少年忍者の北川拓実が主演する『チョコレート・アンダーグラウンド』が6月5日からよみうり大手町ホールで上演される。本作は、アレックス・シアラーの人気小説を世界で初めてミュージカル化。国民が選挙に無関心だったために、極端な政党が政権を取ってしまい、チョコレートが禁止された架空の国を舞台に、若者たちが立ち上がりチョコレートの密造に乗り出す姿を描く。主人公のスマッジャーを演じる北川、そして演出の石丸さち子に本作への意気込みや役作りについてなどを聞いた。
――世界初演となる作品です。北川さんは最初にこのお話を聞いて、どう感じましたか?
北川:驚きましたし、出演させていただける嬉しさもあって、いろいろな感情が混ざっていました。出演させていただけるからには、責任感を持って挑みたいですし、この世界初というミュージカルをたくさんの方に届けられたらという気持ちもあります。本当に光栄な機会をいただけたと思います。
――脚本を読んだ感想を教えてください。
北川:選挙に行かないという無責任さや無関心さによってどんどん世界が変わっていってしまうというのは、すごく怖いなと思いました。僕も選挙についてまだまだ分からないことはありますすが、脚本を読んできちんと責任持って行動しようと思いました。
――本作は、石丸さんの熱い思いから実現したと聞いていますが、どのような経緯でミュージカル化に至ったのですか?
石丸:ずっとこの作品を舞台でやりたいと思っていたんです。この物語の中で起こっている恐怖に近いものは今現在、私たちの生きているこの世界にも起こっています。元々はイギリスの子ども向けの番組でも放送された小説が原作ですが、政治のことを直接描いているわけではないけれど、ものすごく的確に問題意識がある。そして何より、少年たちが勇気と覚悟を持ち成長していくのが面白い。少年たちはどんどん生きる知恵と不屈の精神を見出していきますが、その原動力になっているのが「チョコレートを食べたい」というスイートな思いというのも魅力的です。そうした物語に惹かれ、これは舞台化したい。それも、ストレートプレイよりミュージカルの方が面白いと思っていました。
それで、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』でご一緒した高橋亜子さんに「1回、会いましょう」と声をかけて、「この本を持って帰って読んで」と。亜子さんも社会的なことに問題意識の高い方なので、「一緒にやりましょう」と賛同してくれ、そこから話が進んでいきました。今、ここまでたどり着けたことが嬉しくて仕方ないです。
――北川さんは出演が決まった際のオフィシャルコメントで、「ミュージカルに憧れていた」というコメントを出されていましたが、改めてミュージカル作品で主演することへの思いを聞かせてください。
北川:いろいろな先輩方の舞台を見てきて、心を動かされたり、感動したりしてきたので、僕もステージに立って、お客さんに届ける側になりたいという気持ちがありました。なので、こうした機会をいただき、挑戦できることがとても嬉しいです。もちろん、これまでたくさんの作品を観てきたからこそ、厳しい世界だなとも感じています。ミュージカルは僕がやったことがないジャンルなんです。なので、そうした壁を乗り越えて、しっかり稽古に励んで、責任を持って届けたいと思います。今後もミュージカルにもっともっと挑戦していきたいという気持ちがあります。
石丸:楽しんでいこう! 「厳しいことを乗り越えて」とばかり考えていると苦しくなってしまうから、一緒に成長していく気持ちでいきましょう。
北川:はい! 役と一緒に成長していきたいと思います。
石丸:私としては、経験したことがないものを楽しんでもらえたらすごく嬉しいです。
北川:そうですね。僕にとっては未知の世界なので、分からないことだらけですが、頑張りたいと思います。
――石丸さんが先ほど、この作品はミュージカルの方が面白いとお話をされていましたが、ストレートプレイではなく、あえてミュージカルにしたのはどういう思いがあったのですか?
石丸:この作品が持っている甘さと苦さの振り幅の広さをミュージカルの方が表現しやすいと思ったんです。この主人公は、密造したチョコレートを密売して、強制施設送りになって、非常に暴力的な環境に置かれます。本作では、そうした厳しいシーンも描かれています。ですが一方で、彼らの原動力はチョコレートを口に含んだときの喜びだという甘さもある。この反復横跳びのような物語を描くときに、ストレートプレイでは、シビアになりすぎるのではないかと感じました。そして、何よりチョコレートを密造する喜びを歌にしたいという思いもありました。命懸けでレシピを見つけてきて、たまたま余っていたカカオの在庫を使って自分たちで作ろうとしたけれども、うまくいかなくてドロドロのものができてしまう。そのドロドロのものたちをいかにチョコレートに仕上げていくかがものすごく素敵な歌になりました。出来上がった楽曲を聴いて、改めてミュージカルの力を感じています。
――石丸さんは北川さんにどのような期待を抱いていますか?
石丸:昨年、私が演出を務めた公演を観に来てくれたのですが、そのときの印象は飾らない人でした。もっとアイドルの空気を纏ってくるのかなと思っていたのですが、かまえたところがなく、“普通の人”としてフラッと観劇に来たというニュートラルな雰囲気を纏っていたので、それがすごく好きだなと。これから何色にも染まっていけるのだろうと思わせる、まっすぐで素直な印象があり、きっと仲良くできるのではないかと第一印象から感じていました。稽古を始めるとき、この作品にとって必要なことをまっすぐに言えないとなかなか作りにくいんです。気を遣ってしまって遠回しに伝えたり、お願いするというのはなかなか難しい。でも、(北川とは)すぐに言いたいことを言い合える関係になれると感じたので、一緒に楽しく、とことん仕事ができそうだという印象でした。
北川:こんなに褒めていただけると思いませんでした(笑)。嬉しいです。初めてお会いしたときは、純粋に一人のお客さんとして、さまざまなことが吸収できたらいいなという気持ちで観劇させていただいたので。
――北川さんが感じた石丸さんの印象はいかがですか?
北川:初めてお会いしたときは、すごく緊張していたのですが、優しく気さくに話しかけてくださって安心しました。僕もこの作品に挑戦していくイメージができましたし、頑張ろうという気持ちもすごく強くなりました。
ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』
原作:アレックス・シアラー
翻訳:金原瑞人(求龍堂刊)
脚本・作詞:高橋亜子
音楽:オレノグラフィティ
演出:石丸さち子
Cast:
スマッジャー・・・北川拓実
ハントリー・・・東島京
フランキー・・・木村来士
モファット・・・平野綾
ジョン・ブレイズ・・・岡田浩暉
バビおばさん・・・土居裕子
様々な役を演じる・・・浦嶋りんこ まりゑ 小松季輝 佐藤匠 中川賢 陰山泰
<様々な役を演じる>
健全健康党の党首、党の男、警官隊、スマッジャーの父と母、ハントリーの父と母、依存症患者、少年団団員、チョコレート捜査官、警察本部長、語り部、学校の生徒など多数 約40 役を演じ分ける
【東京公演】2025 年6 月5 日(木)~6 月15 日(日)
会場:よみうり大手町ホール
【大阪公演】2025 年6 月21 日(土)13:00/18:00
会場:森ノ宮ピロティホール
【富山公演】2025 年6 月28 日(土)、29 日(日)両日13:00
会場:富山県民会館ホール
HP https://chocoun.com/