取材:記事・写真/RanRanEntertainment
――『くれなずめ』というこのタイトル、すごく印象的ですが、これはどういう思いでつけられたのでしょうか?
松居:演劇の劇団公演って内容が全く決まっていない中で、まずタイトルだけをつけるのですよ。『くれなずめ』というのは台本がまだない時に、生と死の狭間のような話、昼と夜の狭間、とか、狭間の話がいいなぁと思ったんです。
それで、披露宴と二次会の間の話にしようと思い、僕が高校時代にした赤いふんどし姿でハンドベルを演奏するという余興を思い出して、その時の選曲が『贈る言葉』だったんです。それで『贈る言葉』の「暮れなずむ」という歌詞の意味を調べたら、“沈みそうで沈まない状態”と書かれていて、それが吉尾たちにすごくぴったりきて、それを命令形にして「沈みそうで、沈まない状態であり続けろ」「曖昧なままでいろ」にしようと思ったのです。
目次立樹 松居大悟監督
――タイトル文字も、劇団の時と同じものを使っていらっしゃいますね?
松居:そうです。これはうちの(本折)最強さとしという男が書きました。
――あえて映画でも同じタイトル文字を使われたのですか?
松居:これは宣伝チームの愛情じゃないでしょうか。
――すごく繋がっている感じがしましたが?
松居:だから僕は嬉しかったですね。愛情をすごく感じました。みんなを動かしてくれる強い作品ですね。
――台詞にはいろいろ深い意味を込めて書かれているように感じました。例えばミキエ(前田敦子)の台詞などでそう感じましたが、実際にはどうなのでしょうか?
松居:基本的に「台本はあってないようなものだ」とみんなに言っていて、「ただの設計図だ」と言っています。台本とか台詞ってよくわからなくて、役者が言葉にした瞬間に命が吹き込まれるんですよね。ミキエの怒るセリフは、舞台の時には男が女装してやっていたので、笑いのシーンだったんです。でも前田さんがやることによって、“死んでることに胡坐をかくな”ってニュアンスが伝わって、豊かなシーンになったなと思っています。
――ミキエ役を前田敦子さんにオファーした経緯は?
松居:言い方が難しいのですが、前田さんってめちゃくちゃ美人の時もあればそうでない時もあるような気がしていて、そういうところが映画女優だと思ってるんです。自由自在に操れたりする感じとかプラス男6人をやっつけなくてはいけないし、男6人をビビさせられる存在は前田さんしかいないと思ったんです。すごく良かったです。
目次:すごく強かったです。
――目次さんからご覧になって、監督はいかがでしたか?舞台の時との違いは感じられましたか?
目次:劇団公演のゴジゲンでやる時は、僕ら6人組でやるのですが、みんなポジションは同じで、演出家だから偉いとか脚本家だから偉いとか関係なくフラットな状態なんですが、映画だといろいろ話は違ってきて、チームをまとめないといけないので全く別人でした。
松居:偉そう?
目次:そうです。偉そうなんです(笑)。僕は気軽に声もかけられませんでした。
――6人というお話が出ましたが、劇団も6人で、今回も6人で、『バイプレイヤーズ』シーズン1も6人。これは偶然なのですか?
松居:偶然です。これは劇がそのまま映画になったんで6人なんですけど。6人を描き分けるのは、日本で一番うまいと自負してます(笑)。
――6という数字へのこだわりがあるのかと思いましたがそういうわけではないのですね。
松居:そういうわけではないです。群像劇が多くて前も『私たちのハァハァ』という映画は4人だし、『♯ハンド全力』という映画は7人だし、基本的に3~6ぐらいが多いですね。たった一人の主役のための装置にしたくないと思っていたらそうなりがちで。
――目次さんの役作りはどのようなスタイルなのでしょうか?
目次:改めてこういう話は役者同士ではしないですね。僕の場合は、やっぱり頭の中でリアルに再現して、その時の感情を味わったりするんですが、それってもしかして余計なことなのかもしれないですが、逆に作り過ぎてしまって現場で何もできなくなっちゃうのがオチのような気もするんです。現場に入ったら臨機応変に対応できるようにします。
――すごく自然でしたが…。
目次:今回も何か変にやろうとし過ぎちゃって、逆に成田凌さんから「目次さん、かっこつけ過ぎです」とか言われたりしました(笑)。
松居:どのシーンに対してだったの?
目次:最初の、結婚式の初めのワンカットのシーンでね。
松居:下見の時?
目次:そうそう。「何かやろうとし過ぎです」って。「あ、すみませんでした」って(笑)。
――成田さんってそういう風に突っ込む方なんですね。
目次:成田さんはすごいですよ。
松居:目次君にだけ厳しい。
目次:(笑)「若葉竜也すごいわー」とか「藤原季節面白いわ」とか成田凌さん言うんですけど、僕に対しては厳しいです。あ、僕とハマケンさんかな?
松居:(笑)
目次:年上二人に厳しい(笑)。
――皆さんとは前からお知り合いだったのですか?
目次:そうですね。ハマケンさんはゴジゲンの舞台を観に来てくださるので、ちょっとお話させていただくことはあったのですが、もうほとんど初めてです。
――初めて会ったという雰囲気ではなくて、昔からのお仲間のような感じでしたけど。
目次:この中に交じれるのかとうプレッシャーがありましたけど。嬉しいですねぇ。
松居:目次の演技力がものを言った
目次:言わせた、言わせた(笑)。
――最後に映画を観にいらっしゃる皆さまに向けてメッセージをお願いします。
松居:友達みたいな映画なので、友達に会いに来るような気分で、そんなに下調べしなくても大丈夫なので、気軽に観にいらしていただけたらいいなと思います。
目次:びっくりするぐらい寄り添ってくれる、近くにいる映画だと思います。観に来ていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました。
前編~https://ranran-entame.com/wp-ranranentame/movie/75207.html
映画『くれなずめ』
2021年4月29日(木・祝)テアトル新宿ほか全国公開
監督・脚本:松居大悟
出演:成田 凌 高良健 吾若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹
飯豊まりえ 内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身)
城田 優 前田敦子 滝藤賢一 近藤芳正 岩松 了
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」 (Getting Better / Victor Entertainment)
製作幹事・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
配給・宣伝:東京テアトル
製作:「くれなずめ」製作委員会
公式サイト:kurenazume.com
公式Twitter:@kurenazume
公式インスタグラム:@kurenazume
©2020「くれなずめ」製作委員会
【ストーリー】
優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した! 満を辞して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。恥ずかしい。でも新郎新婦のために一世一代のダンスを踊ってみせよう!! そして迎えた披露宴。…終わった…だだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。 「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」 そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。