人、助演女優賞に忍足亜希子(『ぼくが生きてる、ふたつの世界』)、新人男優賞(南俊子賞)に齋藤潤(『カラオケ行こ!』)と本山力(『十一人の賊軍』)の二人、新人女優賞(小森和子賞)に長澤樹(『愛のゆくえ』)が受賞。また、作品賞には『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)、監督賞に入江悠監督(『あんのこと』)、ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)には根岸季依(『サユリ』)が受賞した。