取材:記事・写真/RanRanEntertainment
劇作家・演出家・映画監督、そして俳優と多彩な顔を持つ赤堀雅秋がシアターコクーンで手掛ける4作目は『美しく青く』。Bunkamura30周年のとなる本作の初日前会見、および公開ゲネプロが7月10日(水)に行われ、主演の向井理、共演の田中麗奈、そして俳優としても出演する赤堀雅秋の三人が会見に臨んだ。
本作は、震災から数年が経った集落が舞台で、人々が日常を取り戻そうとする中、猿による獣害に悩まされる自警団の男たちやその周りの人々を通して、人間の不毛な営みと人間のいとおしさが描かれる。自警団のリーダー青木保を向井理、保の妻・直子を田中麗奈が演じる。さらに共演は、大倉孝二、大東駿介、横山由依、駒木根隆介、森優作、福田天球、銀粉蝶、秋山菜津子、平田満。
初日を翌日に控え、赤堀は「シアターコクーンでは4回目なんですけど、近年まれに見る穏やかな心境、優秀なスタッフとキャストのお陰」と穏やかな表情を見せ、『美しく青く』というタイトルについて、「空であったり海であったりとか、人間の人知が及ばないものと対比して、根源的な人間の営みの在り方を浮き彫りにできないかと。『美しく青く』は希望、畏怖の念という思いで付けたタイトルです」と説明した。
向井は「(いつも)ゲネの前は胃が持ち上がってくるくらいの緊張感。濃密な稽古を経験できましたし、本番は変に気合いが入りすぎないよう心を整えて、明日を迎えようと思っています」と気を引き締める。さらに、自身の役どころについて「夫であり、義理の息子(義母役は銀粉蝶)でもあり、自警団のリーダーという、いろいろな面があるが、普通の人。誰にでもある衝動を抱えながら生きている普通の人をちゃんと演じなければならない。結局、自分が思ったことを演じるしかないので、難しいですけど、(保は)誰しもが持っている感情を持っている人だと思います」と語った。
また、田中は「直子には過去の悲しい出来事が心の根源にあって、それに対し夫とは逆にしっかり向き合って現実に感情を保っている。女性としての生理的な言動だったり、不安定なところがあって、彼女は頭の中が忙しい人だなと思うのですけど、リアリティをもって直子なのか自分なのか分らないくらいにやれたらいいなと思います」と意気込みを語った。
本作の見どころについて赤堀は「居酒屋のシーンで延々と不毛な会話をしているんですけど、そこが一番の見どころだと思います」と語り、向井も「不毛な台詞ばっかりなんですけど、それを繰り返していく。積み重ねていくことで見えてくる感情が、透けて見えればいいと思う。この人たちの内容のない会話の中でも、何かしら感情が動いているという細かいところを、舞台ならではの視点で観ていただければ楽しんでいただけると思います」とコメント。そして田中は「(ストーリーが)日常の積み重ねなので、注目するところは(観る人)それぞれ違ってくると思います。群像劇なので、自分に近い(と思う)人を自分に重ねてみることで、それぞれ面白みが違うと思います。逆に、皆さんの感想が楽しみです」と語った。
震災後数年が経過したが、防潮堤は未だ完成していない。荒れ果てた街に住み着いた猿から守ろうとする自警団。リーダー役の向井、大東ら。向井と妻役の田中麗奈の家族には認知症の母親がいて、家族間の葛藤が描かれる。劇中にはストーリーとは脈絡がないが、我々の日常生活会話が多数取り込まれる。夕食のシーン、居酒屋での宴会シーンなど。よく耳にしている会話なので会話そのものに違和感は全く無い。向井初め出演者が飲んだり食べたり非常にリアリティで、舞台セットも非常にリアリティ。夜空にUFOらしい物体が現れ、見上げる三人(横山由依、森優作、大倉孝二)だが、ストーリーには全く関係がないが、逆に印象に残る。
向井中心にストーリーが動くが、主役が浮き立つ訳でなくアンサンブルの舞台。舞台展開シーンでは客席演出が施され、向井らが客席間近で演技するのでファンには堪らない。
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019 『美しく青く』
東京公演 7月11日(木)~28日(日) Bunkamuraシアターコクーン 全22公演
大阪公演 8月1日(木)~3日(土) 森ノ宮ピロティホール 全4公演