
作家・京極夏彦による異色のミステリー小説を実写映画化した映画『死ねばいいのに』の公開記念舞台挨拶が7月4日(土) にテアトル新宿で行われ、主演の奈緒、共演の伊東蒼、そして京極夏彦と金井純一監督が登壇した。

主人公・渡来映子を演じた奈緒は「『死ねばいいのに』というなかなかのタイトルの映画をどんな方たちが朝一番に観に来てくださったんだろうと思って、今日の日を楽しみにしてまいりました」とニッコリ挨拶。公開初日に映画館で本作を鑑賞したそうで「皆さんが集中して観てくださっているのを感じて、上映後もすぐに言葉が出てくるというよりは、息が漏れるような、皆さんそれぞれ自分の中で噛みしめてくださっているのを感じ、とても幸せな時間でした」としみじみ報告。

映子がその存在を追いかける相手・鹿島亜佐美役の伊東も、公開初日に映画館で鑑賞したという。「最後に主題歌が流れた時に、涙が止まらなくなってしまって。電気が思ったよりも早く付いたので恥ずかしくて…。一生懸命泣いてるのを隠して出ていきました」と照れながら「主題歌も含めて、最後まで『死ねばいいのに』という作品に浸った時間でした」と貴重な体験を回想していた。
原作者・京極は「朝から重たくてすみません。面白かったらそれは監督、スタッフ、キャストの皆様の功績です。面白くないと思ったら、それは私の責任です」とユーモアを交えてニヤリ。「原作を書いたのは15年程前で、映画化企画自体も長い時間がかかりましたので、この日は来ないと思っていました。難産の末に生まれた感がある」と明かしながら「総スカンをくらうだろうと思ったら、そうでもなくて良い話が届くことに驚いています。このタイトルでですよ!? SNSで発信する際はタイトルの前に#を付けてください。付けないと凍結される恐れがありますから」と笑わせながらも評判を喜んだ。
金井監督は「内容的に攻めたところもあるので、批判も多いだろうと思っていましたが、ビックリするくらい僕らの伝えたかったことが伝わって、ときめいてしまいました。まるでラブレターが届いたかのような。書いたことはないですが」と高評価続々に声も弾む一方だった。

奈緒と伊東は初共演。様々な作品を通して伊東推しだったという奈緒は「憧れもあるし、好きだし、御一緒出来るのが嬉しかった。どうしてもファン心が出てきてしまうので、最初はお顔を見ないようにしていました」と明かした。初対面の本読みの際に亜佐美としての伊東のセリフを聞いた際に「映子になれると思った。映子のことを理解できないと思う部分もあったので、糸の端を掴んだような気持ちにさせていただけた」と役作りにおいても影響を受けたという。
一方の伊東も「奈緒さんは笑顔が素敵で、奈緒さんがいるだけでその場が明るくなるようなところがある。奈緒さんにお会いした時に、一目惚れしたかのような感覚があって、その時に亜佐美の中にもきっとこういう気持ちがあったのだろうと思いました。私は人見知りタイプですが、自分の中ではかなり珍しく、たくさん私の話を奈緒さんにしちゃったりとか、聞いて欲しくなったりとかして。私も凄く大好きなんです!」とリスペクトしきり。そんな二人の起用に京極氏は「怪獣映画で言ったらゴジラ対ガメラみたいなもの。これは大丈夫だろうと思った。そしてひたすら楽しませていただきました」と太鼓判を押していた。
劇中で亜佐美が「今、すっごく幸せ」と言い放つセリフにちなんで、“今、すっごく幸せ”と感じる瞬間や出来事を発表。「極めて起伏のない人生を送っている」と自称する京極は「幸せだなと感じる時間はないか、あるいは生きていれば大体幸せという低めの安定がいい。平々凡々なもんですから」と意外な心境。金井監督は「サウナの後に水風呂に入った時は幸せ!」と笑わせた。甘党という伊東は「甘い飲み物を飲んでいる時が一番幸せ!」とニッコリ。奈緒は「眠りにつく時と起きたときが幸せ。ある時『人は小さく寝る時に死んでいる』という言葉を聞いて以降、上手くいかない事があっても、起きたら昨日の自分はいないと思うようになって、毎日そこでちょっとリセットされるところがあります」と持論を述べて「なので寝かせて欲しいです」と満面の笑みだった。
最後に京極は「原作付きの映画は手間とお金をかけて力を入れた評論だと思います。原作通りである必要はないけれども、作り手たちが僕の小説を具体化してくれた作品であり、作品としては全く別だけれども同じ。原作小説を買ってくれとは言いませんので、立ち読みでもなんでも結構です。映画と同じような風景が見えるかどうか、確認していただけたら」とアピール。金井監督は「劇場でしか味わえないことがたくさんあると思います。気に入っていただけたら何度も観ていただいた上で、感想を広めてください」と期待した。
伊東も「幸せの答えはなかなか出ませんが、映子との間に生まれた空気はまさに幸せそのものだったと私は思いました。それをこの映画にたくさん詰まって残せたことが嬉しかったです。どんな形であれ、この映画が皆さんの心の中に残れば嬉しいです」と実感。主演の奈緒は「撮影中は、どうして映子は生きているときに亜佐美の名前を呼べなかったのだろうかともどかしく思う日々でした。でも私は『生きてその名前を呼び続けることはできるか』と最後に思うことができました。だから皆さん、どうか生きていてください。それがこの作品に携わった者としての祈りです」と熱弁しながら「最後に。私は最近、脳科学にハマっていまして、脳科学上、本は誰かに借りたりするよりも自分で買った方が内容は残るそうです。なので原作が気になった場合は、購入した方が色々と分かると思いますよ」と京極に代わって気の利いた見事なPR。主演の粋なコメントに京極も「おお、いい事を言うね!」と大喜びだった。
映画『死ねばいいのに』テアトル新宿ほか全国公開中
配給:S・D・P ©️京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会

