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映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』 成島 出監督インタビュー「大人がきちんと楽しめて笑えるものを作りたい」

2020/2/12 19:27

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

昭和の文豪・太宰治の遺作を、鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点で完成させた戯曲「グッドバイ」を、『八日目の蟬』で日本アカデミー最優秀監督賞にも輝いた成島 出監督が映画化した『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』が2月14日(金)から全国公開される。

本作は、戦後の混乱期から復興へ向かう昭和の日本が舞台。情けないのになぜかモテるダメ男の田島は、疎開させた妻子を呼び戻す前に愛人たちと別れようと、美貌を隠し「人生の伴侶はお金」とばかりに金にがめついキヌ子と“嘘夫婦”となる企みを思いつく。二人は、嘘夫婦として愛人たちを訪ね歩くが…。

田島を大泉洋、そしてキヌ子を舞台版で同役を演じ「当たり役」と高く評価された小池栄子が演じる。ヒューマン・ドラマの名手としても名高い成島監督に、本作の製作に至った思い、そして撮影の裏側を聞いた。

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――ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが手がけた舞台作品は、第23回読売演劇大賞最優秀作品賞にも輝いた名作です。舞台として上演されていたこの作品を映画化しようとお考えになったきっかけはどういったことからだったのでしょうか?

ケラさんの舞台を観に行かせていただいたのですが、その時は映画化なんて全然考えていなかったんですよ。僕はケラさんの舞台が好きで、よく観に行っているんです。この『グッドバイ』は、太宰のあの作品をどう作ったのか、それから原作では描かれていない部分をケラさんがどう作っているのか、(小池)栄子ちゃんがどんな演技を見せるのかという、3つの興味があって観に行った作品でした。原作では、ケイ子のお兄ちゃんがシベリアから帰ってきたらしいというところで終わっているんですよ。なので、その後の展開はケラさんのオリジナルです。それで、観劇したわけですが、僕が興味を抱いた3つが見事に全部ハマっていたので、これはすごいな、と。舞台が終わって、栄子ちゃんに声をかけたら、カラス声(注:キヌ子は素晴らしい美貌を持ちながらもカラス声の女性という設定)を出すのにすごく苦労して、公演の数日前にやっと発見した声だと言っていたのですが、それだけもんどり打って作っているということにも感動しました。それで、この感動を独り占めするのはもったいないんじゃないか、映画にしてもっと大勢の人に伝えられないだろうかと考えて、プロデューサーに相談して、映画化となりました。

――舞台から引き続き、キヌ子役に小池さんを起用することは、最初からきめていたんですか?

はい、そうですね。

――監督から見た小池さんの魅力とは?

栄子ちゃんは僕の大事な映画の仲間でもあるし、ケラ組の常連でもあるんだけど、やはり素晴らしい俳優で、僕はすごく尊敬しています。頭の回転も速いし、自分の努力でこれだけの演技力を手に入れて、女優として頑張っている。舞台で、カラス声を出すためにギリギリまであがく努力家で…。そういうところが仲間として刺激にもなりますし、尊敬しているところでもあります。

――映画でのキヌ子は、小池さんが舞台で作り上げたキャラクターを踏襲する形で作っていったのでしょうか?

基本は舞台で彼女とケラさんが作ったのがベースです。舞台はすごく良くできていて、僕も劇場で腹を抱えて笑ったので、なるべくそれを活かそうとはしました。ただ、舞台で演じたそのままだと、スクリーンで見たらオーバーアクションになってしまうので、そこはスクリーンに合わせてお芝居を修正しています。例えば、声もそうです。ピークのカラス声のまま2時間続いたら、映画ではうるさくて仕方ないので、どこでどう変化させるかなど、かなり細かい作業はしました。

――田島役に大泉さんを迎えたことには、どういった意図があったのですか?

映画ではもう少しコメディ色を出したかったんです。(舞台で小池が出演した公演に田島役として出演していた仲村)トオルさんは、やっぱりものすごく二枚目で、身長も高くて、スラッとしていて、本当にモテるんだろうなと感じさせる、素敵な俳優さんなんですよ。だから、映画で田島を演じていただくとなると、ちょっと格好良すぎるんですよね。この作品では、ビリー・ワイルダーのような古典的な、古いモノクロのラブコメのような方向性を目指していたので、じゃあ、日本のジャック・レモンは誰だと考えた時に、大泉くんの顔が浮かんだんです。彼とは、前々から仕事をしたいと思っていたので、それで声をかけました。

――大泉さんの田島はいかがでしたか?

頑張ってくれていましたし、楽しんで演じてくれたと思います。栄子ちゃんが、「成島監督は超厳しい」ってだいぶ脅したみたいで、撮影の最初の頃はビビってましたけど(笑)、進んでいくうちにそういうのもなくなっていましたね。今回は、喜劇なので、現場では勢いで、楽しくできればいいなというのがあったので。

――作風によって撮影現場の雰囲気も変わってくるものなんですね。

そうですね。僕自身はどの作品も変わらないつもりですが、栄子ちゃんが「いつもはしかめっ面しているのに、今回はニコニコしている」って言ってたので、そういうところはあるんでしょうね(笑)。

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――『八日目の蟬』など、監督にはシリアスで重厚な作品を撮られるイメージがあったので、今回のコメディ作品というのは意外にも思いましたが。

でも、コメディはすごく好きなんですよ。僕のデビュー作である『油断大敵』はヒューマンコメディ、人情喜劇でしたしね。そのあと、色々とシリアスなものを撮りましたけど、やっぱり喜劇は撮っていても楽しいですね。みんなが笑う現場はそれだけでも楽しいものですよ。

――小説や漫画原作の映画はよく見ますが、舞台を原作にした映画はあまり多くないように思います。今回、映画化に当たって、舞台が原作であることを意識することはあったのでしょうか?

意識することはあまりないですね。あくまでも舞台は舞台なので。映画のシナリオを作っている間は、ケラさんの書いたものを読んで勉強させてもらったり、舞台の演出を観ることもありましたが、いざ、シナリオが出来上がってしまったら、舞台のことは頭になくなります。シナリオを介して演出をしていきますし、キャストも変わっているので、完璧に別物になる。それは、小説などの原作でも同じで、シナリオができるまでは原作を研究したりもしますが、シナリオが出来上がって、それが固まってしまえば原作から頭が離れるんです。そういう意味では、普通の映画と意識は変わらなかったです。

――キヌ子が田島を2階から投げ飛ばすシーンの長回しは非常に印象的でしたが、監督が力を入れたシーンや印象に残っているシーンを教えてください。

あの長回しは、なんとかカットを割らずに、しかし(観客を)飽きさせないようにということを考えたので、大変でしたが力は入りました。長回しは、みんなで力を合わせて撮影するので、それはそれで楽しいものでもあるんですよ。僕は相米組(映画監督の相米慎二さん)の出身なので、長回しがあることが普通だと思っているところもありますし、長回しの力はすごく感じています。そもそも、僕自身が長回しの監督が好きだということもあるのですが(笑)。最近の映画では長回しはあまり観ませんし、メジャー作品だとそればかりもできませんが、でも、コメディで長回しをすることで、大泉くんも栄子ちゃんも力試しにもなるし、彼らもすごく燃えると思うんですよね。現場での一体感も持てます。劇場でもそれを感じていただけると思うので、ぜひスクリーンで観てもらいたいですね。

それから、青木さん(緒川たまき)が雨が降る中、屋根から落ちてくるシーンも前半の肝だったので、かなり丁寧に、丸2日かけて撮影しました。今、お話ししたキヌ子と田島の長回しのシーンで、まず最初の「屋根落ち」があって、それでもう一回、ここでもある。このシーンでこの映画が決まると思ったので、力を入れて撮影したシーンです。

まあ、細かく言えば、そうやって色々とあるのですが、今の時代を考えても、オールラウンドで、若い子も映画を見慣れている団塊の世代の方も、なるべく多くの方に楽しんでいただける作品をという思いが第一にありますので、作り手のエゴにならないようにとは思います。皆さんに喜んでもらうことが大事ですので。

――商業映画である以上、確かにそうですね。本作の衣装やセットも昭和の香りたっぷりで、非常に目を引きました。

ずっと成島組でやってくれている宮本茉莉さんにお願いして、衣装を全部手作りしてもらったんです。今回は、「色」が大事な作品でしたし、栄子ちゃんにぴったりの衣装をと考えたときに、すべて手作りが良いだろうとなって、頑張ってもらいました。

――改めて、公開を楽しみにされている方にメッセージを。

今回、大人がきちんと楽しめて、笑えるものを作りたいという思いが強くありました。その一方で僕たちが青春時代にしていたように、若い子が大人の映画をちょっと背伸びをして観て人生観が変わるような作品になっていればいいなと思います。

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映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』

2月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

出演:大泉 洋  小池栄子
水川あさみ 橋本 愛 緒川たまき 木村多江
皆川猿時 田中要次 池谷のぶえ 犬山イヌコ 水澤紳吾/戸田恵子・濱田 岳/松重 豊
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰 治「グッド・バイ」より)
音楽:安川午朗 脚本:奥寺佐渡子
製作:木下グループ 配給:キノフィルムズ 制作プロダクション:キノフィルムズ 松竹撮影所
©2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ 

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文・写真/嶋田真己

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