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2018年3月1日 13:52

『ジキル&ハイド』アターソン役の田代万里生にインタビュー 「ジキルが人生のすべてをアターソンに託すシーンはたまらない!」<後編>

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

『外にでないものを作る作業を大事にしている』

――役を演じる上で、田代さんが大事にしていることは?

役柄の設定というのは、お客様には伝わらなくていいと思っているんです。でも、自分の中にないと絶対(役に)にじみ出ない。発している歌詞とか台詞以外にいろいろなエピソードや感情があって、それを関係性や表情、声色などからキャッチして心情を受け取るわけで、台本にあるものだけだとそれ以上には膨らまないんです。自分の中にあるストーリーをできるだけ明確にして、その素材をたくさん集めて、こういった取材や会見で説明しながら役柄を再確認するんです。アウトプットを意識したインプットをするように心がけて自分自身が納得して台詞を発していきたいので、そういう意味では外にでないものを作る作業を大事にしています。

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――俳優としては、2009年に『マルグリット』アルマン役でミュージカルデビューされて、今年で9年目、来年は節目となる10年目を迎えられます。これまでを振り返り、舞台に対する思いや姿勢が変わったと思うことはありますか?

会見で『嘘の仮面』を一緒に歌ったカンパニーのみなさんや石丸さんなど、先を走っていらっしゃる先輩方の凄さというものが年々わかってきましたね。若いときはよくわからずその凄さに気付かなかったのですが、「この作品はこんなに素敵なんだ」と思う要素が年々増えてきて……34歳になって、いろいろなことを経験したから感じることだと思います。一方、一回り以上も年下の10代の俳優さんと共演して同じような役をやることもあったり、『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフのような晩年のおじいちゃんを演じたり。人によってはこの年齢が一番、中途半端な時期だという方もいますが、役の年齢も幅広く振り幅も大きな役をやらせてもらうなど、いろいろチャレンジしている時期なので大事にやっていこうと思っています。

――お芝居として今まで印象に残る作品は?

お芝居としては『スリル・ミー』ですね。作品も自分の中でも衝撃的でした。ある意味ストーリーテラーでありアターソンと一緒で回想録のお話なんです。『グレート・ギャツビー』のニックや『サンセット大通り』のジョーもストーリーテラー的な役割でしたし、そういった役は、自分の台詞やお芝居のさじ加減で作品のテイストやお客様の反応がまったく違うものになってしまう。それを最初に感じた作品が『スリル・ミー』で、音のないシーンでの緊張感やお芝居の間など多くを学んだ作品でした。

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音楽で絶望したけれど違う形の音楽で救われた』

――劇中、ジキルはハイドの人格に支配されていく絶望感に苛まれますが、人生で絶望感を感じことはありますか?子供の頃に大病をされたご経験があるとお聞きしましたが……

絶望感、ありましたね。子供の頃、足の切断すらありえた大病をしたんです。ヴァイオリンやピアノ、バスケットボールや空手をやっていたので「片足を切ったらどうやってやればいいんだろう」って。小学5年生だったので生活が困るというよりも、音楽ができなくなってしまうことに絶望しましたね。1年間くらい治療して半年以上寝たきりだったのですが、動けるようになってからもヴァイオリンはできなくなってしまって……。ピアノは戻れる状況でしたがあまりにショックが大きすぎて、1年のブランクもあったので完治して弾ける体になってからもピアノは弾かなかったんです。中学校に入るときにトランペットに出会って、やっと「音楽をやっていいんだ」と思えるようになってピアノに戻り、子役としてオペラに出るようになって歌をやりたくなったんです。音楽で絶望したけれど、違う形の音楽で救われたというのはありますね。

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――2018年はどんな一年にしたいですか?

来年10周年を迎えることや、舞台では『ジキル&ハイド』『マリー・アントワネット』などどちらも名作をやらせていただけることに感謝しつつ、年齢も34歳になりますので、(笑)今しかできないことを存分に楽しみたいです。本当に共演者に恵まれているので、今回も石丸さんの背中を間近で見てたくさん学ばせていただきたいと思います。

――ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

この『ジキル&ハイド』には、キャストをはじめ音楽やダンス、ステージングやお芝居にいたるまでミュージカルの鉄板と呼ばれる面白さがすべて詰まっていて、絶対に観て満足していただける作品です。近年若いカンパニーの作品が続いていましたが、今回は平均年齢が高く、いつもの現場と違う大人な雰囲気を感じていて新鮮な気持ちで取り組ませていただいています。皆様にもこの重厚な俳優陣による舞台で是非、衝撃を受けていただきたいと思います!

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◆プロフィール
田代万里生(たしろ・まりお)
東京芸術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。
3歳からピアノ、7歳からヴァイオリン、13歳よりトランペットを始め、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。大学在学中にオペラデビューを果たし、2009年ミュージカル『マルグリット』アルマン役でミュージカルデビュー。
近年の主な作品『きらめく星座』『グレート・ギャツビー』『エリザベート』『スウィーニー・トッド』『CHESS THE MUSICAL』『スリル・ミー』『ラブ・ネバー・ダイ』『エニシング・ゴーズ』『サンセット大通り』等。第39回菊田一夫演劇賞受賞。

ミュージカル『ジキル&ハイド』
◆東京公演
2018年3月3日(土)~18日(日)
東京国際フォーラム ホールC
◆名古屋公演
2018年3月24日(土)~3月25日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
◆大阪公演
2018年3月30日(金)~4月1日(日)
梅田芸術劇場メインホール

■出演:
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二
ルーシー・ハリス:笹本玲奈
エマ・カルー:宮澤エマ
ジョン・アターソン:田代万里生
サイモン・ストライド:畠中洋
執事プール:花王おさむ
ダンヴァース・カルー卿:福井貴一
宮川浩 / 川口竜也 / 阿部裕 / 松之木天辺 / 塩田朋子 / 麻田キョウヤ / 川島大典 / 杉山有大 / 安福毅 / 美麗 / 折井理子 / 七瀬りりこ / 真記子 / 三木麻衣子 / 森実友紀
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎

 

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