
長谷川達也 飯塚浩一郎
2026年に結成30周年を迎えるDAZZLEが、代表作『花ト囮』を新たに再構築し、2026年7月2日から池袋あうるすぽっとで上演する。本作は、2009年の初演以来、何度もの再演を重ね、さらにはシビウ国際演劇祭(ルーマニア)への招聘を果たすなど、国内外で高い評価を受けてきた作品。「狐の嫁入り」という日本の幻想的な情景から着想を得て、兄弟の絆と運命をめぐる物語が描かれる。DAZZLE主宰、作・演出の長谷川達也とクリエイティブディレクターを務める飯塚浩一郎に本作への思いを聞いた。
――結成30周年、おめでとうございます! 改めて30周年への思いを聞かせてください。
長谷川:一つひとつ作品を作り上げてきたら、たどり着いたという感覚です。常に、最高のものを目指して作ってきました。この『花ト囮』も、30年経った今だからこそできることを詰め込んだ作品になると思います。
飯塚:僕はDAZZLEに入って20年くらいですが、30年続いていることが非常に貴重なことだと感じます。それだけの時間を積み重ねてきたからできる表現があると思いますし、それを観ていただける公演になるといいなと思っております。
――この30年の変化をどのように感じていますか?
長谷川:始めた当時は、ダンスが職業として認められていないような時代でしたが、だからこそ、やりがいがあると思いました。ダンスの技術競争に身を投じながらも、僕自身はダンスを使って、「アートやエンターテインメントとしてどんな表現ができるのか」に挑戦したかったんです。ダンスには、人を感動させられる力があると感じていたので、それを証明したいと思って取り組んできました。そこで、いつしかダンスが広く認知されるようになって、テレビや舞台やSNSなど、さまざまなところでダンスが見られる環境になった。それはすごく喜ばしいことですが、同時に、まだまだ伝えきれていないとも感じていて。DAZZLEが作る作品は、ダンスで完結するものではありません。物語性があることこそがDAZZLEの特徴で、その物語も含めて、ダンスを通じてどのように表現できるのかを追求してきました。DAZZLEのような存在は稀有だと自負しています。まだその可能性は伝えきれていないと思っているので、今後もより認知していただけるよう頑張っていきたいと思っています。
――ダンスでアートやエンタメ、物語性を表現したいというのは、ダンスを始めた最初から考えていらっしゃったんですか。それとも、何かきっかけがあったのでしょうか?
長谷川:かなり初めの頃から考えていました。僕は元々、ストリートダンスからダンスを始めたのですが、当時のストリートダンスのスタイルや表現は、いわゆるダンスカルチャーとしての価値観で作られているものでした。例えば、ヒップホップであれば、アメリカの文化に根差した表現であることが前提で、それを再現しようとダンスをするのが主流だったわけです。ただ、僕はそうした既存のダンスジャンルではなく、自分たちだけのオリジナルのスタイルを作りたいと思っていたので、ダンスの振付も垣根を超えて、境界線をまたぎながら作ってきました。それから、僕自身が好きだった映画や漫画、ゲームといった別の文化から影響を受けたものをダンスで表現できないだろうかと考え、振付してきました。当時は誰もやっていなかったことですし、自分たちなりの独自性を見つけられるのではないかと思ったんです。
――飯塚さんはいかがですか。
飯塚:僕は子どもの頃から、芸術やエンターテインメントが単純に好きでした。それらに救われたというほどつらい境遇だったわけではないですが、生きるために大事なものでしたし、それを楽しみに生きていました。そして、その延長線上に、自分も作りたいという思いが芽生え、自然な流れのまま、この世界に入ってきたように思います。これまで、「お客さんに自分が昔、思っていたような気持ちを抱いていただける作品が作れていたらいいな。そうした存在になれていたらいいな」と思いながらDAZZLEを続けてきて、ここにたどり着いているという感覚があります。
――そうすると、始めた時から変化しているというよりは、ずっと続いているという感覚なのでしょうか?
飯塚:根源的なものは変わっていないのかなと思います。それをどういう手法で表現していくのかというところでは、変化はもちろんありますが。

――この30年で、お二人にとって転機になった出来事は?
長谷川:まさに『花ト囮』を作ったことは大きな転機になったと思います。ストリートダンスの世界、あるいはコンテンポラリーダンスの世界で、自分たちの表現を披露してきましたが、独自性こそが最も重要だと考えて振付をしていたので、それぞれのコミュニティーの中で浮いた存在になっていました。それは望んでいたことではありますが、コミュニティの価値観とは異なる表現だったことや、技術がまだ拙かったということも含めて、それぞれの世界でトップを取ることはできなかったんですね。その後、舞台活動に移ったとき、予想を超えて我々の作品が高く評価されることに気付いたのですが、そのきっかけになったのがこの『花ト囮』でした。この作品を作ったことによって、獲得できなかったタイトルが手に入ったり、念願だった海外公演にもつながっていき、韓国やルーマニア、イランで 映画祭に招聘していただいたり、カザフスタンにも行くことができました。想像したこともなかった土地にこの作品が連れて行ってくれて、いろいろな景色を見せてくれたんです。それから、その次にイマーシブシアターに着手したことも表現としての幅を大きく広げてくれたかなと思います。
飯塚:僕も転機はその二つだと思います。自分たちが表現したいものを新しい形で、過去にとらわれずにやっていきたいというのが、DAZZLEのコンセプトとしてずっとあります。それまでダンス業界には「ダンス公演なのに言葉があるなんて」という考えも強かったので、白い目で見られることもありました。結局、僕たちが続けてこられたのは、自分たちが表現したいものを支持してくれる人がいるからこそです。ストリートダンス、コンテンポラリーダンスの世界ですごく支持されたということではないんです。自分たちが表現しているものと、それを「いいね」と言ってくださる方たちの関係性の中で拡大していっているという感じがしています。
イマーシブシアターに関しては、最初は不安もありました。ストリートダンスのステージから舞台に行くのは、延長線上にあるような感覚がありましたが、イマーシブシアターは全く違う道だと感じていましたから。最初はチケットが全く売れなくて、初日が明けてから完売になったということもありました。観ていただいて、理解していただいて、「いいね」と思っていただいたのかなという手応えを感じました。そうして新たなことに挑戦できるというのは、DAZZLEの良いところでもあります。今では、イマーシブシアターもいろいろな方たちが上演していますが、舞台お世界で行き着くところまで行った後に取り組んでいるのがDAZZLEだと思っています。国際フォーラムや赤坂ACTシアターで公演を行ったことで、「ダンスを観劇する」という意味でこれ以上大きな会場ではできないことがわかりました。そのような経緯もあって、イマーシブシアターという全く違う道を選べたのかなとも思います。
――まさに、近年はDAZZLEはイマーシブシアターの先駆者というイメージがあります。一方で、本作は舞台作品になりますが、舞台公演への思いも聞かせてください。
長谷川:我々にとって舞台が始まりであり、原点となるものです。空間に対してどういうアプローチをしていくのかなど、舞台で培ってきたものがあるからこそ、イマーシブシアターを成立させられたのだと思います。イマーシブシアターと舞台は、それぞれに良さがあります。イマーシブシアターを経験した今だからこそ、今回、『花ト囮』の舞台作品をどう変化させられるかに注目して創作しています。
飯塚:両方をやっているというのが僕たちの強みなのではないかなと思います。舞台の魅力というものが必ずあって、それは表現だけを伝えられる場であるということも一つです。舞台でしか伝えられないものがあると思うので、舞台での公演もとても大事に思っています。本来ならば、毎年、公演を行いたいんですよ。ただ、常設の公演を始めてしまってからは、どうしても難しくて。体が2つ存在するのであれば、両方やりたいと思っています。

――DAZZLEにとって転機ともなったというこの『花ト囮』という作品は、どのような発想から生まれた作品なのですか?
長谷川:DAZZLEの舞台作品としては3作目となる作品ですが、当時、日本人として生まれたからには、自国の文化を題材にした作品を作らなければならないという使命感を感じていました。それで、日本らしい作品って何だろうと考えたときに出会ったのが、黒澤明監督の『夢』という映画でした。その作品の中にあった狐の嫁入りのシーンを観たことが、大きな着想となったと思います。晴れているのに雨が降るという不思議な現象を、「狐の嫁入り」と表現する感覚に、すごく心を惹かれました。目に見えないものに恐れを感じたり、敬意を表したりということが日本の文化の中にあると感じているのですが、そうした精神性が「狐の嫁入り」にもあるような気がして。それに、日本の物語には、どこか残酷なものが多いようにも思います。その残酷さと美しさと共にある表現を作りたいと思って、この『花ト囮』が生まれました。
飯塚:表層的に和の要素を入れて作品を作るのは簡単だと思います。例えば、傘を持って着物で踊ると、そう見えますが、それが本質的に日本の表現なのだろうかと考えていて。『花ト囮』には、「狐の嫁入り」だけでなく、霧月という、人に富をもたらすという座敷童子的な存在のキャラクターも登場します。そうした日本の民話や神話がベースになって作られた作品なので、形だけでなく、「何でそういうお話が生まれたのか」「日本古来の家の中での人間関係」「日本の古代にあった自然への信仰」といったものがきちんと描かれている作品にしたいと思いました。
それから、影です。『陰翳礼讃』ではありませんが、光と影がある中で、日本人は影にこそ奥行きを感じるのではないか。その影の先に何かあるのではないか。そういった思いが拡大していって、目に見えているはずのないものも見えてくるというのがこの作品の面白さだと思います。

――今回、再構築して作られるということですが、どういったところが新しくなるのでしょうか?
長谷川:この作品を最後に上演したのは12年前。この12年間に、何十作品も作りましたし、イマーシブシアターもやりました。そこで得たものをどう『花ト囮』に落とし込めるのかを今、見つめ直しています。当時、表現しきれなかったことや、削るべきこと、守るべきこと、膨らませるべきことがたくさん見えてきていて、今まで積み重ねてきた経験とアイデアを作品に詰め込んでいこうと考えています。
物語のベースは同じですが、そこにもっと奥行きや深みを加えたいと思っていて。「愛しているけれど届かない。守りたいけれど傷付けてしまう」という、人の内面を露にしていきたいという思いがあり、副題に「露」という言葉を付けました。そうした仄暗いところにも今回はより目を向けたいと思っています。
それから、人間が空間を巧みに操るということも、この作品の強みです。ステージ上にある舞台美術をいかに動かしながら空間を変化させていくかを、究極的に追求した作品でもあります。それが国内外で評価を受けるきっかけにもなったのだと思いますし、それをここまで徹底的にやっているのはDAZZLEだけだとも思っています。そんな我々のストロングポイントを、さらに強化した作品になっていると思います。
飯塚:12年経っているということは、自分たちも変化しているし、お客さまも、社会状況も変化しているということだと思います。そうした中で、僕は時間感覚が大きく変化している気がしています。映画を倍速で観るのが当たり前になっている現代で、それを否定するのは簡単ですが、そうではなく、客席にいるそうした人たちにどう観せるかを考えなくてはいけない。そうした現実の中で表現しなくてはいけないと思ったときに、今の感覚でもう少し構築すべきなのではないかというところで作品が大きく変わっていくのだと思います。

――ありがとうございます! 公演が楽しみです。それでは最後に、DAZZLEとして、そして長谷川さん、飯塚さんとしてのこの先の目標を教えてください。
長谷川:僕は表現の形は何でも良いと思っています。ダンスが好きで、ダンスという表現に魅了された人間なので、当然ダンスを中心に物事を考えてはいますが、ダンスだけで完結したいわけではない。そこに音楽があって、ファッションがあって、空間があって…といろいろな要素が混在して表現ができあがるので、それをもっともっと突き詰めていきたいと思います。そして、DAZZLEはダンスが持っている可能性を拡張している集団だと自負していますので、今後もまだ見ぬ表現の方法や形を模索していきたいと考えています。イマーシブシアターを超えた、もっと違う体験もあるかもしれません。また新しい表現を生み出していきたいという思いがあります。
飯塚:僕は先ほども話したように、芸術やエンターテインメントが好きなんです。ニューヨークに住んでいたことがあるのですが、ニューヨークには常設の劇場が20個以上あって、MoMA(ニューヨーク近代美術館)があって、メトロポリタン美術館がある。そうした環境は、人間に大きな活力を与えていると思います。日本でも、そんな環境を実現したいです。舞台でもイマーシブシアターでも、いいので、常設公演をやりたいですね。僕たちは同時に2箇所の常設公演を上演していたことがありますが、DAZZLEだけで5箇所、10箇所やってもいいと思っています。ニューヨークより人口の多い東京は、50個くらいの劇場があってもいいのではないでしょうか。そして、DAZZLEの作品を観るために世界中から人が集まってくる状況を作りたいなと思っています。


公演概要
DAZZLE結成30周年記念公演「花ト囮 – 露 -」HANA to OTORI – arawa –
2026年7月2日(木)〜12日(日)全14回公演
会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
(東京メトロ 有楽町線 「東池袋駅」6・7出口より直結、JR「池袋駅」(東口)より徒歩10分、都電荒川線 「東池袋四丁目」より徒歩2分)
■作・演出:長谷川達也(DAZZLE)
■クリエイティブディレクター:飯塚浩一郎(DAZZLE)
■振付・出演:DAZZLE ― 長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、高田秀文、三宅一輝
■出演:永森祐人、橋本有一郎、福島由羅、本橋侑季、山本幸輝、中込萌
【チケット料金(全席指定・税込)】
一般席:11,000円
学生席:5,500円 *公演日当日ご入場時に学生証の提示が必要です。
DAZZLE席:14,500円 前方2列目まで、ランダムポストカード付き
キョードー東京 https://tickets.kyodotokyo.com/dazzle30/
チケットぴあ(Pコード540-814) https://w.pia.jp/t/dazzle30/
e+ https://eplus.jp/dazzle30/
ローソンチケット(Lコード:31524) https://l-tike.com/dazzle30/
<アフタートーク>
会場:あうるすぽっと
■7月5日(日)17:00公演 終演後
登壇:長谷川達也、金田健宏、飯塚浩一郎、三宅一輝
■7月8日(水)14:00公演 終演後
登壇:長谷川達也、宮川一彦、飯塚浩一郎、南雲篤史
■7月9日(木)19:00公演 終演後
登壇:長谷川達也、荒井信治、飯塚浩一郎、高田秀文
※当該公演をご観劇のお客様はもれなくご参加いただけます。本公演に引き続き、お客様のお座席にてお楽しみください。
※アフタートークは終演後、準備が整い次第開始いたします。
※登壇者は変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※所要時間:約20分予定
<DAZZLE結成30周年記念スペシャルトークショー>
会場:あうるすぽっと
日時:2026年7月11日(土)19:00開始(18:45開場)
登壇者:DAZZLEメンバー
(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、高田秀文、三宅一輝)
ゲスト:先崎康弘
チケット料金:2,500円(税込・全席指定)※ステッカー付き
チケット発売日:2026年6月14日(日)10:00~ 先着・座席選択あり
受付:キョードー東京
https://tickets.kyodotokyo.com/dazzle30talk
※スペシャルトークショーへのご参加には、トークショー専用のチケットをご購入いただく必要がございます。
※登壇者は変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※所要時間:約1時間弱予定
公演チケットは、キョードー東京、ぴあ、e+、ローソンにて販売中です。
詳細はホームページよりご確認ください。https://tickets.kyodotokyo.com/dazzle30/


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セットアップ:DRESSEDUNDRESSED
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取材 文・撮影 嶋田真己

