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ホウ・シャオシェン監督の名作をデジタルリマスター化し公開!その経緯や意義は?配給会社代表にインタビュー

2016/5/15 12:08

2016.05  取材:記事・写真/RanRan Entertainment

 

ホウ・シャオシェン監督の傑作、『冬冬の夏休み』(84)、『恋恋風塵』(87)がデジタルリマスター版として5月21日より渋谷ユーロスペースにて2週間限定で公開されることが決定。2015年にも『黒衣の刺客』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し世界的な存在感を誇るホウ・シャオシェン監督だが、30年余りを経た中期の名作を色鮮やかに蘇った映像で観られるチャンス。今回、外国映画を日本でデジタルリマスターし、それを世界に向けてセールスするという新しい試みに挑戦した日本の配給会社・熱帯美術館の池田史昭取締役にインタビューしてみました。

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―この2作品をデジタル化しようと思ったきっかけは?

2014年にヒューマントラストシネマ渋谷などで「三大映画祭週間2014」という特集上映を開催しました。ヒッチコック、ルイス・ブニュエルといった名監督の作品を10本上映したのですが、その中でもっとも興行成績がよかったのが『恋恋風塵』だったんです。そのとき日本にホウ・シャオシェン監督のファンが多いことを実感し、台湾に対しての関心も高まっているように思いました。それで、監督の代表作の『冬冬の夏休み』も日本で長い間公開されていないなと思い、版権元について調べ始めたのが始まりです。『恋恋風塵』と同じように、観たいと思っているファンがたくさんいるのではないかと思ったんです。

―2作品ともホウ・シャオシェン監督らしいノスタルジックな映像が魅力ですが、”デジタル化”というと映像が鮮やかになりすぎてしまうような気がするのですが…?

最近は撮影からデジタルで行われているので、できあがった映像は、昔と比べると明暗の差やフォルムの境界線が肉眼で見たときよりはっきりしてしまうところがあります。でも、僕も今回デジタル化を手がけてみてわかったのですが、もともとのネガフィルムをデータ化するとき、コンピュータでオリジナルの色を分析して、それに合わせた色にすることが可能なんです。もちろん色を変えたり補正したりすることもできるので、現在のデジタル化というのは、原色に近い形での再現が可能になっています。今回の2作品も、DVDや過去のプリントでは公開当初の色や環境が再現できていませんでした。デジタル化することで、オリジナルに近い状態での、当時の監督の意図した色や音での上映を実現できたといえます。

―ご自身はホウ・シャオシェン監督の作品にどんな魅力を感じますか?

俳優も画面も無理に動かさず、シンプルなものの美しさを感じさせてくれる監督だと思います。海外ではよく小津安二郎監督に比較されるようですが、小津監督とも違う魅力があると思います。自然の光や音、それらをベースに敷くことによって出てくる空気や風といったものを映像の中にしっかり取り込んで、それを観る者に感じさせてくれるところが魅力だと思います。

―この2作品は日本での公開当時に観ている人も多いと思いますが、今回、どういうところを観てほしいと思いますか?

2作品とも、観るたびに、見落としていた部分や新たに見つける部分がたくさんある映画だと思います。なので、ぜひもう一度見直してみて、何か発見してほしいなと思います。自分の子供の頃の記憶や、初恋の思い出などに重なったりする部分もあると思いますし(笑)。それと、昔の映画ならではの撮り方を改めて観てみるのにもいい機会なのではないかと思います。

―まだ観たことのない人には、どういうところを観てほしいですか?

『冬冬の夏休み』は、幼い兄弟が田舎の祖父の家で過ごすひと夏を描いた作品なのですが、観てほしいのは子供とその周りの人たちの自然さですね。子供はわがままで、おじいちゃんおばあちゃんは平気で叱る。叱られても子供たちはけろっとしている。僕なんかはそういう人間関係を懐かしく思いますが、今の若い人たちには新鮮なんじゃないかと思います。劇中、悪い人もいい人も同等に描かれていて、いろいろな人たちが集まってコミュニティができている。いろいろな人がいるからいいんだと思ってほしいし、そういう人間関係や家族関係のあたたかさみたいなものを感じてもらえたらいいなと思います。

―『恋恋風塵』についてはどうですか?

僕は『冬冬の夏休み』より完成度が高いと思っています。田舎で育った幼なじみの男女が都会に出ていろいろな経験を積んで、その間、お互いに好きなのにひと言も言わないけれど結婚するんだろうなと思ったら別れを迎えて、という物語。まあ、長い恋愛って難しいよね、と思わせる話なんですけれど(笑)。面白いのは、時間の経過や場所の説明が省かれていることです。2人が都会に出てから2~3年の経過があって、その間に何回か帰省する・しないという話があったり、ヒロインの髪型がどんどん都会的になっていったりするんですけれど、細かい説明はなしにどんどんストーリーが進んでいきます。この映画は時間や場所についての説明がそぎ落とされていて、それがシンプルな美しさになっているんです。また、初恋から別れまでの純粋な物語の中に自分の体験を重ね合わせられるところもたくさんあると思うので、そういうところも楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

―「時間や場所の説明がない」というのは、こと細かく説明があって、次々と出来事が起きる最近のハリウッド映画などとは違う描き方ですね。

次から次へと起きる出来事で観客を引きつけようとする最近の映画とは違い、最後まで観ることによって物語に浸り、満足を感じられる作品だと思います。ヒロインに告白せずに別れを迎える主人公に対しても、「共感する」という人と、「もっと早くプロポーズすればいいのに」と思う人に分かれるんじゃないでしょうか(笑)。でも、いろいろな感じ方があっていいと思うんです。さまざまな作品を観て、さまざまな感情を抱くことによって、映画を観る目も広がると思います。

―今後の展開についてはどう考えていますか?

今回はいろいろなタイミングが合ってデジタル化を実現できました。今後も、まだデジタル化されていない幻の名作のような作品があれば手がけたいと思っています。古い名作に目を向ける機会が増えたらいいなと思うので。たとえば小説でも、名作は「読んでおいたほうがいいよ」と言われると思いますが、それと同じように映画も名作はぜひ観ておいてほしいですね。名作は時代を超えても名作だと思います。

Story

『冬冬の夏休み』

小学校を卒業したトントンは、妹ティンティンともに夏休みを田舎の祖父の家で過ごすことに。トントンは近所の子供たちと遊んだり、厳格な祖父に勉強を教えてもらったり。ティンティンは仲間に入れてくれないトントンたちにいたずらをする。のびのびと過ごした兄妹だが、やがて夏休みが終わり…。

■監督:ホウ・シャオシェン

■脚本:ジュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン

■出演:ワン・チークァン、リー・ジュジェン、グー・ジュンほか

■1984年/台湾/98分

配給:熱帯美術館

©A MARBLE ROAD PRODUCTION, 1984 Taiwan

 

『恋恋風塵』

鉱山の村で、幼なじみとして育った少年ワンと少女ホン。都会の台北に出た2人は、お互いに支え合いながら働いている。気持ちを口に出すことはないが、2人は心で結ばれていた。やがてワンは兵役に行き、ホンは毎日のように手紙を送る。しかし手紙は途絶え、ホンが別の相手と結婚したという知らせが…。

■監督:ホウ・シャオシェン

■脚本:ウー・ニエンジェン、ジュー・ティエンウェン

■出演:ワン・ジンウェン、シン・シューフェン、リー・ティエンルーほか

■1987年/台湾/110分

配給:熱帯美術館

©CENTRAL MOTION PICTURE CORPORATION 1987

 

5月21日(土)より、渋谷ユーロスペースにて2週間限定で公開

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