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2018年2月7日 09:25

早くも伝説の予感 柚希礼音・加藤和樹主演ミュージカル『マタ・ハリ』

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

この世界が初めて体験した大きな大戦。死と隣り合わせの日々の生活。大量殺戮兵器が兵士の命を紙一枚ほどの軽さにしてしまった。そんな第一次世界大戦の時代に咲いた徒花、女スパイの代名詞ともなった実在の人物を柚希礼音が演じるとあって、大きな期待を寄せられていたミュージカル『マタ・ハリ』の舞台稽古が東京公演初日を控えた2月2日(金)、東京国際フォーラムホールCで行われ、集まったマスコミに公開された。

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なんという迫力のミュージカルだろう。主演マタ・ハリを演じる柚希、その恋人アルマンを演じる加藤和樹、マタ・ハリを脅し、操る情報将校ラドゥー大佐を演じるLE VELVETSのテノール歌手・佐藤隆紀の生のオーケストラの音に負けないメインキャストの豊かな声の競演はもちろん、脇を固めるキャストたちのハーモニー&ユニゾンが押し寄せるように胸に迫ってくる。世界的作曲家であるフランク・ワイルドホーンの楽曲自体が奥底を揺らすように心に響いてくるのだが、ソロのパートを含めて情感豊かな歌唱がそれぞれの楽曲を生き物のように物語の中を自由自在に駆け巡り、観るものの感情を揺さぶるのだ。

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なんといっても主演の柚希にマタ・ハリそのものの影を見るのが印象的だ。戦時中の暗い世相を表すかのようにモノクロームをまとった人々の中、オリエンタルなジャワ風の真っ赤な衣装の柚希が躍りながら登場する。その圧倒的な存在感にハッとさせられ、魅了されたと思った途端に陽炎のようにあっという間に舞台から消えてしまう。まるでそれが色鮮やかな夢であったかのように、観客はその時点から不思議なマタ・ハリの魅力の虜となってしまう。オープニングのこの演出は、関わった人々をその魅力に取り込んでいったであろうマタ・ハリ人生そのものを暗示しているかのようだ。

初演された韓国版にはない、日本版での見どころの一つとなっている主演・柚希のダンスだが、1幕では登場シーンのように短い踊りのみが散りばめられている。じりじりと焦らされた観客は、ようやく2幕のオープニングで、かの有名なマタ・ハリの「寺院の踊り」をたっぷりと堪能することができる。すらりとしたスタイル、長い手足がオリエンタルでエキゾチックな魅力を醸し出す。当時のヨーロッパを席捲し、多くの男たちが手に入れたいと願い、手に入れられないとなると憎悪にも似た欲望に突き動かされたというマタ・ハリ。そんな魔力を持つ宝石のような魅力的な女性を演じられる女優はこの日本の中でも数少ないと思われる。

また、戦時下を生き抜いたダンサー「マタ・ハリ」の気性の激しさや怒り・不安が混じった最初のソロの見事な歌いっぷりから、アルマンとの甘い歌声、初めて愛を知った切なさ、喜び、怒り、悲しみ、不安など宝塚退団後に一層磨きをかけた声域と声量、そして表現力も見事だ。

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舞台稽古では、マタ・ハリの恋人役であるアルマンを演じた加藤。マタ・ハリとの甘い時間の高揚感、使命感と愛に引き裂かれていく男の苦しみを、命を削るような熱唱で観客をアルマンの気持ちへとぐっと近づけてくる。テノール歌手・佐藤隆紀のあの声量と伸びやかな歌声に全く引けをとらない加藤の声が、柚希・加藤・佐藤の3人のアンサンブルを美しい調和と共に凄烈な声の砲撃となって観客席に投下される。この純粋な愛を演じた翌日に日替わりでラドゥー大佐も演じるという加藤。マタ・ハリへの歪んだ愛を持つラドゥーもどのように演じるのか見てみたいと思わせる。

兵士の命が散っていく中、情報将校としてその責任とマタ・ハリへの愛との葛藤の末、歪んだ愛憎を心に増幅していくラドゥーを演じる佐藤。観客の憎しみを一身に受けつつ、なお悲哀を感じさせるという難しい役どころを見事に演じている。自在に操れる声を使って複雑な想いを歌に乗せるのはお手のものだろうが、その演技力も素晴らしかった。

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実在の人物でありながら、死してなお、謎多き存在であるマタ・ハリ。その真実がどうであったのか、この舞台は説得力のある答えの一つを提示してくれる。それは稀有な才能を持つ人々が結集してこの舞台を作っているからに他ならない。

マタ・ハリと言えば柚希―圧倒的な存在感と輝きで、そんな印象を残した今舞台。柚希の次にマタ・ハリを演じる女優に相当なプレッシャーと高い壁を残したのではないだろうか。この舞台が伝説に変わる前に是非劇場で観劇することをお勧めしたい。

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ミュージカル『マタ・ハリ』は23()18()まで東京国際フォーラムで上演

公式HP http://www.umegei.com/matahari/

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