トップ > PICK UP > 橋之助、父・芝翫からの激励に顔をほころばせる『未来座 =裁SAI=「カルメン2018」』公開稽古

2018年6月22日 08:15

橋之助、父・芝翫からの激励に顔をほころばせる『未来座 =裁SAI=「カルメン2018」』公開稽古

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

市川ぼたん、四代目 中村橋之助、水木佑歌、花柳寿楽らが出演する『第二回 日本舞踊 未来座 =SAI=「カルメン2018」』が、622日から東京・国立劇場小劇場にて上演される。この公開稽古が初日前日の621日(木)に行われ、ぼたん、橋之助、水木、寿楽が囲み会見に応じた。

180A2563s

未来座とは、松本幸四郎(七代目 市川染五郎)ら日本舞踊協会の会員が、日本舞踊の将来を心配していた故・十世 坂東三津五郎の遺志を継いで立ち上げた公演シリーズ。2017年には『第一回 日本舞踊 未来座 「賽-SAI-」』を上演した。

今回取り組む『カルメン』は、ビゼーが作曲した世界的に有名なフランスのオペラを題材とした創作舞踊。ぼたん・橋之助が率いるソル組と、水木、寿楽が率いるルナ組の2チームに分け、上演される。

初日を目前にして仕上がり具合を問われたカルメン役のぼたんは「お稽古期間は長かったんですが、作品に対して向き合えば向き合うほどなかなか先が見えないです」と苦悩を見せつつも「あと半日ありますので、最後の稽古まで諦めずにやり、明日の初日を迎えたいです」と自分を奮い立たせていた。

180A2660s180A2708s

カルメンに惚れ、人生を狂わせていくホセ役の橋之助は、2016年、若干20歳にして「中村橋之助」を襲名、今回が歌舞伎以外では初の外部舞台でとなる。もちろん本物の女性と共演することも初めて。「ぼたんお姉ちゃまとこんな近い距離でお芝居をするのも初めてです」と、照れ笑いを浮かべるが、ぼたん同様、役作りには難航しているようで「掘り下げていけばいくほど悩むこともあります。ですが、僕らで未来座の『カルメン』を作りたい」としっかりと前を向いていた。

なお稽古中、橋之助の父である中村芝翫が様子を見に来たと打ち明けた。橋之助は「父から(この作品を経て)自分の中に新しい引き出しが増えるといいねと言われました」と励まされたことを嬉しそうに語っていた。

ルナ組のカルメン役・水木は古典だけでなく、創作舞踊や新作舞踊に次々と挑戦し、日舞界の歴史に新しい波を起こしてきた。「以前からカルメン役をやりたいと夢見ていましたし、その想いを実現するために稽古を続けてきたものです」と言葉に熱を込める。「カルメンは女として魂を込めて誰かを愛する事を思い出させてくれるような役です。男性を翻弄させる様を身体一つで表現することはやはり難しいですが、もう一歩踏み込んだカルメンにしたいです」とまだまだ役を熟成していこうとする姿勢を見せる。

ルナ組のホセ役・寿楽は、このメンバーの中では唯一15年前に同じくホセ役を演じたことがある。寿楽は「昔演じた時の経験の“上澄み”を活かしつつ、一方で橋之助さんたちと交わりながら今の『カルメン』を楽しく作りたいですね」と余裕を見せていた。

180A2756s180A2851s

囲み会見の後に行われた公開稽古では、ソル組の模様が一幕だけ披露された(全体では三部構成)。遠くから鳴り響く鐘の音がいつしか「カルメン」の有名なメロディに変わるなか、緞帳が上がる。そこにはステージ上には6枚のタロットカードを模した仕切り板があり、さまざまな役どころの演者たちが次々と登場。民衆、暴れ者、そしてそれを取り締まる者…なかでも真っ赤な衣裳を身にまとった6人の女たちは、あたかもこの物語が描く激しい愛と悲劇を予感させるような存在だった。そこにホセが現れ、さらにステージ中央奥から主人公カルメンが登場すると、すべての視線と熱がカルメンに向かって注がれる。こうして物語は始まった。

ステージ上では多くの演者が時に踊り、時には乱闘となる場面もあるのだが、そこにいる人々の手さばき、脚さばきは非常に美しく、意図的に足を踏み鳴らす以外での足音はほとんどしなかった。また、普段の舞踊より何倍もスピーディーに踊っているのだが、その所作はまったく崩れない。日本舞踊のプロたちだからこそできる身のこなしに感心した。

180A2861s

また、台詞も歌も一切ない状態でどれだけ登場人物は自らの心情を伝えることができるのか、という疑問もあったのだが、これも杞憂だった。カルメンの色香にすべての男たちが釘付けとなる場面は、見えない運命の矢がカルメンの眼差しから放たれているようにも見え、なかでもいちばん太い矢に貫かれたホセが、カルメンに一目惚れしたときに流れる沈黙の瞬間、そして我を失いついには罪に手を染めてしまうホセの苦悩など、どこかから台詞が聞こえてくるような錯覚すら感じさせるものだった。

180A2993s180A3050s

『第二回 日本舞踊 未来座 =SAI=「カルメン2018」』は、624日まで東京・国立劇場小劇場にて上演される。

■出演
【ソル組】市川ぼたん、中村橋之助 ほか
【ルナ組】水木佑歌、花柳寿楽 ほか
■スタッフ:
スーパーバイザー/花柳壽應
演出/花柳輔太朗
振付/猿若清三郎、西川大樹、花柳輔瑞佳
■チケット料金:全席指定:¥8,000
■公式サイトhttp://nihonbuyou.or.jp/
■公式フェイスブックページ:https://www.facebook.com/nihonbuyou.miraiza.sai/
■公式Twitter:https://twitter.com/miraiza_sai
■公式Instagram:https://www.instagram.com/nihonbuyou_miraiza_sai/

 

トップ > PICK UP > 橋之助、父・芝翫からの激励に顔をほころばせる『未来座 =裁SAI=「カルメン2018」』公開稽古

Pick Up(特集)

error: コンテンツのコピーは禁止されています