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2021年2月25日 14:35

加藤和樹インタビュー!ミュージカル『BARNUM』 人生にはサーカスのようにいろいろな喜びや幸せが詰まっているんです。

取材:記事/RanRanEntertainment 写真/オフィシャル


加藤和樹主演ミュージカル『BARNUM』が2021年3月6日(土)から東京芸術劇場 プレイハウスで開幕する。本作は19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収めた興行師、フィニアス・テイラー・バーナムの半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカルで、今回が日本初上演となる。演出は荻田浩一が手がける。加藤和樹がバーナム役に、元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなとが妻のチャイリ―・バーナム役に扮する。加藤和樹に舞台にかける意気込み、作品への思いを聞いた。

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――本作への出演が決まった時のお気持ちはいかがだったのでしょうか?

最初、バーナムの名前を聞いた時は、(映画)『グレイテスト・ショーマン』を思い描いたんですけど、この作品で描きたいのは彼が歩んできた人生であり、成し遂げていくこと、興行を打ったり、サーカスを作り上げる事、そこがすごく大事なんだと思いました。今までも実在する人を演じてきましたが、今回ほど難しいことはないなと思っています。でも朝夏(まなと)さん(チャイリ―役)と一緒ということでとても心強いと思いました。自分がP.T.バーナムという人物の半生を共に生きる、それは難しいことでもありますが、すごくワクワクした気持ちになりました。

――ブロードウェイミュージカルの初演ということになりますが、そこに対する思いはありますか?

すごく光栄なことだと思います。日本には“3大サーカス” の木下大サーカスもありますし、日本でやる意味を打ち出していきたいと思います。とはいえ、いつもそうなのですが、こういう作品に取り組む時には常に新しい作品を作るという思いでやるので、それは例え再演だろうと同じものを作るということではないです。楽曲はオリジナルの音源を使いますが、今回は日本語で歌いますし、歌詞の意味であったり、言葉の使い方で、我々にしかできないものを作り上げようという思いは強いです。細かい演出はこれからですが、今、自分なりに思い描いている画や、台本を読んだ印象、音楽から受ける印象から、その全体像が見えてきているので、その擦り合わせと、演出の荻田(浩一)さんが思い描いている『BARNUM』 の世界観をみんなで共有していくことだと思います。

――台本を読んで、バーナムの半生に触れることで「サーカスこそ人生だ」という言葉がぐっと胸に響いたそうですね。

はい。そこには、いろいろな意味が込められています。サーカスはいろいろな楽しみや、何が起こるかわからない、先の見えない中に喜びがあったりします。それは人生と似ていますよね。つまり、人生にはサーカスのようにいろいろな喜びや幸せが詰まっているんです。そして、みんなの笑顔、お客さんの幸せというのが自分の人生だという意味にも僕は捉えていて、彼の生きた証こそがそのひと言に詰まっているとすごく感じました。

――バーナムを演じられるにあたって、朝夏まなとさんと木下大サーカスを観に行かれたそうですね

はい、観に行かせていただきました。サーカスは子どもの時に観に行ったこともありますし、大人になってからはシルク・ド・ソレイユを一度ロサンゼルスで観たことがあって、それ以来だったんですけど、めちゃめちゃ感動しました(笑)。自分たちもお客さまに向けて何かを表現することをしているので、「あれ、どうなっているのだろうって」って。でも全くわからなかったです。心の底から楽しんで帰ってきました。すぐにもう一回観たいぐらいです。

――バーナムを投影して見ていらっしゃいましたか?

サーカスを興行するにあたって、どういうものが必要で、どのぐらいの規模なのか、それがどれだけ大変なことなのかということは頭をよぎったりしましたね。あれだけの一座を率いて全国を回るのは家族以上の絆が無いと無理だと思いましたし、そこを統率している人物としてどうあるべきかというのをものすごく考えました。

――バーナムの人としての魅力はどこにあると思っていらっしゃいますか?

僕は、彼の行動力、思想、考え方にあると思います。もちろん全てが成功してきたわけではないですが、それでも前を向いて諦めない姿勢が魅力。チャイリ―も「しょうがないわね」と言ってついて行くんです。結局、チャイリ―が彼に惚れた理由も、夢を見て、まっすぐ自分のやりたいところへ向かっていく、彼の想像力、才能なわけです。夢を叶えたい…そういう瞬間って男が一番キラキラしていると思うんです。やりたいことに向かって夢を追いかけている姿、それは決して楽な道ではないということはバーナム自身もわかっているんです。あの手この手を使って努力して、どうしたら人を楽しませることができるのかという、彼のエンタティナ―としての根底に、人を幸せにしたい、楽しませたい、喜ばせたいという思いがあるから、彼は人間的に魅力的なんですよ。それが、ただの詐欺師ではないというところだと思っています。

――チャイリ―が「しょうがないわね」と言ってついて行くところに大きな愛があるのですね。

結果、それが周りの人を幸せにする。チャイリ―ももちろん犠牲にするものがあるかもしれないけれど、心が豊かになるということ。サーカスを観に来る人たちもそれぞれ生活があって、でもそこに喜び、感動があるからこそ、人はそこを求めるわけですよね。それをバーナムは体現した人だと思います。バーナムが遺した名言の中に、「崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」という、それは一表現者としてものすごく感銘を受ける言葉なんですよね。彼の魅力はそのひと言に詰まっていると思います。

――チャイリ―役の朝夏まなとさんとは『ローマの休日』に続いての共演で、お稽古もいれると半年でしょうか?

半年以上ですね。

――なかなか、2作続けて組むということもないと思うのですが、今回の作品についてお二人でどんなことを話されていますか?

『ローマの休日』から「次も一緒だね」ということは話しました。すごく信頼できる相手ですのでのでバーナムとチャイリ―の関係性はすごくよく描けると思っています。バーナムとチャイリ―は異性として好きというよりはお互いの才能を自分と違うからこそ惚れているということに通じていると思うんです。朝夏さんは僕には無いものをすごくたくさん持っていて、素晴らしいなと思うことが山ほどあるんですね。今回の舞台を一緒に作っていく上では重要なことだと思うので、お互いに口に出してはいませんが、感じている部分ではあると思います。そこは、すごく楽しみです。不安は一切ないですね。

――前回の『ローマの休日』とは力関係は逆のような感じですが?

どうかな?チャイリ―は強いので(笑)。現実的な部分もありますし、それでも夫を支えてくれる、的確なことを言ってくれるんですよね。ぐさっと釘を刺すような。でもそういう人がいないとバーナムも燃えないと思うんです。これが全面的に「私、あなたをサポートします」という全部イエスな女性だったら、バーナムは彼女に惚れていないし、たぶん興行もうまくいっていなかったと思う。でも要所要所で本音を、道を正してくれるからこそ彼女を信頼しているし、愛しているし、絶妙な関係なんですよ。すごく言い合うこともあって、“何もかも正反対だ”という歌もあるんです。君の生き方、考え方を好きなんだという深い夫婦で、深い、ただの普通の愛情ではない、心で結ばれている二人というのを感じていただければといいなと思います。そこを感じていただけるように朝夏さんとは作りあげていきたいと思っています。

――実在人物を演じるのと、架空の人物を演じる違いはありますか?

ありますね。それは以前『BACKBEAT』という作品でジョン・レノンを演じた時にものすごく感じたんですけど、彼自身を演じようとするとうまくいかない、周りがその人物を浮き彫りにしてくれるので、今回も自分がバーナムだというのはもちろん根底にはありますが、そこをあまり意識し過ぎないようにということは思っています。

――バーナムというと、映画『グレイテスト・ショーマン』というイメージが現時点ではあるのですけれども、あの映画と違うミュージカルの魅力はどの辺りにあると考えていらっしゃいますか?

これは大きな違いだと思うのですが、我々がやるのはサーカスを作り上げた人物の人生を振り返った中で何があったのか、もちろん映画でも描かれているところではありますが、我々は決して舞台上でサーカスをするわけでないところが大きな違いですね。楽曲がサイ・コールマンであり、木下大サーカスを観に行った時に思ったのですけど、本当にサーカスにいるような楽曲が多いんです。心が弾むような、ワクワクさせる楽曲が多くて、歌稽古しているだけでものすごく楽しい気分にさせてくれるんです。その音楽、そこに乗る言葉の魅力というのが今回あると思います。メインが、バーナムとチャイリ―のやり取りになってきます。その中で描かれる夫婦間の愛情だったり、揺れ動いて行動するバーナムの行動力だったり、一興行者として彼がどんな人生を歩んだかという人間ドラマだと思うので、そこに注目していただきたいですね。もちろんサーカスのシーンは木下サーカスさんにご協力いただいて、映像や、今の時代だからこそできる表現法を打ち出していきます。摩訶不思議な世界に皆さんをご招待します。

――この役を演じるにあたって、特別に準備されていることはありますか?

彼は話術に長けている人なので、台詞をただ吐き出すのではなく、彼がいろいろな事を考えながら、頭の中で言葉を選びながら喋る言葉の巧みさ、説得力に長けていたので、そこはいつものお芝居とは変わってくると思います。

――英語だと早口言葉のような台詞がありますよね?

めっちゃ早いです。毎日口ずさんでいます(笑)。しかもサイ・コールマンの曲って音階が、ここに行くというところに行かなくて、半音ずらしていたりするんです。そこが、もう、はまると心地いいんです。バーナムの性格を表しているような感じになっていると思います。それはソロの曲だけでなく、みんなで歌う曲もそうなんです。ここにいかないの?っていうところに行ったりするので、お客さんも聴いていて「おっ」と思う瞬間だと思います。

――今までご覧になってきたものの中で、地上最大のショーだったと思われたのは?

その時やっているものが一番のグレイテスト・ショーだと思ってやっているので、今回グレイテスト・ショーになるのが、この『BARNUM』だと思います。それをお届けできるようにみんなで力を合わせてやりたいと思います。

――ご自身とバーナム、ここは似ている、という部分はありますか?

エンタテインメントとしてあるべき姿、人を楽しませたいという、その素直な心というのは考え方としては同じだなと思いますね。ただ、その表現方法がちょっと違いますけれど(笑)。

――プライベートで人を驚かせたりすることはありますか?

ないですね(笑)。そこまでの行動力はないですね。それが失敗するか、成功するか、わからないので、僕だったらちゃんと準備をしてやりますけど、バーナムはそれを考えずにやってしまうので、チャイリ―に「もうちょっと現実的になって」と言われてしまうんです。そこは自分との大きな違いだと思いますね。

――劇中で歌われる「我が人生の色」という楽曲がありますが、加藤さんの色は、どんな色でしょうか?

僕は見ての通り、モノクロなんですけど(笑)。(※インタビュー時のセーターがモノクロ)。自分の色、好きな色は紫だったりするのですが、自分で描いていかなくてはいけない色はバーナムのようなビビッドな色だと思います。表現者としては、モノクロの方が、何にでもなれる可能性を秘めていますし、染まらなかったり、時には染まったり、自分はそういうイメージですね。

――今のような状況になってから1年経ちましたが、ご自身変わられたところはありますか?

エンタメ、舞台を作り上げていく上での覚悟、気持ちの持ち方は変わったと思います。我々もやるからには徹底的にやっていかなくてはいけないですし、止めるという選択肢よりもどうやったらやれるのかというのを考えていかなくてはいけないと思っています。

――『ローマの休日』に続き、この『BARNUM』が開幕しますが、今、加藤さんの活動の原動力になっているものは何でしょうか?

舞台も中止になり、大変な時期もありましたが、いろいろな役者たち、アーティストたちが歌を届ける動きをしていたので、そこに参加させていただいたことで、自分もエールをもらいました。そうやって役者たちが繋がって一つのメッセージを届けるのは「ミュージカルと何ら変わりなくて。みんなで力を合わせて、編集してくれる人がいて、形は違うかもしれないけれど、そこにあるものは同じだよね」と思えたんです。配信だからこそ伝えられる思いもありますし、その中で「やっぱり生がいいね。早く歌いたいね」という思いが、お客さまと演者たちとが一致して、みんなの思いを聞けたのが原動力になりました。「早く劇場で舞台観たいです」「ライブハウスでライブみたいです」その声援があったからこそ動きだせたと思いますね。

――『BARNUM』をご覧になる皆さまにメッセージをお願いします。

まだ大変な状況が続きますが、この『BARNUM』という作品は、皆さまに幸せな気持ちをお届けできる作品です。バーナムという人間を通して、前に進んでいく、人としてのやるべき事を成し遂げていく、行動する事の大切さを教えてくれる作品です。前向きになれる作品だと思いますので、よろしかったら劇場まで足をお運びください。

――ありがとうございました。

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『BARNUM』
脚 本:MARK BRAMBLE
音 楽:CY COLEMAN
歌 詞:MICHAEL STEWART
翻 訳・訳 詞:高橋亜子
演 出:荻田浩一
出 演:加藤和樹 朝夏まなと
    矢田悠祐
    フランク莉奈・綿引さやか(ダブルキャスト)
    原嘉孝・内海啓貴(ダブルキャスト)
    中尾ミエ ほか
特別協力:木下サーカス
企 画:シーエイティプロデュース
主 催・製 作:シーエイティプロデュース エイベックス・エンタテインメント

公式サイト https://musical-barnum.jp/

【東京公演】3月6日(土)~23日 (火) 東京・東京芸術劇場 プレイハウス
【兵庫公演】3月26日(金)~28日 (日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【神奈川公演】4月2日 (金) 神奈川・相模女子大学グリーンホール
【あらすじ】
バーナムの興行師としての人生は、「ジョイス・ヘス」という女性を【世界最高齢の160歳】として売り出すことから始まる。彼の誇大な広告や作り話によって、見世物の興行は成功をおさめるが、妻のチャイリーは人々をだますような仕事ではなく、社会的に尊敬されるような安定した職に就くことを望んでいた。しかし、見世物こそが自分の世界に彩りを与えてくれるのだと考えているバーナムは、博物館を経営したり、世界で最も小さい男「トム・サム将軍」といった話題性のある見世物を手掛けることによってますます有名になっていく。

(文:高橋美帆)

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