トップ > PICK UP > 『沖縄狂想曲』太田隆文監督インタビュー 大手マスコミが報道できない沖縄・基地問題を映し出す!

2024年1月29日 18:00

『沖縄狂想曲』太田隆文監督インタビュー 大手マスコミが報道できない沖縄・基地問題を映し出す!

沖縄では、現在も数々の問題が起こっている。辺野古基地問題、国際大学ヘリコプター墜落事故、オスプレイ騒音、墜落問題など、多くの日本人は、それらの問題の現実を知らない。そんな沖縄問題を、『朝日のあたる家』などで知られる太田隆文監督が徹底取材。大手マスコミが伝えない現実に太田監督が切り込んだドキュメンタリー映画『沖縄狂想曲』が、2月3日から東京・K’sシネマほかで全国順次公開される。太田監督に今作の制作に至った経緯や沖縄への想いなどを聞いた。

―監督はこれまでにも『ドキュメンタリー沖縄戦』『乙女たちの沖縄戦』と沖縄戦についてのドキュメンタリーを製作されています。そもそも沖縄の問題はどんなきっかけから取材をスタートされたのですか?

沖縄の問題はまま聞く話だと思います。オスプレイが墜落したとか、基地の問題があるとか。僕もその程度の、本当に一般レベルの知識しかなかったんですよ。もちろん、多少の興味はありましたが、仕事でないとなかなか調べる機会もない。それから、これは後で分かったことですが、沖縄では日々、たくさんの問題が起こっていますが、それらは僕たちには伝わってこないんですよね。そんな時に、「沖縄のドキュメンタリーを撮ってくれませんか」という依頼をいただいたんです。僕は、これまで青春映画を撮っていて、ドキュメンタリーの監督ではないので、「興味はあるけれど、全く知らない僕でいいんですか?」と驚きました。ただ、原発事故を題材とした『朝日のあたる家』という映画を観てくださっていたようで、沖縄戦について調べて作ってくれる人を探していたというので、それならばぜひとお引き受けしました。それが3本続いているということです。

―今作は、そうした前2作のその後となる戦後から現在に至るまでの問題を描いていますが、こうした問題に焦点を当てたのはどういった思いからだったのですか?

沖縄戦に関してはかなり徹底して調べて、作り上げることができたと思います。もちろん、言い出したらキリがないので、まだまだ切り込めていないところもありますが、沖縄戦が始まってから終わるまでを描いた前々作の『ドキュメンタリー沖縄戦』を作り上げた時、今度はその後、どうなったんだろうと考えたのです。本来ならば、戦争が終わって平和がやってきたと思うのに、沖縄にはいまだに基地がある。何で基地があって、いまだに沖縄の人たちが大変な思いをしているのかという疑問が生まれ、そうだ、続きを撮ってみようと。つまり、沖縄の戦後編を作ろうというのが今作になります。

今作を撮影する中で、監督ご自身も驚くような事実は多数ありましたか?

知らないことだらけでした。僕は沖縄に米軍基地があるということくらいしか知らない状況でしたので。自分の不勉強ももちろんありますが、いかにテレビや新聞が沖縄事情を伝えてないかを知りました。映画の中にも登場していますが、元々東京に住んでいて、沖縄に引っ越してきて仕事をされている方が、東京にいた時は、報道しない、新聞・テレビでも聞かないような米軍の事故や事件が毎日のようにニュースになっていることにとても驚いたそうです。僕も沖縄に行くたびに新聞を買ったり、テレビを見ていますが、本当に毎日のように米軍関係の問題が出てくるんですよ。それにまず驚きました。

元大手新聞の論説委員を始め、沖縄の著名大学教諭、元市長、元県庁の幹部ら多くの方に取材をしています。太田監督が特に印象に残っているのはどんな問題についての話でしたか?

来年で戦後80年。今も沖縄に米軍基地が多数、存在するという現実に、強い疑問を感じてました。「中国の脅威」とか言いますが、中国はすでにアメリカまで届くミサイルを持っています。沖縄を攻める必要はない。なのに米軍はなぜ、沖縄に居座ってるのか? その答えを今回、見つけました。ただ、テレビ、新聞は絶対に伝えないでしょうね。

今回さまざまな視点から沖縄の問題を描いていますが、監督がこの作品を通して一番に伝えたいことは何ですか?

この映画の最終的なテーマ、結論は、多くの人が持っている日本のこの先への不安は、沖縄問題にも関係があるということです。多くの人たちが「沖縄の人は気の毒だね」と言いますが、同じ日本なのに完全に他人事ですよね。「沖縄も大変だけれど、日本はみんな大変だ。経済大国日本と言われていたのに、どんどんダメになっていって、かなり下降している。日本はこの先どうなるの?」という不安をみんなが抱えています。実は、これからの日本の希望が沖縄にあると僕は思います。貿易や政治に関してもそうですが、日本の10年、20年、30年先に日本を支えるのは沖縄になるだろうということを映画の最後でも語っています。沖縄の大変さを伝える映画としてスタートしましたが、実は僕たちの希望は沖縄にあるんだということを伝える作品になっています。

監督はこれまでフィクションも数多く撮られていますが、フィクションとドキュメンタリーで違うことはありますか?

スタイルが違うのでもちろん同じではないですが、僕はどちらも「幸せって何だろう」というテーマを持って作っています。それは、お金持ちになることだったり、有名になることだったり、かわいい女の子と結婚することだったり、お金持ちの旦那と結婚することだったりと、色々とあると思いますが、「それは何だろう」と追及するのが僕の映画です。そう考えると、“戦争”はとても分かりやすいですよね。家族みんなが一緒に、戦争に巻き込まれずに生きていくことが幸せなんだということを感じることができますから。今回の『沖縄狂想曲』にしても、戦争ではないけれども米軍基地を巡っていまだに様々な大変な問題がある。そこに「幸せって何だろう」という疑問が出てくるという意味で、何をやっても同じテーマを追っているということです。

沖縄戦や戦後の沖縄を舞台にしたフィクションを作ることはお考えにならなかったんですか?

もちろんやりたいですよ。ただ、戦争ものは、膨大な製作費がかかる。それに、例えばどこか大きな会社から「沖縄戦を映画にしてほしい」と依頼されることがあったとしたら、沖縄戦について、沖縄について調べる必要がありますよね。今、その調べている段階をドキュメンタリーとして映画にしたという思いもあります。ある意味では、沖縄戦映画を作る前段階にもなるのかなと思います。

ありがとうございました! 最後に、改めて読者に向けてメッセージをお願いします。

ドキュメンタリーというと退屈な説教くさい作品と思われがちですが、僕はもともとエンターテインメントの監督なので、ドキュメンタリーといえども退屈せずに見れて、ハラハラドキドキしながら、どうなるんだろうと先に興味を向けられるものになっていると思います。ある意味では、探偵もののミステリーのように、「一体何でこんな事件が起きるのだろうか?」と追及する面白さもあると思います。難しいドキュメンタリーを観る感覚ではなく、「すごく元気が出た」「希望が持てた」と言っていただけるような作品になっているのではないかと思うので、あまり重く考えずに観ていただけたらと思います。

沖縄と日本の現実に切り込んだドキュメンタリー
『沖縄狂想曲』は、2月3日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開
公式HP https://okinawakyosokyoku.com
©️2024 シンクアンドウィル青空映画舎(日本/G/115分)

取材 文・撮影:嶋田真己

 

 

トップ > PICK UP > 『沖縄狂想曲』太田隆文監督インタビュー 大手マスコミが報道できない沖縄・基地問題を映し出す!

Pick Up(特集)

error: コンテンツのコピーは禁止されています