取材:記事・写真/RanRanEntertainment
高校の帰宅部仲間6人が友人の結婚で余興を披露するために5年ぶりに集まる。その結婚式と二次会の“狭間”の時間に起こる奇跡を描いた映画『くれなずめ』が4月29日(木・祝)より全国公開される。監督は劇団ゴジゲン主宰、ドラマ・映画『バイプレイヤーズ』シリーズなどで知られる松居大悟。帰宅部仲間6人を演じるのは成田凌(吉尾)、高良健吾(欽一)、若葉竜也(明石)、浜野謙太(ソース)、藤原季節(大成)、目次立樹(ネジ)。松居大悟監督と目次立樹に舞台『くれなずめ』誕生から映画化までの軌跡と、現場の裏話を聞いた。
目次立樹 松居大悟監督
――松居監督と目次さんは、学生時代の演劇サークルから一緒に活動を続けてきていて、こうしてお二人でインタビューを受けることも多いのでしょうか?
松居:うーん。
目次:(笑)そうでもないです。
松居:そうでもないですね。
――でも、長く活動を一緒にされていますね。
松居:そうですね。付き合いだけは長いです(笑)。
――この映画は、松居監督と目次さんが旗揚げされた劇団ゴジゲンの2017年の同名舞台作品の映画化ということで、この物語を書かれた時の思いをお聞かせください。
松居:『くれなずめ』が初めて(ゴジゲンの)劇団員だけでやる公演だったんです。それでちょっと込み入った話にしたいな、劇団員だけでしかできないお芝居にしたいなと思ったんです。毎回僕らはテーマを決めていて、その時は「死生観」でした。「生きるとは何だろう」「人を亡くした経験があるか」といった話を、劇団員だから腹割って話そうというところから始まりました。一緒に演劇をやっていたヤツの事が、いなくなってからのほうが、僕の中ですごく生きている。演劇って、ファンタジーをいとも簡単に生々しくできるから、“いなくなったヤツが誰よりも生き生きしている劇にしよう”と、メンバーと話しながら作っていきました。
――今回、映画化に至った経緯は?
松居:僕は全然映画にするつもりはなかったんです。個人的だし、広く伝えようと思って作ってないし。でも舞台を観に来たプロデューサーの和田さんが「映画にしましょう。たくさんの人に見てもらうべきです」と言ってくれて。
――目次さんは映画化のお話をお聞きになっていかがでしたか?そして、舞台に引き続いて、映画への出演のオファーが来た時の感想は?
目次:騙されているんじゃないかと思いました(笑)。ほんとに雲を掴むような話ですからね。『くれなずめ』自体は作品としても好きだったし、自分にとっても大切な作品なので、映画化されることはすごく嬉しかったです。それに同じ役で、こんなに素敵な俳優さんたちの中の一人として出演、「俺が?」って思いました。
――キャストはどのように決められたのですか?
松居:そもそも、すごく内向きな話なので、自分が一緒に仕事をしたことはないけど、やってみたい人や気になる人がいいなと思っていました。作品の中で興味が湧く人、友達になれそうな人とか、そういう方にお願いしました。成田君の吉尾という役は不思議な役で、みんなにとっての吉尾がバラバラの吉尾像なので、成田凌という男はそれを体現できるという気がしたのでオファーしました。
――浜野謙太さんとは前からやりたかったそうですね?
松居:ハマケンは人としてすごく好きで、ドラマ、アニメの声優とか、すごくいろんな時間を共有していて、いつか自分の監督する作品に出て欲しいな、自分の世界に出て欲しいなと思っていたんです。僕が、ほぼ毎作オファーしていたのですが、いつもスケジュール合わなくて、今回はほんとによかったなと思っています。
――舞台では、(松居監督は)欽一役で出演されていましたが、今回その役を高良健吾さんにお願いしたというのは?
松居:いやいや僕は、高良君みたいだとは思ってないですけど(笑)。
それはさておき、役として考えた時に、欽一は周りを見過ぎてため込んじゃっているんだけど、みんなと一緒にもいたいから呼び集めたりしていて、ちょっと優しくて純粋なところが高良君にぴったりだと思ってお願いしました。いつか作品を一緒にしたいと思っていて、この群像の中にいる高良君をすごく見たいと思ってお願いしました。
――その中で、目次さんに舞台に引き続いてオファーされたのはどういった思いだったのでしょうか?
松居:僕がオファーしたわけじゃなくて、映画のプロデューサーの和田さんが「目次さんがいいんじゃないですか?」と言って下さったんです。僕からは言えないですよ、僕から言ったら決まっちゃうので。自分の原作の作品だから自分の劇団員を出したいというのは、有無を言わせなくさせそうなので嫌だったんです。
目次:ほんとうにねぇ、神様みたいな存在ですね。
――目次さん、演じてみていかがでしたか?
目次:6人で一緒にいると、撮影中じゃないときも撮影中の延長の状態でいるので、ほんとに“ここは男子校か”みたいな雰囲気だったので、「スタート」って声かかって作るのではなくて、みんなそのままの感じで撮影していました。
――拝見しているとアドリブなのでは?と思うようなシーンもあったのですが、台本通りなのですか?
松居:わりと台本通りです。
――すごく自然でした。
松居:上手だな。
目次:(笑)上手なんです
松居:構えてないんですよね。うまくやろうとしていないから。たぶんすごくその人の言葉に聞こえると思うんです。
――現場ではどのように声をかけていらっしゃるのですか?
松居:台本通りのニュアンスの時に「ちょっとそれはそのニュアンスじゃない方がいいかも」とかはありました。
――前もって、何かお話はされたのでしょうか?
松居:リハーサルでは、とにかくちゃんとやらないということを話しました。時間もらってみんなで集まったりして、単純に一緒にいてごはん食べたり、話したりする。お互いに信じ合っている、だから6人でいられる、という状態が大切で。この6人の関係さえ成立していたらどうなっても大丈夫だと思っていたので。
――監督から撮影時に言われたことで印象に残っていることはありますか?
目次:長いLINEをもらいました。映画と演劇というのは違うから、とにかく役者というのは一番下だと思ってくれ、だからおまえは謙虚にいろ、ということを言われました。
松居:役作りというよりも現場の居方みたいなものだったと思います(笑)。
目次:謙虚でいなきゃいけないと現場でいました。
松居:何かそこに大事なことがあるような気がしていて。
――さきほど「死生観」とおっしゃっていましたが、今回、映画を観た方にはどんなことを受け取ってもらいたいと思っていますか?
松居:メッセージはなくて。強いて言うなら、見ながら友達に会いたくなって欲しいなって思います。
――ウルフルズの歌『それが答えだ!』が映画の中でキーとなっていて、さらに今回トータス松本さんに主題歌を書いていただいていますが、歌をお聴きになってどうでしたか?
松居:ほんとに、映画を作ってきて良かったなって思いました。それこそウルフルズの『それが答えだ』は踊るけど、最後にウルフルズの最新曲が流れたら、過去に振り返っているような話だから、何か未来に向かえる気がしてすごくいいなと思っていたんです。トータス松本さんは、お忙しいとは思うけれど、まぁダメ元でいってみようと思ってお願いしましたら快く引き受けてくださって。送られてきた添付ファイルに『ゾウはネズミ色』というタイトルがついていて嬉しかったですね。「曖昧なものの曖昧なままでいろ」というテーマで『ゾウはネズミ色』というタイトルをつけて下さったことが、すごく嬉しかったですね。
――トータスさんにお手紙を書かれたそうですが、どのような手紙を書かれたのですか?
松居:ラブレターです。
目次:(笑)
――『それが答えだ!』を選ばれたのは?
松居:あれは、ゴジゲンの劇の時も同じ曲だったのですが、あの時もとにかく、高校の友達たちと余興をやるという設定で、いろんな踊りを試していたんです。
目次:そうなんですよ。スガシカオ、KARA、
松居:4,5曲試してウルフルズが一番ぴったりきた。
目次:東迎(昂史郎)君っていう沖縄の石垣島出身の人が、中学生の時に先生の結婚式の余興で踊った曲なんですよ。「これいいですよ」と言って持ってきたんです。PVにけっこう振りがあって、パパイヤ鈴木さんなのですけど。みんながもってきた中で一番この曲がぴったりきて「これちょっともう一回踊らない?」という感じになり、決まりました。
松尾:それこそ、この作品のモデルになった奴もウルフルズがめっちゃ好きだったので、そこもシンクロしたんです。
後編~https://ranran-entame.com/wp-ranranentame/movie/75212.html
映画『くれなずめ』
2021年4月29日(木・祝)テアトル新宿ほか全国公開
監督・脚本:松居大悟
出演:成田 凌 高良健 吾若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹
飯豊まりえ 内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身)
城田 優 前田敦子 滝藤賢一 近藤芳正 岩松 了
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」 (Getting Better / Victor Entertainment)
製作幹事・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
配給・宣伝:東京テアトル
製作:「くれなずめ」製作委員会
公式サイト:kurenazume.com
公式Twitter:@kurenazume
公式インスタグラム:@kurenazume
©2020「くれなずめ」製作委員会
【ストーリー】
優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した! 満を辞して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。恥ずかしい。でも新郎新婦のために一世一代のダンスを踊ってみせよう!! そして迎えた披露宴。…終わった…だだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。 「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」 そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。