取材:記事・写真/RanRanEntertainment
――先ほど、本作の意義の一つに「映像の中に建物を残す」ことがあるとおっしゃっていました。今回、広島の街で全編を撮影されたわけですが、その土地の持つ力は感じましたか?
感じました。今回は、僕自身も広島に滞在して、スタッフのほとんどの人が広島の方という環境だったので、知らず知らずに僕自身も感化されていたと思います。海外に住んでいる人がインターナショナルな雰囲気を持っているのと同じで、人間は耳から入ってくるもの、目から入ってくるものから吸収するものがあるんですよね。だから、作品を作る時には、舞台となる場所に長く滞在することでその空気感を出すことができると僕は思います。
僕が若い頃には、物語の舞台となる土地に撮影の1カ月前から入って、その土地の人間になっていろと言われていました。その土地の持つ空気感を作るためにも、滞在して、その地にある何かを感じ取って、吸収して作っていたんです。そういう余裕のあった時代だったんです。今はそこまでのことができる時代ではありませんが、それでもやっぱり、街の持つ力というのは感じます。広島の街にはエネルギーがあります。それは今回、必要とするエネルギーだったと思います。
――ストリップ、またはストリップ劇場に対してはどのような印象をお持ちですか?
僕、この作品に出演する前は、見たことがなかったんですよ。やっぱり、隠微な感じがして、なんとなく行くことをためらう場所というイメージがありました。独特の入りづらさがあると思っていたんですが、この作品の企画を聞いて、初めて行ってみて、それは僕の勝手な思い込みだったと感じました。これはアートだと思いましたし、恥ずかしいものではないんだ、と。
――劇中のストリップシーンも、隠微さよりも美しさや芸術性を感じました。
それは、海外のカメラマンが撮影をしているということもあると思います。多くの日本人が(ストリップのイメージとして)持っている「隠微」な目線でストリップを見ると、そういう作品になってしまうんじゃないかという思いがあって、違った視点から撮影できる方にお願いしたいと、海外のカメラマンにお願いすることを監督に提案したんです。監督自身、この作品をロマンチックなラブストーリーと捉えていたので、だったら、なおさら日本人とは違った視点でストリップを見ている方が撮影した方がいいと思ったんですよ。Ivanとはこれまでも一緒に仕事をしたことがあって、気心が知れていましたし、そのIvanがJeremyを連れてきてくれたんです。Jeremyの作品を観て、彼の感性の素晴らしさはわかっていましたので、今回の作品には合うと確信していました。
――同時に、(サラ/メロディー役の)岡村いずみさんの存在感や(ようこ役の)矢沢ようこさんの魅力的な踊りも相まって?
もちろんそうです。彼女たちの踊りあってこそです。彼女たちの持っている美しさが出ている作品になっていると思うので、女性の方にもぜひ観ていただきたいですね。
――広島ではすでに先行上映されましたが、観客からのお声は何か加藤さんに届いていますか?
はい、皆さんから良かったと言ってもらっています。「風貌は似ていないけど、館長だった」って言ってもらうことも多くて、嬉しい限りです。ストリッパーの方々からは、思い入れがある劇場が出てきて、始まってすぐに涙が出てきたと聞いています。そういう方にとっては、キスマークで埋まった壁などの思い入れがある場所も多く登場していたので、ノスタルジックな思いを抱えてあげることができる作品になったと、目的の一つが叶ったことは実感できました。今後、劇場が本当になくなってしまったら、さらに心に残るものになると思うので、これからボディーブローのように効いてくる作品になるんだと思います。なくなって初めて「ああ、あったな」って。それを映画の中に残せたことは、本当に良かったと思います。
――では、改めて、見どころと読者へのメッセージをお願いします。
この作品は、ラブストーリーです。「ストリップ」という言葉を聞くと、どうしても「裸が出てくる」「風俗」「女性が観るものじゃない」「エロチック」といった先入観があると思いますが、これはストリップ劇場を舞台にしたラブストーリーなんです。
映倫の指定も「PG12」なんですよ。裸が出てくる映画にもかかわらず、「PG15」ではなく「R12」ということが、この作品をラブストーリーだととらえてくれた証拠だと思います。なので、ぜひ女性の方にも観ていただきたい。これも一つの日本の文化。素敵な映画になっていると思います。今、なかなか「劇場にきてください!」と言える社会情勢ではありませんが、ぜひこういう映画があることを知っておいていただければ嬉しいです。
前編~https://ranran-entame.com/wp-ranranentame/movie/70001.html
映画『彼女は夢で踊る』
監督・脚本・編集:時川英之
企画:横山雄二
プロデューサー:時川英之、田辺裕美子
出演:加藤雅也、犬飼貴丈、岡村いずみ、横山雄二、矢沢ようこ ほか
挿入歌:「Creep」作詞・作曲 Radiohead/「恋」作詞・作曲 松山千春
配給:アークエンタテインメント
(c)2019 映画「彼女は夢で踊る」製作委員会/95 分/PG-12/
公式サイト: dancingdreams.jp <http://dancingdreams.jp>
公開直前舞台挨拶 10/20(火) 浅草ロック座
10月23日(金)より新宿武蔵野館にて公開 全国順次公開