『ARIA The CREPUSCOLO』佐藤順一 総監督&名取孝浩 監督インタビュー! 「日常の見逃しがちな幸せや、物事を見るときの新たな視点を教えてくれる」『ARIA』の魅力

2021/3/6 19:08

取材:記事/RanRanEntertainment・写真/オフィシャル

天野こずえが描く未来形ヒーリングコミック『ARIA』の新作アニメーション『ARIA The CREPUSCOLO』が3月5日(金)より全国公開された。

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『ARIA』は2005年に『ARIA The ANIMATION』としてアニメ化されて以来、原作コミックの雰囲気そのままの優しい世界が数多くのファンを魅了した。TVアニメ放送から15周年を迎えたことを記念して制作された新作アニメーション『ARIA The CREPUSCOLO』は、アテナ、アリス、アーニャら「オレンジぷらねっと」のメンバーを中心にした物語が綴られる。アニメ化当初から本作の制作に携わる、総監督の佐藤順一氏と名取孝浩監督に、『ARIA』への思いや本作の見どころを聞いた。


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佐藤順一 総監督(完成披露上映会時のお写真)


――テレビアニメ放送開始から15周年を迎えたことに対し、どのような思いがありますか?


佐藤:15年はやはり長いなと思います。15歳だった少年少女が30歳のおっさんになるわけですから(笑)。でも、その間ずっと『ARIA』が好きだといってくださっている方もたくさんいらっしゃって、本当にありがたいことだと思っています。長い間、好きでい続けてくださるファンの方がいるのは、原作の持つ世界観が大きな力だと思います。そういう世界観を持つ作品に関われたことは僕自身も非常に嬉しく思っています。

名取:15年というと長い期間だなと感じますが、15年間ずっとこの作品だけに関わっていたわけではないので、それほど長い期間だったという印象はあまりありませんでした。普段は別の作品を作っていて、佐藤さんからお声がかかったら『ARIA』の元に戻るという感じで関わってきましたが、いつ呼び戻されても、「『ARIA』ってこうだったよね」とすぐにその感覚が戻ってくるのも、この作品だからこそだと思います。まるで出稼ぎに行った子どもが実家に帰省するような感覚があります(笑)。

名取孝浩監督①s

名取孝浩 監督(完成披露上映会時のお写真)

 

――「『ARIA』ってこうだったよね」というお言葉がありましたが、具体的にはどんなものが「こうだった」なのでしょうか?

名取:例えばシナリオをコンテに起こすときに、他の作品では「キャラクターはこう考える」とか「もっとこうした方が深くなるだろう」とか「もっと演出的に盛り上げましょう」とか、その時々で色々なことを考え、話し合って進めていくのですが、『ARIA』の場合には、シナリオに書いてあることをそのまま、落とし込めるんです。自然と、このキャラクターならこうするよねと、悩まずに、スッと出てきます。

佐藤:今となっては、自然体で作ることができるんですよね。『ARIA』のアニメ化がスタートした当初は、「事件がなくて何事も起こらないで30分のアニメになりますか?」と周りからも言われたし、僕たちも心配がなかったわけじゃないけれど、今は本当に自然体でキャラクターに向き合えているように思います。

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――自然体で向き合えるというのは、やはり本作に携わった期間が長いからなのでしょうか?

名取:もちろん、それもあると思います。作品に関わった当初は、やはりたくさん悩んだり、考えたりしてきたので、そういった経験が蓄積されているというのもあると思います。

佐藤:それぞれのキャラクターは、当然、自分1人の考えで作られていくわけでなく、アニメーターさんがいて、キャストの演技があって出来上がるものです。そうやって作られたキャラクターがだんだんと定着して、自分の中で確固たるものになるんですよ。まるで友人や身近にいる人のように、(キャラクターが)よく知っている人になる。よく知っている人だから、「この人ならこうしたら喜ぶよな」とか「こうやってよく失敗するよね」とか、その人のいろいろな行動が頭の中にデータとしてあるから、そのキャラクターを見ているだけで勝手に動いていく。それが自然体で向き合えるということなのかなと思います。

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――なるほど。では、5年ぶりの新作となる『ARIA The CREPUSCOLO』についても聞かせてください。今回は、天野先生の完全新作書き下ろし原作ということですが、最初に本作のストーリーをご覧になったときに、どんなところに魅力を感じましたか?

佐藤:ネームを見させてもらう前から、天野先生は「天才ゆえの悩み」をテーマにしたいということをおっしゃっていました。実際にネームを見たら、アテナさんの意外な面も描かれていて、そこが僕には印象深かったところでした。天才だからこそ歌への想いが強かったり、アテナさんはおそらくアリスが一番大事なんだろうと思っていたけれども、実はアリスよりも大事なものがあるのかもしれないと感じさせられるお話になっていたり、我々にとっても新たな発見がありました。ずっと自分を責めていて、アリスに謝ろうとしているアテナさんのこじらせ感も、なるほど、と(笑)。

名取:それから、アテナさんの厳しさも際立って見えましたね。僕は、一番厳しいのは晃さんかなと思っていたんですが、アテナさんは(本作の中で)セリフや表現で、自分の中で絶対に譲れない芯を見える形で持っていることがわかります。歌に関してはかなり深くまで考えていて、凄まじい強さを持っている人なんだなと感じました。

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――本作で、特に注目してもらいたいシーンは?

名取:歌っているシーンに尽きます。歌のシーンは、いわゆるアニメ映画を観に来たというよりは、コンサートを観に来たという感覚になってもらえると思うので、そこは一番の見どころだと思います。

佐藤 歌に関していうと、河井英里さんの新しい歌を入れることはもうできないので、すでにある音を合わせて、(アリス役の)広橋(涼)さんに歌ってもらうことしかできないんです。一方で、「ルーミス エテルネ」は、これまでアテナさんとして歌っている音源はひとつもありません。5年前に「(ARIA The)AVVENIRE」を制作したときに使用したものは、広橋さんの歌の練習用に河井さんが歌ったもので、それは本来、世に出るものではありませんでした。ただ、きちんと録った歌だったので使えたというだけでした。今回は、当時、広橋さんがお手本として聞いていた音源に合わせて、本編の中で一緒に歌うというシーンになります。河井さんの歌に合わせて歌わなければならないので、広橋さんは相当なプレッシャーがあったと思いますよ。でもレッスンをしっかりとしていただいて、歌っていただいて、すばらしいコンサートシーンになりました。

名取:それから、今回、新たに加わったアテナ役の佐藤利奈(以下、サトリナ)さんも聞きどころだと思います。皆さん、楽しみにしていただければ。

佐藤:サトリナさんにオファーした際に、難しい仕事ではあるので断られてもしょうがないなと思っていましたが、ご自身も悩みながら、結果引き受けていただけて、非常にありがたかったです。サトリナさんは、これまでの作品を観てきて下さって、(これまでアテナを担当していた)川上とも子さんが作ってきたアテナさんをしっかりと理解していただいて取り組んでくれたので、最初の収録で、第一声を聞いたときに「ああ、アテナさんだ」ってみんなが驚嘆したのを覚えています。本当に難しいと思うんですよ。これまでの通りにトレースしてもダメですし、違いすぎると別のキャラクターになってしまう。その上で、アテナさんの新しい面も見せていかなければいけない。それをいい塩梅で、これまでになかったアテナさんにしてくださったので、ぜひ注目してもらいたいです。

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――収録前にサトリナさんとは、アテナの役作りについて話し合いをされたのですか?

佐藤:サトリナさんが「自分にどのくらいできるのだろう」と不安がられていたので、「サトリナさんのアテナを作っていただければ大丈夫です。川上さんのアテナをトレースしなくて大丈夫です」というお話は何度かさせてもらいましたが、それでもサトリナさんはすごく研究してきてくださって、ドジっ子くさいニュアンスも見事に出ていました。

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――では、『ARIA』がこうして長く愛される理由は、本作のどんなところにあるとお考えですか?

名取:おそらく、特別なことをしていないからなのではないでしょうか。大きな展開を作ってないというところが、逆に長続きしている要因なのかなとは思います。我々が生きていく中で、例えば結婚や親の死など、大きな出来事も起こり得ますが、毎日毎日、事件や変化が起こるわけではありません。今日、1日何をしていたんだろうと考えると、大抵の日は、そう大きな変化があるわけではない。でも、そういう普通の毎日から物語を作っているのが『ARIA』なので、多くの人が共感できるんだと思います。

佐藤:大きく変わらない『ARIA』の世界観がずっとそこにあるので、その世界に浸れる気持ち良さもあると思います。その中で、日常の見逃しがちな幸せや、物事を見るときの新たな視点を教えてくれるのがこの作品です。そういう考え方もあったのかと、気づかせてくれるエピソードが散りばめられていて、原作の持つ豊かさが大きいと思います。

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――お二人は、本作のみならず、長くアニメ制作に携わっておられますが、アニメを作ることの面白さややりがいをどういったところに感じていますか?

名取:自分ではない人物、ものをプロデュースする醍醐味はあります。例えば、日々、思っていることをこのキャラクターに言わせてしまえ、とか(笑)。作品というものを隠れ蓑にして、自分の言いたいことを伝えるという面白さはあるかなと思います。

佐藤:やりがいというのは作品によってもいろいろですけれども、名取監督が言った自分が言いたいことを作品を通して伝えるというのもアニメ作りの魅力のひとつですよね。それから、自分が観たいと思っているものを自分で作るのもひとつの喜びです。ただ、自分と同じものを観たいと思う人がたくさんいるとは限らないので、ビジネス的にしょんぼりしてしまうこともありますが(笑)。もちろん、『ARIA』のようにたくさんの方に楽しんでもらえて、ファン同士が繋がって作品のことを語らえる場所をイベントやSNSなどで作れることも、僕たちにとってはすごく幸せなことです。

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――最後に改めて、作品の公開を楽しみにされている方にメッセージを。

名取:アテナをサトリナさんがどう演じているのかなど、新しい要素もある作品ですが、これまでの『ARIA』の時間に戻れる作り方になっていると思います。映画館に入った瞬間から『ARIA』の世界にどっぷり使っていただければと思います。

佐藤:この作品を作ることができたのも、15年間応援してくださった皆さんのおかげです。いつも通りの、皆さんが好きな『ARIA』の世界が広がっておりますので、ゆっくりと暖かい世界に浸かってほしいなと思います。

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『ARIA The CREPUSCOLO』 全国公開中
原作:天野こずえ「ARIA」(ブレイドコミックス/マッグガーデン刊)
総監督・脚本:佐藤順一
監督:名取孝浩
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東葉子
美術監督:氣賀澤佐知子(スタジオユニ)
色彩設計:木村美保
撮影監督:間中秀典
音楽:Choro Club feat. Senoo
OPテーマ:「フェリチータ」安野希世乃
EDテーマ:「echoes」安野希世乃
音楽制作:フライングドッグ
音響制作:楽音舎
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:松竹

 【CAST】
アリス・キャロル:広橋涼
アテナ・グローリィ:佐藤利奈
アーニャ・ドストエフスカヤ:茅野愛衣
まぁ:渡辺明乃
水無灯里:葉月絵理乃
アリシア・フローレンス:大原さやか
愛野アイ:水橋かおり
アリア:西村ちなみ
藍華・S・グランチェスタ:斎藤千和
晃・E・フェラーリ:皆川純子
あずさ・B・マクラーレン:中原麻衣
アレッタ・パーチェ:安野希世乃
 配給:松竹ODS事業室

<『ARIA The CREPUSCOLO』 あらすじ>
ネオ・ヴェネツィアの街が、落ち葉の絨毯で彩られる秋。オレンジぷらねっとで修業の日々を送るアーニャには、気がかりなことがありました。お互いに多忙なこともあり、長い間会えていない先輩のアリスとアテナ。そのせいで元気がないアテナに対し、アリスはなぜか会うのを避けている様子なのです。友達のアイとあずさにも協力してもらい、先輩たちが絶対に会える方法を探す中、アーニャは今の自分だからこそ見える“景色”があることに気づかされるのでした……。

 アニメ「ARIA」シリーズ Blu-rayも好評販売中!   

詳細は公式HPまでariacompany.net

©2020 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

 

 

 

 

 

 

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