取材:記事・写真/RanRanEntertainment
『リング』『呪怨』に続く、ジャパニーズ・ホラーの伝統を継承した、新たな呪いの物語『シライサン』が1月10日(金)より公開される。監督を務めるのは、『ZOO』『銃とチョコレート』などで知られる気鋭のミステリー作家 “乙一”こと安達寛高。安達監督自身による完全オリジナルストーリーである本作で、長編監督デビューを果たす。誰もが仲間としたことがある、ありがちな怪談話だったはずなのに、その話を聞いた人たちが次々と変死を遂げていく…という恐怖の物語を完成させた安達監督に本作の誕生秘話、そして見どころを聞いた。
――ジャパニーズ・ホラーの伝統的な要素を含みながらも、新鮮さを感じました。特に、音楽が少ないことが印象的な作品でしたが…。
実は、僕は音楽の少なさを今、反省しているところなんです(笑)。この作品の前にも、ホラー映画を作っているのですが、その時は音楽を付けすぎてしまって、それがその作品の反省点だったので、今回は音楽をつけるかどうか迷った場面は、音楽無しの方向性で作ってしまいました(苦笑)。
――でも、それが新しさになっていて、本作の魅力を際立たせているように感じました! では、本作はどのような発想から生まれた作品なのでしょうか?
はじめは、面白い幽霊のアイデアはないのかな、というところからスタートしました。色々と考えているうちに、「見ていない時に近づいてきて、目を向けたらピタッと止まる」という幽霊は面白いんじゃないか、と。それで、提案させていただきました。
――「見る」という行為がキーワードなんですね。
「見る」とか「見られる」という行為は、映画というものに重要に関わってくるような気がするんですよね。「見る」「見られる」という関係性が、映画の中に入っていると作品が際立つ気がしました。
――劇中では、SNSもキーポイントになっていますが、それも「見る」「見られる」という関係性につながっているんですか?
つながっています。SNSの「いいね!」は、「見ていますよ」という言葉と同等ととらえて、映画に使用させてもらいました。
――なるほど。安達監督は、乙一名義で小説家としてもご活躍されていらっしゃいますが、映画を企画する時と小説を書く時では、それぞれ発想のスタートが違うものですか?
大きなところでは同じですが、このアイデアは小説向きだなとか、これは映画向きだなというのはあります。自分の中で、これは絵で見てみたい、これは小説で読んでみたいと感じるので、それに合わせて振り分けます。
――監督の小説は、どの作品も映像化に向いている印象がありますが。
例えば、物語の中で心の機微がポイントになる作品は、小説に振り分けています。それから、やっぱり予算的にお金がかかりそうなものは小説にしますね(笑)。宇宙が舞台だったり、映像にするのが難しい作品というものもありますので。
――ところで、本作では、「シライサン」という印象的なキャラクターが物語の核となっています。シライサンのビジュアルはどのようにして出来上がったんですか?
まず、どこまで顔をさらすべきなんだろうということをスタッフと議論しました。最初は髪で顔を見せない方が日本的な、不気味さが出るんじゃないかと考えたんですが、本作は「見る」ということがキーワードだったので、逆に目を強調した幽霊にしようと決めました。
――ほかのジャパンーズホラーの作品との差別化も意識されましたか?
それはありました。『リング』に出てくる貞子は完成されすぎているので、どうやっても貞子になっちゃうんですよ(苦笑)。なので、そこから遠ざかろうという思いはありました。
――「目を強調した姿」というと、SNSに上がっている「加工しすぎた女の子」の写真と共通する印象があります。本作ではSNSがキーポイントになっていることもあり、ここでもそれが意識されているのかなと感じました。
幽霊のデザインを作っていく中で、確かに、ネット上にある目を強調しすぎた写真を資料として提出させていただきました。目の大きな人が醸し出す不気味さが出るといいなと思ってました。
――シライサンの、手のひらに打たれた杭に鈴が付いているという点もインパクトがありました。
シライサンが何か音が鳴るものを身につけていて、近づいてくる時にそれが鳴ると恐怖感が増すと思い、鈴を付けたんです。最初は、小指に結びつけていただけだったんですが、もっと派手にした方がインパクトがあるんじゃないかということで、「グサッといってみましょう」と(笑)。
それから、手の位置というものもシライサンというキャラクターを作る上で悩んだ点でした。『リング』の貞子や『呪怨』の伽椰子とは全く違うキャラクターにしようと考えていく中で、「手の位置をどうするか」というのは大きなポイントでした。貞子や伽椰子の手の位置とは違う、それでいて常に見える位置に手があるというシルエットにしようという考えから、手を合掌した形で前に出し、その両手が紐で結ばれているというアイデアが生まれました。
映画『シライサン』
出演:飯豊まりえ、稲葉友、忍成修吾、谷村美月、染谷将太、江野沢愛美
監督・脚本:安達寛高(乙一)
公式サイト shiraisan.jp
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2020年1月10日(金)公開