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2014年7月11日 15:31

伝説のピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァに単独インタビュー!(後編)

You Tubeで7100万以上のビューを記録し、クラシックアーティストとしてネット上で最も視聴された伝説のピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァに単独インタビュー!(後編)

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―マイケル・ナイマン作品のCDをリリースするきっかけは?―

V・L:そもそも、これはナイマンさんへのサプライズ・ギフトとして企画されたので、私自身まさか、これを録音するとは思いもよりませんでした。ただ素晴らしい企画だと思ったので、聞いて3分で決めたのですが、それまでもちろん彼の音楽は知ってはいましたが、弾いたことは一度もなかったのです。

でも10月に話が持ち上がって、1ヶ月後にはレコーディングをするというスピーディーな日程だったし、シークレットの企画だったので人前で練習することもできませんでした。もちろん譜面も見ることができないので、こっそり隠れて練習しましたが、2ヶ月で完成させたアルバムでした。サプライズは良かったです。彼の音楽は、非常に音の数が少なくてこの感情をピアノで表現することはとても難しいのですが、私にとって素晴らしいチャレンジであったし、それが結果的に良いものになったと思いました。

―そのような準備期間がほとんど無かった中、どのようにイメージを作っていらっしゃったのでしょうか?映画の場面をイメージしていらっしゃるのか、ご本人の独自のイメージでしょうか?―

V・L:基本的には私は映画を見ないで私の解釈で弾きました。実際、ナイマンさんご自身も映画を見て創るわけではなく、台本だけ見てそこからのイマジネーションで作曲していると聞いたことがあります。特にこの作品は、女優さんに合わせて技術的に少し譜面を変えなければならいこともあったりとか、映画に合わせるために速くしたり遅くしたりなどの時間調整をしたりしたそうです。映画に合わせるためにそもそもサウンドトラックが作られたので、それとは分けないといけないと思いました。サウンドトラックをコピーするのではなくて、自分が受ける解釈で弾きました。勿論、映画は何度も観ていますよ。

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―このアルバムの話は、なぜ自分にオファーが来たと思われますか?―

V・L:私とナイマンさんには共通項があると思います。ナイマンさんは一般的には「ああ、映画音楽の作曲家ね?」と思われがちで商業的なイメージが強い方だと思います。しかし、実際にはシンフォニーからオペラ、室内楽など素晴らしい作品がたくさんあるというのに、ちょっと軽く思われることが多い。私自身も、You Tube上のピアニストだという商業的なセルフプロモーションをするだけの人だと思われて、お互いに何かレッテルを貼られていて、そうではないということを証明するために、とても努力が必要だったと思っています。

彼は、凄くお金持ちだと思われていて、実際サッカーのチームのオーナーになりたいという夢があるそうですが、周囲からは「そんなの簡単にできるのでは?」と言われているそうで、大笑いしてしまうそうです。それほどのお金は無いのに、商業的なことをしているから、相当なお金持ちと思われているようです。私自身は純粋なピアニストであり、彼は作曲家であることを証明したいということで、そこが二人の共通点だと思っています。

―今回、ナイマンさんの曲を録音だけでなくYou Tube上にアップされて、全曲を弾かれたのはリシッツァさんが初と伺いました。今後はリシッツァさんのYou Tubeとの関わりは、どのように展開されていかれるのでしょうか?―

V・L:DECCAというレーベルがあるようにYou Tubeというレーベルがあると思っています。ナイマンを発表するほかにベートーベンやバッハを常に発表しています。世界中の若い人にもっとどんどん見てほしいです。中にはCDを買えない人がいたりダウンロードするお金さえない人たちがいて、You Tubeしかツールとしてない人たちがいます。特に若い人達に私がいかに音楽を愛しているかというこの気持ちを訴えていきたいと思っています。

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―とても印象的で素敵な映像ですが、どなたが考えられたのですか?ご自身で?―

V・L:もちろん、私自身です。曲のイメージに合わせてアイディアが浮かんできます。誰でも考えつかないようなアイディアを考えることが楽しいですし喜びです。

撮影も全て自分でしていますが、最近の企画では演奏者の視点でどのように映るのかというのを伝えたくて、ヘルメットにつけるようなカメラで撮影したりしました。

主人も息子も手伝ってくれます。主人は運転手をしてくれたりカメラマンや録音なども手伝ってくれます。今回のCDの映像は海辺に古いピアノを運んで撮影しました。後ろに1台ビデオを固定して撮影しました。動画の中に出演しているのは息子です。

―撮影時に苦労した点や気に入っている映像がありましたら教えて下さい。-

V・L:どれが特別というものはありませんが、自分なりの解説というかコメントを載せるようにしています。たとえば美術館に行ったらガイドさんが説明してくれますね。そのように伝えるために解説を入れています。今、一番人気なのは『月光』で700万ビュー位あり、主に若い人が見てくれています。その中で珍しい曲、普段聞いたことのない曲などをアップして、このような曲もあると知って欲しいと思っています。最終的に私の目的はコンサートに来て生の演奏を聞いて欲しいと思っています。実際に「You Tubeで知って聴きにきました。」とおっしゃる方や、初めてクラシックのコンサートを聴きにきて「メタルロックを聴いたように興奮した」とおっしゃる方もいました。ですから今後もどんどんYou Tubeにアップしていきたいと思っています。

―そのご主人アレクセイさんもピアニストで、2台ピアノコンクールでも優勝されたりとご活躍ですね。プライベートでもご家庭ではご主人と音楽一筋の会話でしょうか?―

V・L:勿論です!(確信を持った表情で)そもそも音楽というのは他の人と共有することだと思います。それは原始時代で太鼓を叩いて皆で踊っていた時代から、音楽とはシェアするもの、それがまさに今の時代はYou Tubeだと思います。一つの音楽について、コメントをつけたり話し合ったりして、そのような社会的な活動が音楽の原点だと思います。音楽以外のプライベートとしては、当然、母親としては息子が興味のある事を共有する事だと思っています。美術館や博物館へ行ったり動物を育てたり一緒にしています。

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―現在の活動、そして今後、新たな挑戦などがありましたら教えてください。-

V・L:(にこやかに笑って)まずは、いかに誰も期待していないことをサプライズで提供できるのか?ということを探すことです。そしてパリに引っ越したのでフランス語もまだまだですし・・今これから家族が皆、パリに引っ越してきます。(現在家族はアメリカ、ノースカロライナ在住)やはりパリのほうが旅をするにも、コンサートツアーをするにも便利ですし、私はパリが大好きなので今はとりあえず一人でパリに住んでいますが説得をして家族に来て貰います。

―それでは、今度いつ日本にいらっしゃるのか決まっていないと思いますが、メッセージをお願い致します。-

V・L:いつ来られるかはまだわかりませんが、リサイタルの場合は企画が出てからすぐに決まりやすいので、もしかするとすぐに来られるかもしれません。オーケストラなどの場合は、人がたくさん関わるので今回は2年ほど前から決まっていたのです。とにかく、まずは私のコンサートに来ていただきたいと思っています。You Tubeとライブとはかなり印象が違うと思います。例えば、本を見てパリの写真を見るのと実際自分が行ってみるというのは、違いますし、あくまでYou Tubeというのは、作品への導入部分であります。

―今回のアルバムで好きな曲を教えてください。-

V・L:楽しかったのは『ダイアリー・オブ・ラヴ』『羊飼いにまかせとけ』かな?選曲に関しては有名な曲は勿論のこと、好きな曲、そしてアンネ・フランクの曲は誰も録音していなかったので録音しようと思いました。

―インタビュー後記―

とにかく一言で彼女の印象を言うと「カッコいい!」女性だと感じた。You TubeでのUpに関して、世界中には色々な事情の人間がいて、お金が無くてCDを買うことやダウンロードすることがたやすくない人々も多いはず。そんな人にも(自分の演奏が)クラシック音楽に触れるきっかけとなって欲しいし、そして今後も誰もしたこともないようなビデオを作りたい!と目をキラキラ輝かせて話す姿がとても少女っぽく、その反面、凛々しく魅力的な方でした。

取材:RanRan Entertainment

写真:Yasuhiko Akiyama

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ピアノ・レッスン~リシッツァ・プレイズ・ナイマン~

楽しみを希う心(ピアノ・レッスン)

さよならモルチェ(アンネの日記)

ダイアリー・オブ・ラヴ(ことの終り)

羊飼いにまかせとけ(英国式庭園殺人事件)

他全25曲

ヴァレンティーナ・リシッツァ(ピアノ)

 

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