取材:記事・写真/RanRanEntertainment
――共演の衛藤美彩さんは初映画主演でしたがいかがでしたか?
中川:衛藤さんは芯が強い人です。彼女はもともと幼い頃に命に係わる病をされていたり、グループ(乃木坂46)の中でもいわゆるエリートコースではない中でやってきたり、ご苦労されている。気が強いという中途半端な次元ではなく、芯がある人だと感じます。僕はそのことをすごく尊敬しています。こよみさんもそういう芯がある人がやらなかったら、すごくふわふわした抽象的なだけの妖精みたいな存在になってしまう。彼女が演じてくれた事で一人の生活者であり、実体のある一人の女性になったと思っています。そこは非常に感謝しています。
――仲野さんは、衛藤さんとの共演はいかがでしたか?
仲野:撮影当時“乃木坂46”で、バリバリに活動されている中で、監督がこうして欲しいという演出に対して、見せる力とか表現の瞬発力がすごくある方だなと思いました。主戦場でやられて培った力だと思うのですが。
中川:勘がいい方ですよね
仲野:僕なんか言われても、あぁで、こぅでと理屈ごねごねしながらやるんですけど
中川:(笑)
仲野:衛藤さんはパッとやることができるし、何より本来彼女が持っている明るさが現場を引き上げてくれました。撮影は冬の寒い時期だったのですが、衛藤さんが現場に来るだけで、ぱっと明るくなって。
中川:救われましたね。いい人ですよね
仲野:うん。人間的にすごくいい人。同い年だったのですごく話しやすかったです。
――たくさん話されましたか?
仲野:そうですね。一緒に昼飯食べて過ごしたりしました。
中川:ずっと笑いあっていたよね。
仲野:笑い合ってました。
中川:僕と太賀がちょっと緊張感がある時でも、衛藤さんが居てくださるとだいぶ緩和されるというか
仲野:そうですね
――それは意識されていたのでしょうかね?
仲野:意識されていたと思いますよ。
中川:僕らより絶対大人ですよね(笑)
――こよみさんが記憶が留まらなくなってしまうというシリアスな事が起こりますが、この映画のテーマについてお聞かせください。
中川:困難な状況にあっても自暴自棄にならずに実直に足元を見て生きていくということがこれからの時代で必要なのではないか、と思って撮りました。行助は走りたくても走れない、こよみさんは記憶が続かないというハンディがあるわけですね。そういう中でも二人は非常に前向きに明るく生活しようとする。そして感情をぶつけ合います。それも非常に意味がある事だと思います。建前だけの良い事だけでなく、そこには嫉妬があったり、もめる事もあります。そこに向き合うことが大事なのです。
――最後にお二人からメッセージをお願いいたします。
仲野:中川監督作品の中でも新しい境地になっていると思います。中川監督の才能もありますけど、今回参加してくださった、スタッフ、キャストの個性がぶつかりあって、美しい形で映像化できたのではないかと思っています。なお且つ、新境地ではありますが、これは中川映画だといえる監督の個性もしっかり入っています。何より衛藤さんが魅力的なのでそこはじっくり観て欲しいです。
中川:太賀とは、僕の原点となっている作品『走れ、絶望に追いつかれない速さで』を作っていて、次の挑戦をする時には一緒にやりたいと思っていたのです。それがこういう形で、衛藤さんという全く新しい人も含めて挑戦できたのは嬉しいです。これを一里塚として、また次の新しい挑戦をする時には一緒にやっていきたいです。映画を観てくださる方には太賀のファンも、衛藤さんのファンもいっぱいいらっしゃると思うのですが、今後僕らがまた一緒に作品を作る未来に思いを馳せながら観ていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました。
前編~
『静かな雨』
2020年2月7日より公開
【ストーリー】
たとえ記憶が消えてしまっても、ふたりの世界は少しずつ重なりゆく。
大学の研究室で働く、足を引き摺る行助は、“たいやき屋”を営むこよみと出会う。
だがほどなく、こよみは事故に遭い、新しい記憶を短時間しか留めておけなくなってしまう。こよみが明日に
なったら忘れてしまう今日という一日、また一日を、彼女と共に生きようと決意する行助。
絶望と背中合わせの希望に彩られたふたりの日々が始まった・・・。
出演:仲野太賀 須藤美彩
三浦 透子 坂東 龍汰 古舘 寛治 川瀬 陽太
河瀨 直美 萩原 聖人 村上 淳 でんでん
監督:中川龍太郎
原作:宮下奈都『静かな雨』(文春文庫刊)
脚本:梅原英司 中川龍太郎
音楽:高木正勝
公式サイト https://kiguu-shizukana-ame.com/
製作:WIT STUDIO 制作:WIT STUDIO、Tokyo New Cinema
企画協力:文藝春秋
配給:キグー
スタイリスト:石井大
ヘアメイク:高橋将氣
文・高橋美帆/写真・早川善博