
映画『チルド』の初日舞台挨拶が7月17日(金) にTOHOシネマズ 日本橋で行われ、主演の染谷将太、共演の唐田えりか、くるま(令和ロマン)、そして岩崎裕介監督が登壇した。
舞台は東京の片隅にあるコンビニ<エニーマート倉富町7丁目店>。誰もが毎日立ち寄るコンビニの日常が、数ミリずつ静かにズレていく。会話は微妙に噛み合わず、隣にいる人が何を考えているのか分からなくなっていく“じわじわと背筋が冷えていく”88分間を体感できる新感覚の“コンビニエンス・ホラー”。
上映初日を迎えて「終わってみたらなんだか得体の知れない恐怖感に包み込まれていた」「人が生きていく上で一番怖いのは、何をやっても無気力で何も感じなくなること」といった鑑賞する人自らが作品の中に取り込まれているかのようなコメントや、「ガンガン変化球来るから感情がぐちゃぐちゃになった」「ジェットコースターみたいな映画だった」などの声もあがっており、予想を裏切る展開にも観客の期待が高まっている。

舞台挨拶では冒頭、副支店長・堺を演じた染谷は「変幻自在な映画なので、ぜひ楽しんで帰っていただけたらと思います」と挨拶。
岩崎監督は、染谷を起用した理由について「堺は自発的に動くというより、一歩引いた目線で日々を生きるキャラクター。無の状態、ニュートラルな状態でありながら、雄弁でなくてはならない。その佇まいや、無の中にも確かに存在している空気感、虚無や空洞性を目に宿せる方は、染谷さんしかいないと思いました」とコメント。さらに、実際の撮影現場での染谷について「化け物でした」と表現し、「お芝居はもちろん、何も言うことがないほど素晴らしく、“まさにそれだ”というものを出力してくださる。そして現場での存在感のなさというか、“ステルス感”がすごかったんです。『染谷くん、どこ行った?……うわっ、いた!』ということが何度もありました」と明かした。
これに対し染谷は「意識してないです(笑)。目の前のスタッフさんに毎回探されていました」と笑顔で応じ、会場は笑いに包まれた。くるまも「染谷さんの絵かと思っていたら、染谷さんのときがあるんです」と独特な表現で続け、唐田も「みんなで待合室にいる時も、大体柱の横にそっといらっしゃいました」と振り返るなど、染谷の現場での“無”の存在感が次々と明かされた。
また、自身の役作りについて問われた染谷は「監督から『何もない人間でいてほしい』と言っていただいていました」と振り返り、「ただ、カメラの前に立った時点で撮られているわけですから、もう何かをしている。その中で“何もない”ということを表現する、演じないということは、とても難しかったです」と撮影を回顧。しかし一方で「その矛盾を抱えながら演じることがすごく楽しかった。何もなくカメラの前にいるという贅沢を楽しんでいました」と、役と向き合った時間を語った。

唐田は「撮影現場で見ていて、堺という役と染谷さんご本人はすごく似ているのかなと思っていたのですが、取材で『実は全く違う』と聞いて驚きました。それくらい現場では自然に役として存在してくださっていたので、お芝居をしながら学ぶことや引き出されることが本当に多かったです」と振り返り、染谷の役作りが共演者にも大きな刺激を与えていたことを明かした。
続いて自身の役柄について問われた唐田は「小河という役は、コンビニというシステム化された世界の中で、唯一“意思”をしっかり持っている人物だと思っていました。だからこそ、そこを強く意識して演じていました」と語り、“コンビニ”という世界に飲み込まれない異質な存在を模索しながら演じていたことを明かした。
そんな唐田について、主人公・堺を演じた染谷も「この狂っていく世界の中で、小河は唯一無二の存在。その唯一無二な姿が本当に説得力を持って目の前に存在していました。堺とは真逆のキャラクターですが、本当に芯から真逆でいてくださったので、こちらは何もしなくても堺として自然に小河と向き合うことができました。すごく楽しかったです」と絶賛した。

一方、くるまは「染谷さんにはお芝居の相談ではなく、『俳優さんにオファーする時って、どんなメールを書けばいいですか?』という実務的な相談をさせてもらいました(笑)。細かく教えてくださって、本当に“東京のお兄ちゃん”です」と感謝を語った。さらに役柄については「監督と『バイト先にこういう先輩いるよね』と話しながらエピソードを交換し合って出来上がったキャラクターです。『日本のバイト先の先輩の中心』が解き放たれるので、笑い転げてもらえたら」とユーモアたっぷりにコメントし、会場を盛り上げた。これに対し染谷も「人との距離の取り方が絶妙で、何とも言えない“ねちっとした”お芝居がたまらなかったです」と、くるまの演技を絶賛。互いを称え合う和やかなやり取りに、会場は温かな空気に包まれた。
イベント最後は、岩崎監督が「見る人によって受け取るものが全く変わる映画です。正解があると思わず、自分の心に浮かんだ『めっちゃ良かった』でも『つまらなかった』でも、そのまま受け止めてアウトプットしていただけたら嬉しいです」とコメント。
染谷は「間口が広い映画である一方で、一歩踏み込むと無限に考えられるし、感じられる作品だと思います。皆さんに見ていただいて完成する作品だとも強く思うので、見て何か思うことがあったら、周りの人に広めてほしいです。それによって、この『チルド』という作品がより意味を持つものになっていくと思います」と締めくくった。
映画『チルド』 テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
配給:NOTHING NEW ©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

