【前編】水夏希×笠松はる『カリソメノカタビラ~奇説デオン・ド・ボーモン~』インタビュー 男であり、女である実在の人物を描いた新作ミュージカルに挑む!

2019/9/4 12:00

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

2014年の水夏希コンサート「Attractive Concert2014 蜃気楼~mirage~」のオープニング場面に登場した「女装の騎士」をモチーフにした新作ミュージカル『カリソメノカタビラ~奇説デオン・ド・ボーモン~』が912日(木)から上演される。本作の主人公はマリー・アントワネットがいた18世紀のフランスに実在したスパイ、シュヴァリエ・デオン。生涯の前半は男性として、後半は女性として生きたという興味深い人物を水夏希が演じ、宝塚歌劇団時代からともに作品を作り上げてきた、脚本・演出の荻田浩一と、本作でも再びタッグを組み、新たな物語を綴る。さらに、共演には溝口琢矢、笠松はる、植本純米、坂元健児と実力派が並ぶ。今回は、水と笠松にインタビューを敢行。互いの印象や作品の見どころを聞いた。

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――2014年の水さんのコンサートで披露した「女装の騎士」をモチーフにしたミュージカルということですが、その「女装の騎士」はどういった内容のシーンだったのでしょうか?

水:男性でありながら女性として生きた実在の人物を、フランスのポップスを使って表現したものでした。楽曲数でいうと、3曲程度のものです。その当時、私はそういう人生を生きた方がいるということを知らなかったので、面白い人生だなと思ったことを覚えています。私自身、男役である人生と宝塚を退団して女優として生きている人生があるので、リンクする部分があると感じ、当時、コンサートの演出も手掛けてくださった荻田さんと「ミュージカルにしたら楽しいね」という話はしました。ただ、具体的にいつやろうとか、そういう話ではなかったんです。ですので、今回は数年越しに実現した企画で、非常に嬉しく思っています。

032s

――改めて、水さんが演じられるシュヴァリエ・デオンという役柄について、どんな人物なのか教えてください。

水:コンサートでモチーフにした実在の人物は女装をしてスパイをしていた人物なのですが、今回のミュージカルでは、性別としては女性ですが、男性として生きることを願っている人物として登場します。性同一性障害に近い感じです。そういった生き方が認められていない時代に、どうやって生き抜いていくのかという葛藤の旅を描いています。こうやって説明すると、人間ドラマのようですが、何故かコメディです(笑)。

――コメディなんですね!?(驚)

笠松:思ってもみなかったですよね(笑)。

水:生まれ持った変えられない体でどう生き抜いていくのかというテーマではあるのですが、それは物語の一番奥のテーマであって、そのテーマの上にレイヤーでコメディが入ってくるというイメージの作品です(笑)。

039s

――男性として生きた後に女性として生きるというデオンは、水さん自身の役者人生とも重なる役です。今回、演じてみて改めてどう感じていますか?

水:重なる部分もありつつ、でも、根本は全く違うと思いました。私は自分で好き好んで男役をやっていたけれども、彼女は選べない人生の中で男性として生きることをがむしゃらに追い求めたので、似てはいても全く違っていて、演じるのはすごく難しいです。

それから、私自身は、あっという間に、宝塚の男役に戻れるので男役をやること自体は難しくはないのですが、「リアルな男性」は未知の世界だなと今、思っています。宝塚の男性というのは、身のこなしから何から何まで格好いいというのを基本にした、現実にはいない男性なんです。だから、デオンも格好いい男性である必要はなくて、でも、魅力的で美しいという要素は併せ持っている。「美しくて魅力的」という部分は宝塚とイコールではあるけれども、それだけではないというのは難しいです。

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――笠松さんは、今回マリー・アントワネットほかを演じられるということですが。

笠松:はい、私は2つの役柄を演じさせてもらいます。前半はルイ15世の公妾であるポンパドゥール夫人です。彼女は、国からお金をもらって生きている、公のお妾さんで、実際にはルイ15世の後ろで国を、政治を動かしているという女性です。後半はマリー・アントワネットとして出てきます。マリーさんは全編の中で唯一、デオンさんの生き方を全肯定する人です。デオンさんがあまりにも美しくて魅力的だから、男性も女性もみんなが魅力を感じて、道具として使ったり、恋愛感情を抱いてしまうのですが、マリーさんだけはそうはならなかった。デオンさんにとっても大きな意味のある人物なので、大事に演じないといけないなと思っています。

023s

――今、絶賛お稽古中ですが、それぞれの役を演じる上で、一番、ポイントにしていることは?

水:マリーとの関係です。マリーは、デオンにとっては人生の中で唯一自分を認めてくれた人。それ以前にも、認めてくれた人物はいたんですが、その人は、世間からの批難を浴びて自殺してしまったんです(これは勝手に考えた設定ですが)。だからこそ、自分を認めてくれた彼女のために、デオンは命を懸けます。物語冒頭からコメディな場面が続きますが、終盤には大きな山場があります。

062s

笠松:最初に台本を読んだときには、すごくシリアスなお話なのかと思ったのですが、いざ稽古に入ってみたら、おや? と思いました(笑)。稽古場ではとにかく面白くて、常に笑っているような状態です。笑いが止まらない。今言葉ではうまく説明できないのですが、それほど面白い作品であることは確かです。

水:でも、(植本)純米さんが女役をやってるという時点で、面白くないわけがない。キャストたちの顔ぶれから想像していただいて、理解してもらえれば。

笠松:性同一性障害は、今の世の中でも悩まれている方がたくさんいらっしゃると思いますが、そのテーマをシリアスにやるのではなくて、あえてコメディとして見せています。
人間の本当にしんどい部分や、良いも悪いも人間らしい部分を、コメディにすることでより突きつけられるような気がします。

029s

<後編に続く>

 

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