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2022年8月12日 10:50

【前編】早見あかり インタビュー 舞台『血の婚礼』「心の近さは絶対に芝居に出る。木村達成さんと須賀健太さんとは親友になれると思いました」

取材・撮影/RanRanEntertainment

舞台『血の婚礼』が、2022年9月15日(木)からBunkamuraシアターコクーンで上演される。本作は、実際に起きた事件を元に、1932年にスペインの伝説的劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが執筆し、ロルカ自身の演出で初演されたロルカ三大悲劇の一作。一人の女をめぐり、男二人が命を懸けて闘う、愚かしいほどの愛と衝動を描く。演出は杉原邦生。出演は木村達成(レオナルド役)、須賀健太(花婿役)、早見あかり、南沢奈央、安蘭けい ほか。
花嫁役の早見あかりに作品への思いや木村達成と須賀健太とのビジュアル撮影でのエピソードなどを聞いた。

 

009s

 

――この戯曲を読んだ印象はいかがでしたか?

難しいのかなと思ったのですが、結局、誰かが誰かを愛していて、その矢印がいろいろな方向に向かっているから複雑な構造に見えるのだと思いました。今の愛とは全く表現の仕方や情熱の度合いに違いはあるけれど、私たちにも共感できる部分があるストーリーだと思います。ただ、台詞がポエム的であったり、今の言葉とは違う愛の伝え方であったり、そういうところが難しくもあるけれど、綺麗で面白いなと思いました。

――どんなところが共感できたのでしょうか?

私は、窮屈にがんじがらめに「こうしなさい」と言われる中で生きるのが苦手なので、基本的には共感できない部分の方が多いのですけれど、強い気持ちで人を愛すということはわかります。姑の子どもを思う気持ち、父が花嫁を思う気持ち。最終的に花嫁が下す決断、自由になる選択、それが何を意味するのかということを頭ではわかっていたけれども、そこを突っ走り自分の意志に沿っていきたい部分は共感できました。

 

016s

 

――花嫁という人物に関する印象はいかがでしたか?

誰に対してもそれぞれの自分がいて、父に対する自分、女中に対する自分、花婿、レオナルド、それぞれ全部人格が違うような気がしています。でもどれが本当の花嫁で、どれが嘘なのか、多分どれもほんとの自分なんだろうなと思います。心の真ん中には強い思いがある。当時の結婚というものは、幸せに繋がるだけでなく、女性を縛るものだとも思うんですね。そこから逃げ出したいと思う気持ちと、言うことを聞かないといけない気持ちと、いろんな感情から生まれるすべての心の動きが、誰かに対した時に、違う人になっているように見える。本当の自分というものをどこに焦点を持って演じればいいのかまだわからないです。あまり決め込みたくないなとは思っているのですが、稽古でどうなるか、楽しみです。

―一番、対レオナルドの部分が濃いものになっていくのでは?と想像するのですが、どんな風に考えていらっしゃいますか?

あの二人ってほんとに面白くて、絶対に好き同士で求め合っている二人、それだからと言って花婿のことはどうでもいいわけではなくて、花婿のことももちろん愛してはいるのですけれど、愛し方が別物です。レオナルドの深い情熱的な愛と、それに対する花嫁の愛は、お互い同じ向きなのにずっと反発している。「好きだよ」とストレートに言わない、「あなたに苦しめられて」とずっと言うのに、それが結局イコールで、好き過ぎて頭がいっぱいになって苦しめられてしまう。そこが私には全くない感情なので面白いなと思うし、稽古でどういう風に変わっていくのか、文字ではなく、言葉になってどういう風になるのか楽しみでもあります。脚本にも官能的になっていく、と書いてあるのですが、そういうのと無縁の人生なので(笑)、大丈夫かな、頑張らなきゃなと思っています。

 

068s

 

――ポスタービジュアルを拝見して、衝撃を受けましたが、撮影現場はいかがでしたか?

これの(チラシを見ながら)一つ前にTwitterに載せた、三人(早見と木村達成と須賀健太)で1つの椅子に座っている写真があるのですが、それが「初めまして、よろしくお願いします」と挨拶した10分後に、撮影があったんです。二人の男性の上に、全体重を預けて乗ってということはなかなか人生でないと思うのですが、そういうことをした時にさらっと3人で仲良くなれたんです。遠慮とか気を遣うことがあるとやり辛いのですが、この体勢をやる頃には、私は椅子に反対にまたがってブリッジみたいにしているのですが、だんだんやっているとしんどくなって起き上がるのも大変だったのですが、お二人がさっと手を差し伸べてくださって、それも遠慮なく、「ありがとうございます」と、(手を)つかめるみたいな関係性に(撮影が)終わる頃にはなっていました。その日に取材も受けたのですが、三人の役割分担ができていて(笑)、木村さんがちょっとボケて、それに私と須賀さんが突っ込むという、このビジュアル撮影を経て、一つ山を越えたようです。今後の稽古が楽しみだなと思いました。すごく話しやすく、舞台も場数を踏まれていて、経験値も高いお二人なので、悩んだ時にはすぐに相談ができるだろうなと思いました。

 

029s

 

――木村さんと須賀さんは別の作品でも共演されていて絆も深いと思うのですが、早見さんから見てお二人はいかがでしたか?

“仲良さそうー”って思いました(笑)。お互い信頼していて、仕事して尊敬する部分もあるし、友人としてお互いを好きで楽しいと思っている部分もあると、見ていてわかりました。その中に私がすっと入っていけそうな気がすると感じて有難かったです。

――木村さん、須賀さん、それぞれの印象はいかがでしたか?

木村さんはお顔がシュッとされているので勝手にすごく寡黙なイメージを抱いていたら、私以上によくしゃべるということがわかって、似ているなと思いました。たぶん同じ種類の人間だと思いました(笑)。須賀さんは、同い年なのですが、自分が子どもの時に子役をやっていた人だから、ほんとに“須賀君だ”と思ってしまいました。お二人が話しているのを見て、突っ込み上手で、イメージと違って意外でした。

 

048s

 

――お稽古が楽しみですね。

楽しみです。心の近さみたいなものは絶対に芝居に出ると思うので、この二人は特に、物理的な距離もそうですが、心の距離が近ければ近いほど伝わりやすいので、そこの不安はなくなりました。今後稽古をしていってもっと仲良くなれそうです。男女ではなく、同じ人間として親友になれるなと思いました(笑)。

――この舞台を観に来てくださった方にどんなことを伝えたいですか?

愛の形や重さは違っても、誰かを大切にする気持ちにはすごく気付ける作品だと思います。最終的には闘って、残酷な物語ではあるのかもしれないですが、愛って何なのだろうと、人によって感じ方が違うと思うんです。自分の持っているバックボーンで共感するキャラクターも変わってくるだろうし、見方も変わってくると思うのですが、感じ取ってもらえたらと思います。

 

以下、【後編】に続く

 

065s

 

舞台『血の婚礼』
東京公演 2022年9月15日(木)~10月2日(日) Bunkamura シアターコクーン
大阪公演 2022年10月15日(土)~16日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
出演:
木村達成 須賀健太 早見あかり 
南沢奈央 吉見一豊 内田淳子 大西多摩恵 出口稚子 皆藤空良
安蘭けい
演奏:古川麦 HAMA 巌裕美子 
主催・企画制作:ホリプロ 主催(大阪公演):梅田芸術劇場/ABCテレビ
公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/

【ストーリー】
南スペインのアンダルシア地方のとある村。母親(安蘭けい)と二人暮らしの“花婿”(須賀健太)は、父親と二人暮らしの“花嫁”(早見あかり)と結婚したいという想いを母に告げる。母親は、溺愛する息子の成長を喜びつつも、ただ一人の家族の旅立ちに複雑な想いがのこる。花嫁は優しく家庭的な娘と聞くが、気にかかる噂がある。息子と恋仲になる以前、心を通わせた男がいるという。男の名はレオナルド(木村達成)。かつて、レオナルドの一族に母親の夫と息子は殺されたのであった。レオナルドは花嫁との恋が破局した後に、花嫁の従妹と結婚し、今は妻子と姑との四人で暮らしていた。レオナルドの友人でもある花婿は、心配ないと母に明るく語る。花嫁は、花婿と幸せな家庭を築くと決意していた。しかし、花嫁の目の前に現れたのは、かつての恋人・レオナルド。思いもよらない人物の出現に激しく心が揺さぶられる花嫁。忍び寄る不穏な闇・・。二人の男の愛がひき起こす、婚礼の日に起きる悲劇とは・・。

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