
岸井ゆきの・宮沢氷魚のW主演、天野千尋監督による映画『佐藤さんと佐藤さん』が第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門に公式出品。公開に先駆け10月30日(木)に東京国際映画祭での上映と完成披露舞台挨拶が実施され、岸井ゆきの、宮沢氷魚、そして天野千尋監督が登壇した。
本作は、“夫婦”という誰にとっても人生において一度は考えるテーマを軸に、人と人との関係を丁寧に、そしてヒリヒリするくらいリアルに描いたオリジナルストーリー。苗字が“佐藤”同士のサチとタモツが、交際、結婚、出産を経て歩んだ15年間を丁寧に描き出す。

この日の映画祭での上映が一般の観客への初めてのお披露目となり、岸井は「とても緊張しているんですけど、同時にすごく嬉しい気持ちでいっぱいです。きっと面白いと思います!」と出来栄えに自信をのぞかせ「たぶん、この映画は自分のことを話したくなったり、自分のことを振り返ってみて『こんなことあったな』って思える映画になっていると思うので、帰り道に誰かと話したいなっていう気持ちになっていただければと思っています」と語った。
宮沢も「1年以上前に撮影したんですけど。ようやく今日、皆様に観ていただけるということで、ようやくスタートラインに立てたのかなという気持ちがすごくあって、今日を迎えるのが楽しみでした」と晴れ晴れとした表情を見せた。
同じ“佐藤”の名字を持つサチとタモツの15年の軌跡を描く本作だが、岸井と宮沢は今回が初共演。お互いの印象について岸井は「初共演だったんですけど、本読みで初めてお会いしたときから『絶対会ったことあるよね?』みたいな印象があって…。(会ったことは)ないんですけど(笑)。それくらい、驚きのない空気感というか本当に自然にお互いのことを楽に話せるような関係性がすぐにできたので、お芝居に没入しやすかったです」と振り返った。
岸井は、宮沢の人間性について「本当に優しくて穏やかなので、ピリつく現場も時にはあるんですけど、そういうことは起こらないだろうなっていう安心感もありました。本当に穏やかな時間を一緒に過ごさせていただきました」と語り、宮沢は「ちょっと恥ずかしいです」と照れくさそうに笑みを浮かべた。

宮沢も「クランクインする前から、ゆきのちゃんの作品はたくさん観てきて、本当に魅力的な女優さんだなというふうに思っていました。共通の知り合いがいて、『ゆきのちゃんは本当に素晴らしいよ。本当に優しくて魅力的なんだよ』という話は聞いていたんです。本読みの日に初めてお会いして、僕の想像していたゆきのちゃんよりも遥かに優しくて、太陽のような存在でした」と絶賛した。
物語の魅力について、岸井が「約2時間の脚本で、この15年をギュッと詰め込めるのってすごいこと。物語が決して大雑把ではなく、すごく些細なことを大切に描いていて、私は『この世界に入りたい』と思いました。実生活では体験したことのない夫婦生活というものをここで垣間見ることができるかもしれないと思ったし、演じるのが楽しみになった脚本でした」と語ると、宮沢も「とにかく脚本が丁寧で、15年のスパンを描いているので、ピックアップする部分は本当にごくわずかなんですけど、それがきれいに線を結ぶように繋がっていたんです。僕は読んでいて、描かれていない空白の時間、そして2人がその先に歩む人生というものがどういうものなのか? すごく興味がわいてきて『この世界の一員になりたい』、『タモツという人物を演じたい』という思いがふつふつと高まりました」と語り、脚本を読んだ段階から強く惹きつけられたことを明かした。
二人のキャスティングについて、天野監督は「私も二人の作品をたくさん観てきて、二人が好きでオファーしたんですが、実際にサチとタモツを演じてもらったら想像以上に良くてよかったです!」と手放しで称賛。岸井について、天野監督は「本当にお芝居の密度が濃くて、一個も嘘やごまかしがない芝居をメチャクチャ力強くやってくれるんです。『サチってこんなに力強い人だったんだ!』と改めて知るみたいなことがたくさんありました。サチはデリカシーがないところや、突っ走っちゃうところがあって(笑)、下手したら嫌なヤツに見えかねないんですけど、岸井さんはチャーミングで愛嬌があるので、サチを許せてしまうキャラクターにしてくれました」と岸井の表現力を称えた。
一方、宮沢に関しては「クールな役をやられている姿をよく拝見していたんですけど、(本作のタモツは)ちょっと情けないんですね。こういう情けない役を氷魚くんに演じてもらったら、面白いんじゃないか。実際にタモツを見たら、本当に面白いし、このクールなビジュアルだからこそ、情けなさが愛おしく見えて、脚本になかったタモツ像が見えてきました」とギャップによる魅力を強調した。
映画『佐藤さんと佐藤さん』 11月28日(金) 全国公開
配給:ポニーキャニオン ©2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会

