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2024年6月7日 11:01

「第49回菊田一夫演劇大賞」授賞式レポート 三浦宏規「死ぬその日まで舞台に立ちたい」

左から)ウォーリー木下 宮澤エマ 前田美波里 井上芳雄 石丸幹二 安蘭けい 柿澤勇人 三浦宏規

「第49回菊田一夫演劇賞」授賞式が6月6日(木)に東京都内行われ、石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい、柿澤勇人、宮澤エマ、三浦宏規、ウォーリー木下、前田美波里が出席した。

「菊田一夫演劇賞」は、日本の演劇界に偉大な足跡を残した菊田一夫氏の業績を永く伝えるとともに、演劇の発展の一助として、大衆演劇の舞台で優れた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰するもの。第49回となる2023年度は、演劇大賞に「ラグタイム」上演関係者一同、演劇賞に柿澤、宮澤、三浦、ウォーリー、特別賞に前田が選出された。また、「ラグタイム」を代表して、この日は石丸、井上、安蘭が登壇した。

四半世紀前にニューヨークで「ラグタイム」を観て衝撃を受けたという石丸は、「この作品にかける私たちの想いは、特に人種の問題をどう乗り越えるか。それから難解な音楽をみんなでどう歌い切るか。そんな課題が山積している状態で稽古が始まったのですが、演出の藤田さん、スタッフの皆さまも知恵、アイディア、新たな解釈を踏まえながら稽古場でどんどん練り上がって、受賞対象になるような形まで仕上がってまいりました。(ニューヨークで観劇して)音楽の素晴らしさに心を打たれました。いつか日本でこの作品ができる日がきたらいいなと淡い思いがあったのですが、時を経て上演できたことを嬉しく思っています」と本作への想いを語った。

井上は、本作で初めて黒人役に挑戦。試行錯誤の結果、カツラが用意されたが、本番ではそれも被らないことに。カツラがないことで「表現できないんじゃないかという不安もありましたが、(実際に上演してみたら)僕たちには記号はいらないんだなと思いました。生きた人間として、その作品に相応しい上演形態を探っていければ、必ずお客さまに届くという自信と勇気をもらいました。この作品が日本でも世界でもさらに愛され続けることを望みます」と力を込めた。

安蘭は「演出家、演者、色々なスタッフさんみんなの力でこの作品を作り上げて、素晴らしいものにできたんだと思います。そして、この作品を愛してくださったお客さまがたくさんいらっしゃったんだなと嬉しく思っています。とても大きな賞をいただき、素晴らしい賞金をいただき、それを本当にみんなでどうやって分けようかなって(笑)。それがこれからの課題かなと思います」と冗談めかして語って会場を盛り上げた。

また、柿澤は「オデッサ」では、標準語と鹿児島弁、英語を話す通訳という役どころを演じた。あまりの難役に悩む柿澤は、脚本・演出の三谷幸喜から「柿澤さん、大丈夫。僕には見えてますから」と声をかけられたという。その言葉に救われたという柿澤だが、改めて公演終了後に「鹿児島弁と英語で芝居したことないのに、どうしてそういう設定を僕にあて書きでそうしたんですか?」と三谷に聞いたら「見切り発車です。柿澤さんが喋れる確証はなかった」と言われたと笑う。「何も見えていなかったんだなと思いまして、恐ろしいな、鬼の三谷幸喜さんだなと思いました(笑)。ただ、演劇をやっていると今後もそのような高い壁がやってくると思います。ただ、それでも諦めずに、一生懸命、誠実に、がむしゃらに精進してまいりたいと思います」と決意を新たにした。

宮澤は「2023年は初舞台から10年目の年でございまして、その年に初めての主演をやらせていただいてすごく嬉しかったです。恵まれたご縁と作品とカンパニーのおかげで今の私があるんだなとひしひしと感じる10年目でした。10年前の作品は柿澤くんと一緒でしたので、『オデッサ』の稽古中に『10年経ったけど、私たち演劇賞に全く縁がないね』と話をしていたら、二人でこういうふうに素晴らしい賞をこうしていただくことができたので嬉しく思っています」と受賞を喜んだ。

「のだめカンタービレ」、「赤と黒」、「千と千尋の神隠し」の3作品で受賞した三浦は「いずれの作品も日本初演だったり、新作公演でした。なので、一から全員でものづくりをするという経験ができて、初演ものは大変なことが多いですが、全員で力を合わせてどの作品もまっすぐ作っていったものなので、その作品たちで受賞できたことが嬉しく思っています」とコメント。そして、「僕は死ぬまで、死ぬその日まで舞台に立ちたいという夢があるんです。その場をいただけるように、その場を作っていけるように、これからも精進していきたいと思っております」と自身の夢を明かした。授賞式後には、すぐに上演中のミュージカル『ナビレラ‐それでも蝶は舞う‐』の本番を控えていた三浦。「僕、1時から公演があって、パーティーには出席できないのですが…この場を借りてご挨拶させていただければと思っています」とステージ上で苦笑いで謝罪をしつつ、フォトセッションが終わると途中退席となった。

そして、ウォーリーは「今回受賞した2作品は最初にプロデューサーの方が『これをウォーリーと一緒にやろう』と言ってくれたことが大きいですし、そのあと集まってくださったスタッフ、キャストの皆さんが、楽しんでものづくりができる現場になったらいいなと思っていたら、僕より楽しんで作ってくれた作品です。コロナ禍で『好き』という言葉の相反する不都合さ、辛さを考える時期もありましたが、今は『好きだからやる』ということを好意的に思っています。これからも好きな演劇やミュージカルを作っていきたいと思っております」と意気込んだ。

前田美波里は、15歳当時の菊田一夫との思い出エピソードを披露。続けて、「菊田先生が『1年やっても無理。10年やって1年生だと思わないと舞台はやっていけないよ』とおっしゃっていました。今、60年経ちました。やっと6年生なんです。だから、皆さん、私、もう少し生きたいと思います。それも舞台の上で。せっかくの素晴らしい賞をいただいたので、もう少し頑張って、あとせめて20年。いいじゃないですか。ヨボヨボになっても。そんな役をどうか演出家の方たち、書いて、私に役をください。私も舞台の上で死にたい気持ちです。菊田先生、ありがとうございます」と笑顔を見せた。

第49回菊田一夫演劇賞の受賞者一覧は、以下。
■菊田一夫演劇大賞
「ラグタイム」上演関係者一同(「ラグタイム」の高い舞台成果に対して)
■菊田一夫演劇賞
柿澤勇人(「スクールオブロック」のデューイ・フィン役、「オデッサ」の青年役の演技に対して)
宮澤エマ(「ラビット・ホール」のベッカ役、「オデッサ」の警部役の演技に対して)
三浦宏規(「のだめカンタービレ」の千秋真一役、「赤と黒」のジュリアン・ソレル役、「千と千尋の神隠し」のハク役の演技に対して)
ウォーリー木下(「チャーリーとチョコレート工場」「町田くんの世界」の演出の成果に対して)
■菊田一夫演劇賞特別賞
前田美波里(永年のミュージカルの舞台における功績に対して)

 

 

 

 

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