【後編】加藤和樹インタビュー ミュージカル『フランケンシュタイン』の再演に「新たな作品を作るという意識で臨む」
2019/11/22 13:13
取材:記事・写真/RanRanEntertainment
音階や音符的な点では、実はさほど難しいことはないのですが、想いを乗せづらいなと感じました。これは僕の印象でしかないですが、メロディラインもきれいだし、感情だけで歌いたくなるけれども、歌詞に書かれた想いが置いていかれがちなんです。その想いを乗せないとただ歌っているだけになってしまうという難しさがありました。特に、エレンが歌う、子どもの回想シーンの歌は状況説明をしていく歌詞なので、ただの説明の歌になってしまいがちなんです。そこに想いをうまくのせないといけない。楽曲として印象には残るのですが、言葉としての印象が残りづらいなと思いました。
板垣さんとは僕は初主演の舞台で初めてご一緒させていただきました。2017年の『フランケンシュタイン』で数年ぶりにご一緒させていただいたんですが、いろいろと話し合う中で、「和樹の思う通りにやってくれて構わない」ということ、それから「Wキャストで、お芝居、演出、役作りが違ってもいい。それぞれが考えてくれていい」とおっしゃってくれたことが印象に残っています。役作りは任せてくれていました。
僕は、基本的には演出家の方が思い描くお芝居を表現するというタイプですが、この作品に関しては僕の思い入れがとても強くなっていたので、迷いなく演技ができたと思います。韓国版の印象と台本を読んで感じたアンリと怪物の印象が、しっかりと思い浮かんでいたので、それを稽古場で表現し、板垣さんに修正してもらって作り上げました。
――今回、新たにエレン役として露崎春女さんが出演されます。7月に開催されたファン感謝祭イベントでは露崎さんによる初めての歌唱披露もありましたね。
すごく新鮮でした。今まで、めぐ姉(前回のエレン役の濱田めぐみ)が歌っていた楽曲を、露崎さんが歌うとまた違う魅力がありました。もちろん、芝居がつけばまた変わってくると思うので、それもすごく楽しみにしています。
全部です!(笑)。僕が韓国版を観た時は、オープニングのシーンに衝撃を受けました。その時、韓国版でアンリを演じていたウンテさんの腕の動きがこの世のものじゃないように見えて、あのインパクトは僕も真似したいと思ったんです。もちろん、それ以外もとにかくどのシーンも心に突き刺さって、印象に残るシーンばかりなので、どのシーンも見逃さずに見ていただきたいというのが素直な気持ちです。
――では、加藤さんご自身のことについてもお聞かせください。出演作品が今後も目白押しですが、作品と作品の間はどのように切り替えをしているのですか?
うまく切り替えられているのかは分からないですが、おいしいご飯を食べて寝ることです。
全然引きずらないですね。でも、(本作の)この役は引きずりました(笑)。戻るのにすごく時間がかかったので、魂を削ってやる役なんだなと改めて思いました。魂から持っていかれる芝居だったので、大変でした(苦笑)。
――それだけに、思い入れも深いんですね。では、加藤さんが「この役をやって良かった」と感じるのはどんな時ですか?
大変であればあるほどいいんじゃないかなと思います。印象に残るというのは、それだけ課題があるということですから。この作品も本当に苦しい作品なので、印象に残っているし、学ぶことも多いので良かったと思います。役者って基本ドMだと思うんですよ(笑)。楽な芝居なんかないと思うし、この地獄に身を投じられることは非常にうれしいことです(笑)。
――役者としてのやりがいを感じる時はどんな時ですか?
自分じゃない役になれたことを感じた瞬間です。自分ではこう演じるつもりじゃなかったのに…ということがあるんです。それは多分、自分から発信するものよりも相手からもらうものが大きかった時。芝居はアクションにアクションを返すことの繰り返しなので、自分がどうリアクションするか自分でも予測できないことがあるんです。思わずしてしまった演技というのはすごく嬉しいですし、芝居って生なんだなって改めて感じます。そのライブ感を味わえた時、役者はいいなって、生きてるなって実感しますね。
再演ではありますが、初演の気持ちで、新たな作品を作る気持ちで頑張ろうと思います。死ぬ気で頑張ります。まあ、一回死ぬんですけど(笑)、死んでも頑張ります!
前編~http://ranran-entame.com/music/64449.html
ミュージカル『フランケンシュタイン』
東京公演:2020年1月8日(水)~1月30日(木) 日生劇場
愛知公演:2020年2月14日(金)~2月16日(日) 愛知県藝術劇場 大ホール
大阪公演:2020年2月20日(木)~2月24日(月) 梅田芸術劇場 メインホール