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2023年4月28日 12:00

創立75周年を迎え、新たな一歩を踏み出した松竹新喜劇! 藤山扇治郎&渋谷天笑インタビュー

取材/RanRanEntertainment

大正12年に開場した大阪松竹座が100周年を迎えた。さらに、2023年は、昭和23年に旗揚げした「松竹新喜劇」の創立75周年という節目の年でもある。そんな記念すべき今年、これまで長きにわたって松竹新喜劇を牽引してきた三代目渋谷天外が代表を勇退し、新たに上方喜劇の名跡を近年継承した藤山扇治郎、渋谷天笑、曽我廼家一蝶、曽我廼家いろは、曽我廼家桃太郎を中心に生まれ変わる。今回は、藤山扇治郎と渋谷天笑に生まれ変わる松竹新喜劇への思いを聞くとともに、5月13日(土)~25日(木)に開催される「松竹新喜劇 五月新緑公演」の見どころを聞いた。

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左から)藤山扇治郎  渋谷天笑


――新たな松竹新喜劇で、若手中心メンバーとして活動を支えていくお二人から、生まれ変わることへの思いをお聞かせください。

扇治郎 (取材当時)正直なところ、まだどう変わるのかというのは僕たちも分かりませんが、「五月新緑公演」から徐々に変わっていくところがあると思います。ただ、みんなで力を合わせてやっていけば、きっと何か良い方向に変わっていくんではないかなと思ってるところです。

天笑 僕は、劇団に入ったのが24歳の時で、今から15年前になります。これまでNHKの連続テレビ小説などにも出演させていただきましたが、松竹新喜劇では今回、初めて看板にしていただきました。これはやっと認めていただいたということなのかとポジティブに考えています。それは僕にとってはすごく大きいことで、ここからがスタートだなと思っております。

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――三代目渋谷天外さんが代表を勇退されると発表されていますが、それについてはどのような思いがありますか?

扇治郎 正直なところ、驚きが大きいですし、まだ実感がありません。代表はずっと天外さんがされると思っていたので。

天笑 僕は天外さんの付き人をしていてずっと一緒にいたので、天外さんが「60代の人が代表になって引っ張っていちゃダメだ。新しい人に変えていかないといけない」というお話をされていたのを知っていました。なので、なるほどなと。このタイミングなんだと思いました。31年間も代表をされてきたというのは本当に大変だったと思います。僕たちがその立場を引き継ぐわけではありませんが、この節目を僕たちも頑張っていかなければいけないと思いますし、僕たちが軸になりながら新たな階段を一歩登っていけたらと思います。

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――今後、松竹新喜劇がどのような形に生まれ変わるのかはまだ分からないとおっしゃっていましたが、お二人の目指す姿や理想とするあり方はどのようなものでしょうか?

扇治郎 舞台の演目についていえば、僕たち若手が中心となって、劇団のみんなと新しい作品を上演したいという思いがあります。もちろん、これまでの数々の名作は過去の大事な遺産ですし、とても大事なものです。そのうえでさらに新しい風も必要だと思います。新作と名作の両方を上演することで、お客さまにも新しさを感じていただけたら嬉しいです。僕は、作品こそが新しい風になると思いますし、そう思っていただけるように頑張っていきたいなと思っています。

天笑 僕たちより下の世代は「新喜劇」と言ったら「吉本新喜劇」だと思います。これを「松竹新喜劇」に変えたいという思いがあります。それから、役者が出たいと思う劇団にしていきたいという思いもあります。どちらの魅力も兼ね備えた劇団になれたら最高だなと思っています。

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――お互いの存在はどのように感じていますか?

扇治郎 天笑さんは、お世辞ではなく、気遣いができて、本当に素晴らしい方です。僕は付き人をしたことがないですが、やはり先輩に付くというのはとても大変なことだと思います。でも一方で、師弟関係が見えて微笑ましいなとか、羨ましいなと思うことも多々あります。実は今までは、師弟関係というのは、厳しいことやしんどいことの方が多いのではないかと僕は思っていたんです。ですが、天外さんと天笑さんの関係を見ていて、厳しい中にも気遣いや信頼があり、すごくいい関係だと思いました。それはやはり天笑さんの人柄があってこそ。新喜劇にとっても必要な方で、僕も一番信頼している方です。

天笑 僕から見た扇治郎さんは、 今、扇治郎さんがおっしゃったことの真逆です(笑)。全く気が利かない。昨日聞いた言葉も伝え忘れる。思いついたことを喋る。なので、僕が持っていないものを全部持っていると思います(笑)。実は、新喜劇に入りたての頃に、よく一緒に過ごしていたんです。当時、僕は東京に住んでいて、彼が滋賀に住んでいたので、公演がある時などさすがに遠いというので、一緒に住んでいたんですよ。その時から、生活も性格も正反対だと思っていましたが、そうした経緯があるからこそ、お互いのことは分かり合っていると思います。彼が何を考えて、何を話すのかだいたい予想ができるので、こうした取材もやりやすいです(笑)。信頼関係ができているなと思います。素晴らしい方です。

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――では、こうして長く松竹新喜劇が愛されてきた理由は、どこにあると考えていらっしゃいますか? お二人から見て、松竹新喜劇の魅力は?

扇治郎 松竹新喜劇の演目は、笑えるところとほろっとするところが良いバランスで混じっていると思います。多くのお芝居で、哀愁や人情が描かれているので、多くのお客さまに共感していただけると思いますし、だからこそこれまで長くにわたって愛されてきたのかなと思います。泣けて笑えて夢があって、希望があるというのが松竹新喜劇の根本であり、1番の魅力だと僕は思います。

天笑 扇治郎も言っていますが、ご近所付き合いの話など今ではあまりない人情のお話や、弱き人が強き人を倒すというお話など、多くの人が共感できるお芝居が多かったからなのかなと思います。それから、例えばドリフターズは、お客さまは次にどんな展開になるのか分かっていても、それを楽しみながら観るお芝居がたくさんありますが、同じように先の展開が分かっていてもワクワク楽しめる作品があるというのも飽きずに観ていただける理由なのかなと思いました。

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――「松竹新喜劇 五月新緑公演」についても教えてください。今回は、『花ざくろ』と『三味線に惚れたはなし』が上演されます。それぞれの演目の見どころをご説明いただけますか?

扇治郎 『花ざくろ』は、初演時に植木職人三次郎の役を僕の祖父でもある藤山寛美が演じた名作です。祖父は、純粋で優しくて、情があって、でもどこか変わっているという役を演じることが多かったのですが、この『花ざくろ』もその一つです。三次郎は妻に浮気されても怒らず、見捨てず、好きでい続けるという優しい男です。人間の純粋さや人を思いやる気持ちに心が動かされると思いますし、そうした情動を描いた作品だと思います。昭和39年に初演された作品ですが、普遍的なテーマを扱っているので、今見ても感動すると思います。僕自身は、このお芝居に出演させていただくのは初めてですが、75周年という記念の年にこの役が回ってきたというのはきっと何か理由があると思いますので、それを考えつつ、お客さまに喜んでいただけるよう頑張りたいです。

天笑 『三味線に惚れた』は、僕が主人の大工の鶴吉を演じさせていただきます。ちょっと女性にだらしない、女性を引っかき回す鶴吉の物語です。先ほどのドリフターズの話ではないですが、きっとどうなるのか先は読めると思いますが、それを楽しめる作品かなと思います。「どうせこうなるんでしょう?」と思いながら、それを楽しみながら観ていただければ。

――ありがとうございました!! 最後に、お二人にとって松竹新喜劇とは?

扇治郎 1番好きな劇団であり、僕のホームグランドです。

天笑 いい芝居をする、いい役者がたくさんいる、いい劇団だと思っています。なぜこんなに世の中に知れないのかなって思うぐらい、いい劇団なんですよ。なので、僕はなんとしても多くの人に知ってもらいたい。僕は、松竹新喜劇でこの渋谷天笑という名前をいただいたので、僕とは切っても切れない関係です。恋人のような劇団でございます。

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大阪松竹座開場100周年記念  劇団創立75周年
「松竹新喜劇 五月新緑公演」は、5月13日(土)~25日(木)に、大阪松竹座で上演。

 

ヘアメイク/suzawa・花井菜緒(JOUER)
撮影/井川由香 

 

 

 

 

 

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