
映画『架空の犬と嘘をつく猫』の完成披露上映会が12月10日(水) に都内映画館で行われ、主演の高杉真宙、共演の伊藤万理華、深川麻衣、安藤裕子、向里祐香、安田顕、そして森ガキ侑大監督が登壇した。
原作は、『川のほとりに立つ者は』で本屋大賞にノミネートされた寺地はるなの同名小説。弟の死により現実を見なくなった母親を筆頭に、家族誰もが”不都合な真実“から目をそらし、それぞれの嘘を重ねながら、それでもなお一緒に暮らしている“機能不全”の羽猫家の約30年間を描いた物語は、不完全で、やっかいで、でもどこか愛おしい―そんな家族のかたちを、森ガキ侑大監督が丁寧に紡ぎ、観る者の心に温かさと優しい希望を届けてくれる。

主演の高杉は「この映画は1年半ぐらい前に撮影、ようやく皆さまに届けられ本当にうれしく思います」とあいさつ。森ガキ監督も「今日は久しぶりに役者陣の皆さんとお会いできて、この映画がようやく皆さんに観ていただけ、熱い気持ちがこみ上げてきました。すごくハートフルな映画になっていると思いますので、今日は楽しんで帰ってください」とコメント。さらに、ヨーロッパ・エストニアで開催された「タリン・ブラックナイト映画祭」で最優秀撮影賞を獲得したことに触れ「これはスタッフ全員と、そして役者の皆さん全員で取れた賞だと思っています。ヨーロッパの方たちからは『すごく詩的で美しい映画だった』と評価していただきました」と誇らしげだった。
本作で高杉が演じる山吹は、他者を思いやるとにかく優しい人物として描かれているが、「彼を演じる中で、その過程は理解できる。きっと“優しい”という言葉が嫌いなんだろうなと思って演じていました」と役柄を分析。さらに「僕自身は“優しい”という言葉はあまり褒め言葉だと思っていないというか…。客観的に見て、『優しい』と言ってもらえることって、意外と自分のためだったりすることも多いですからね」と自身の考えを明かすと、優しいという言葉に込められた深い心理を説いて場内を唸らせていた。
一方、山吹の小学校時代の幼なじみ・頼を演じた伊藤は、高杉とは3度目の共演。「もちろん役によって雰囲気がガラッと変わる方という印象はあるんですけど、高杉さんは高杉さんみたいな」と高杉へ信頼を寄せた。高杉も「でも最初にご一緒した時よりお話することができたと思います。お互い大人になりました(笑)」と撮影を振り返っていた。

山吹の初恋相手・かな子を演じた深川は、自身の役どころについて「分かりやすい言葉を使えば『あざとい』女性のくくりになるかもしれない」と分析。「でもそれだけじゃなくて、小さい頃からの母親との複雑な関係があったり……100%意識していたらあざといになるかもしれないですけど、無意識でやってしまっている部分もあるのかなと。かな子の人生をぜひ見届けてほしいです」と印象的な役柄をアピールした。
劇中でのかな子は、山吹をめぐり、頼と三角関係のような関係性にあるが、実際の二人は大の仲良しだという。役柄上は言葉を交わすシーンは少なかったものの、撮影の合間に一緒に出かけたりもしていたそうで、思わず「あ、そうだったんだ。へえ……」と二人の交流に驚きの表情を見せる高杉の姿に会場はクスクス笑い。伊藤も「同じシーンが少ないからこそかな、という感じです」と笑顔で付け加えていた。
そして山吹の姉・紅を演じた向里は、自身の子ども時代を演じた子役について「幼少期の紅がなんとか家族を繋ぎ止めるよう踏ん張っている感じがあって、常に力が入っている。それがすごく良くて。それを見ているだけで私はもう、グッとしてしまいました」と子役のお芝居に心動かされた様子。さらに、高杉について「本当に好青年ですよね。優しいし」と語るとドッと沸いた会場内。高杉も「(優しいというのは)本当にそうか分からないですよ」と冗談めかしつつ、「そう言ってもらえるのはうれしいです」と素直な笑顔を見せていた。
山吹の母親・雪乃を演じた安藤も「自分も母親なんですけど、こうあるべきではない姿というのを雪乃は辿ってしまうんです。きっと山吹がわたしにかけてくれる優しさが生きる術だったのかなと。普通の愛をあげられなかったのが残念です」と、傷ついたまま現実を受け入れることができなかった雪乃の役柄を語り、雪乃の夫で山吹の父・淳吾役を演じた安田は、なぜ自分に淳吾役をオファーしたのかと森ガキ監督に質問。森ガキ監督は「安田さんはどんな役でもできる方なので、その中で何も言わなくてもちょっと不穏な・ミステリアスな感じを漂わせたいと思った」と安田だからこそのキャスティング理由を告白。その言葉に安田も安心した様子をみせていた。
イベント後半では、映画にちなみ「皆さんがこれまでについた『優しいうそ』を教えてください」というトークコーナーが。向里は「カフェで店員さんにお茶をこぼされて、びしょ濡れになったけど『防水なので大丈夫です』とうそをついた」、また深川は「仕事終わりにマネージャーさんに送ってもらった時に、一緒に乗っていたマネージャーさんのお子さんに『コンビニに住んでいるの?』と聞かれ、夢を壊しちゃいけないと思って『そうだよ、食べ物も飲み物も全部食べ放題なんだよ』とうそをつきました」と告白。安田は「『大丈夫』は魔法の言葉。やばいことがあっても『大丈夫だよ』と言うと安心するじゃないですか。ただし『大丈夫、大丈夫』と2回言うと大丈夫じゃないかもしれない(笑)」と語り、会場を沸かせた。そして森ガキ監督は「テイク2」と回答。「テイク1を撮った時に『今の良かったですよ。もう一回いってみましょう』と言う時の『良かったですよ』は、自分の中での優しいうそなのかな」と現場の裏話を告白。

さらに、伊藤は「嘘というか、みんなが”あぁ〜“ということかなと思うんですけど…」と前置きしつつ「初めて聞いたようなリアクションをした」と回答。その答えを聞いた瞬間、全員が”あぁ〜“とリアクションし、まさに!な反応に場内全体からも共感の声が漏れ、最後に高杉が「タクシー……」と回答。「空港までタクシーに乗った時、運転手さんがすごくおしゃべりな方で、その方の壮絶な人生の話を聞くことに。到着予定時刻がギリギリになって『まずいな』と思ったんですが、そのタイミングで『時間大丈夫?』と聞かれ、話の腰を折るのも悪いなと思って『大丈夫です』と答えました」と述懐。それだけではなく、「タクシーの中で『もうこの人の面白い話を聞けるなら、次の飛行機でもいいかも』と覚悟を決めていました」と付け加えた高杉。結果的には小走りで空港に向かい間に合ったというが、このエピソードに登壇者たちも「優しいを超えていますよ」と高杉の人柄に感嘆しきりだった。
映画『架空の犬と嘘をつく猫』2026年1月9日(金)TOHOシネマズ日比谷 他 全国公開配給:ポニーキャニオン ©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

