
映画『平行と垂直』の公開記念舞台挨拶が、8月29日(土) に東京・新宿バルト9にて行われ、安田章大、のん、そして小林聖太郎監督が登壇した。
本作は、⾃閉スペクトラム症の兄の⼤貴(安田章大)と、兄を幼い頃から⽀えてきた妹の希(のん)の兄妹が、希の結婚話をきっかけに、お互いのこれからとこれまでに向き合うことになる、心あたたまるヒューマンドラマ。

企画段階から本作に携わってきた安田は「やっと届けられるというホッとした気持ちです。まずは0から1を一緒につくってくれた(原案・脚本の)山野海さんに感謝です。そして、一緒につくり上げてくれた監督、各部署のスタッフの皆様、俳優部ののんちゃん、周りを囲んでくださったたくさんの皆様に感謝しております」と感謝の思いを告げた。そして、「この映画をいつまでも息遣いのする映画にしてくださるのは皆様です。この日を迎えられて、本当に“幸せ”章大だなと思います」と嬉しそうに語った。
安田は、大貴という役に向き合ったことで「人それぞれの普通というものがある、人それぞれのペースがあるということを再確認しました。そして、人としてそれぞれの個性、それぞれの光り方があることを改めて強く思いました」と語り、世間で語られがちな“普通”という概念に関しても「人それぞれの普通がちゃんとあるんで、それを『あ、そうなんですね』と空返事の相槌ではなく、ちゃんと相手に興味を持った相槌の打ち方ができるようになったらいいなと思います。そうしたら日本が変わりますし、日本が変わればアジアも変わります。夢物語に聞こえるけど、誰かが変わらないと世界は変わらないと思います。この映画をきっかけにひとつひとつ変わっていけばと思います」と自身の思いを訴えた。

のんも、希という役に向き合ったことで自身に変化があったと深くうなずき、「家族のことをやっぱり考えました。自分は家族に支えられているのが当たり前になっていたと思います。自分の活動を応援してもらったり、実家に帰ればご飯をつくってくれるたりみたいなことが、いままでの自分は“亭主関白”だったなと思います(苦笑)。前よりも素直に『ありがとう』、『おいしい』と口に出して言うようになりました。最近は、家族の好きなものをリサーチしたり、知っているようで知らなかった部分をもっと知ろうという気持ちが芽生えてきました」と自らの変化を明かした。
安田は、のんとの共演について演技を超えた信頼によって結ばれていたと述懐。のんも「安田さんと演技したあの時間は、尊いものとして自分の中に残っています。安田さん演じる大貴の表情を見ると希としての感情が溢れてくるような感覚で、もう1回同じことを繰り返したいくらい幸せでした」と振り返った。そして、小林監督も、二人のやりとりに関してガチガチにプランを固めるのではなく、信じて任せていたことを明かし「一番目の観客としてカメラの横で見るような気分でいました」と楽しそうにふり返った。

トークでは、大貴の几帳面でこだわりの強い性格にちなんで、「他人にはなかなか理解されないかもしれない自身のこだわり」について質問。安田は「家では全裸生活です。お料理する時は、ちゃんと(下半身に)前掛けだけは着けます。『上半身は大丈夫か?』と聞かれたら『鍛えてる』と言うんですけど…」となかなか周囲に理解されない(?)こだわりを口にした。のんは「5か月くらい前まではカーテンを開けずに過ごしていました。ひとりきりの空間が落ち着くんです」と独特の習慣を説明。「以前は“モグラ”と呼ばれていました」と告白した。
続いて、撮影を通じて、お互いに「ここはかなわない! と思ったポイント」を尋ねると、安田は「いきなり“モグラ”発言みたいにとかするところがあるんですよ(笑)。突発的にキラーワードが出てくる、面白さですね。そういうところはかわないです」と評した。
一方、のんは「安田さんは本当に現場でも全員とコミュニケーションをとって、士気を上げてくださる。そういうところは本当に自分に足りないところだなって思って日々、尊敬の眼差しで見ていました。物事の辛辣な部分も美しい部分も、どちらも受け止めて、フラットに考えて言葉にされる、それは誰にもできることじゃないと思います」とリスペクトを込めて語った。
小林監督は、のんについて「山猫感がある! 瞬発力があって、ちょっとブラックで、でも笑えるんです。見ていて楽しいです」とコメント。また、安田については「本当に会ったことのない(タイプの)ひと。一歩間違えると危ない人(笑)。全財産を出して『わかりました!契約します!』ってなるかも(笑)。僕は人との距離が難しいんですけど、(安田は)いつのまにか、このへん(すぐ近く)にいるんです。それがイヤじゃないんです」と安田の“人たらし”ぶりを明かした。
舞台挨拶の最後に小林監督は「役に立つか、立たないか? みたいなことで、世の中の人間の存在価値として測られている気がして、本をもらった時、そこに自分の問題意識がフィットしたので、恐ろしいけどやってみたいと思いました。『ただ、いるだけ』というのが許される世の中になれば、もっと豊かになると思っています。(映画を)見た結果、なるほどと思っていただけたら、周りの方に面白かったと言ってもらえると嬉しいです」と呼びかけ、のんは「大貴と希の物語が自分の中にあることで、皆さんのこれからが豊かになっていったらいいなと思っています。ぜひじっくりご覧ください」と語った。
そして、安田は「それぞれが思っている普通は、人によっては違うかもしれないので、否定せずちゃんとそれぞれの普通を受け止めてあげてほしいと思います。何より『一人ぼっちじゃない』ってことだけは理解してほしいです。少なくとも味方がいますということを肝に銘じてください。そして、それぞれ違っていていいってこともよく心に留めてほしいです。この映画を通じてひとつひとつ、変えていければと思っています」と映画に込めた思いを語り、会場は温かい拍手に包まれた。
映画『平行と垂直』全国公開中!
配給:東映ビデオ ©2026「平行と垂直」製作委員会

