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2020年1月29日 16:25

【後編】大貫勇輔インタビュー 舞台『ねじまき鳥クロニクル』「想像を超えるであろうものを作り上げる」

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

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――ところで、最近では映像作品にもコンスタントに出演されていますが、映像作品に出ることで、大貫さんにとってどのようなものが得られていますか?

映像作品に出演して一番に思うことは、すごく瞬発力がいる現場だなということです。なので、稽古場での瞬発的なひらめきというものを、すぐに反映させることができるようになっているのではないかなと、今、なんとなく思ってます。(2018年7月期に放送された)ドラマ『高嶺の花』から映像作品への出演が続いていて、今作はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』以来、約一年ぶりなんですよ。

 

――逆にダンスや舞台の経験が、映像作品で活きたなと感じた瞬間は?

(2019年7月期放送の)ドラマ『ルパンの娘』のときは、かなり舞台の経験が活かせました。それから、これはどの作品ということではないですが…ダンスをやり、お芝居をやってきたことで、体の在り方についてすごく考えるようになったのですが、その動きを映像の中で試してみたら、それが有効だったということを実感できました。

 

――それは例えばどういうことですか?

例えば、落ち込んでいるときには重心が下がって、嬉しいときには重心が上がる。それから、興味があるときにはその方向へおへそが向く、興味がなかったらおへそは向いていないとか…。ダンサーをやっていると、お芝居をしていても体を見てしまうんですよ。今までのいろいろな経験で、自分の中にそういった膨大な情報があるのですが、それが映像の中で試しながら磨けたことで、映像のお芝居の面白さにも気づけました。自分が思い描いた通りにできたり、思ってなかった面白いものができたり、逆にそれができなかったり…今、そこが、すごく勉強になっているし、面白いですね。

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――ダンサー特有の視点からの役作りで、非常に興味深いです。舞台に立たれるときも、映像と同じように、お芝居の中での立ち姿や動きというのは意識されるのですか?

それを強く意識したのが、「ロミジュリ」(ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』)ですね。「ロミジュリ」は死のダンサー役というセリフがない役柄だったので、歩き方だったり、向きの変え方だったり、手の上げ方だったりと、体の動きで何を感じているのか、思っているのか、存在感を出すのか、ということをすごく考えました。そのときの経験は今にとても活かせていると思います。

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――では、本作に出演することで、どんなことを楽しみにしていますか?

最近、僕がダンサーであるということを知らない人も増えてきました。それは、映像作品に出る上で、目指していたことの一つでもあるので、少しでも「俳優」になれてきたのかなと思います。ずっと「俳優」に憧れていたので。今回の舞台では、良いお芝居をしながら良いダンスを踊ることで、僕のことを知らない方々に、ダンサーでもあり俳優でもあることを認識してもらって、感動していただけたらと思っています。

 

――「俳優に憧れていた」ということですが、あれだけのダンスを踊れる大貫さんが、さらに上をと思ったときに「俳優」が目標になったのですか?

上とか下ではなく、ただ単純に「俳優」というものに憧れがあったんです。僕は、ずっとダンスをやってきて、23歳でお芝居を始めたのですが、初ストレートプレイの『アドルフに告ぐ』で成河さんと共演したときに、「お芝居がもっとうまくなりたい」と強く思ったんですよ。それから、「俳優」に憧れて、一切ダンスをやめてみたこともあるんです。ダンスをやっているとどうしても「ダンサーの体」になってしまうので、「俳優の体」になって、そうしたときに自分はどういう芝居をするのかと思って…。でも、一切踊りをやめてみて気づいたのは、やっぱり僕はダンサーだったということなんです。僕にとっては、ダンスは衣食住と同列のもので、人生の一部で、切っても切れないもの。それに気づいてからは、ダンサーにしかできないお芝居を目指すべきなんだと思うようになりました。今は、体を鍛えながらお芝居の勉強もして、もちろん歌のトレーニングもして、ひとつひとつ丁寧に積み上げていくことが大事だと強く感じています。

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――今、大貫さんが表現者として目標にしているのは、ダンス、芝居、歌をきちんと兼ね備えた存在ということですね。

そうですね。僕は、成河さんのほかに、俳優の市村正親さんを大尊敬しているのですが、市村さんは人格者でもあり、家族を大切にしていて、仕事ではものすごくプロフェッショナルで、いつまでも人に元気と喜びと感動を与え続けている方で、僕もそういった存在になりたいと思っています。それから、僕の強みはやはりダンスだと思うので、ダンスもさらに研ぎ澄ませていきたいという気持ちもあります。

 

――成河さんとともに、トオルを演じる渡辺大知さんの印象もお聞かせください。

(取材当時は)まだ渡辺さんとは、ワークショップで二度ほどお会いしただけなのですが、物腰が柔らかで、繊細で、非常に思いやりのある方という印象です。成河さんと渡辺さんのお二人が一人の人物をどうやって演じられるのか、僕も楽しみです。

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――改めて作品の見どころや公演の意気込みをお願いします。

村上春樹さんのファンの方や、原作のファンの方たちは、一体どうやって舞台化されるのか疑問に思っていると思います(笑)。でも、きっと皆さんの想像を超えるであろうものを、この素晴らしいキャストと素晴らしいスタッフで作り上げるので、期待していてください。「観ないと損だ」という作品になると思うので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。

 

『ねじまき鳥クロニクル』
原作:村上春樹
演出・振付・美術:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガー
脚本・演出:藤田貴大
音楽:大友良英

キャスト
<演じる・歌う・踊る>
成河/渡辺大知/門脇麦
大貫勇輔/徳永えり/松岡広大
成田亜佑美/さとうこうじ
吹越満/銀粉蝶
<特に踊る>
大宮大奨、加賀谷一肇、川合ロン、笹本龍史
東海林靖志、鈴木美奈子、西山友貴、皆川まゆむ
<演奏>
大友良英、イトケン、江川良子

2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演 3月7日(土)・8日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
愛知公演 3月14日(土)・15日(日) 愛知県芸術劇場大ホール

 

 

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