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2021年4月23日 16:04

稲垣吾郎主演『サンソンールイ16世の首を刎ねた男ー』逃れられない宿命を背負った男の苦悩を「静」の芝居で表現

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

暗闇の中の一筋の光。強烈な明暗法で描かれた重厚な舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』。稲垣吾郎が主演する舞台が4月23日開幕を迎える。その前夜の22日に東京建物BrilliaHALLにて公開ゲネプロが行われた。

 

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人権・自由・平等といった今私たちが当たり前のように享受しているもの。それを求めて多くの血が流された時代があった。歴史が大きく動いた「フランス革命」は様々な芸術のモチーフになっているが、今回は稲垣が演じる国命により死刑を執行するシャルル-アンリ・サンソンという男の視点からこの大きな歴史のうねりを描いているのがとても興味深い。サンソンは代々処刑人を務める家系に生まれ、貴族的な待遇ではあるが、貴族ではなく、また平民でもない。どちらの想いにも寄り添えるポジションで観客はサンソンの目を通してこの時代をみつめていく。つまりサンソンは地球の核のような存在であり、サンソンを中心に時代は動いていく。稲垣は今回の舞台では「動」の芝居より「静」の芝居で、自分の信念とは違うことをしなければならない宿命と苦しみながらも戦う男の孤独や葛藤を表現している。

 

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この舞台では、稲垣演じるサンソンを描き出すために強力なキアロスクーロ(明暗法)を使用して、まるでカルバッジョの絵画のように一条の光から観客を物語の世界へと導いている。稲垣が演じるサンソンの闇の中でもがくような心の葛藤はこの光によって観客にさらされる。また三宅純が演出の自井晃からの依頼により「事象に寄り添うよりもシャルル-アンリ一人称の視点から描き出した」という音楽は、サンソンの鼓動、そして苦しみとそして光を求めるあがきのようにも聞こえてくる。

稲垣演じるサンソンがひとり立ち、その後ろをパリの人々が行き交っていく。時に映像が流れ、サンソンの後ろで時代が、人々が流れていく様を表現する舞台手法も素晴らしい。どの場面を切り取っても一福の絵画のように舞台が隅々まで構成されている。その中にたたずむ稲垣の雑踏の中で感じる孤独感などが表情などで見事に表現されていた。

 

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また、ルイ16世役の中村橋之助は、身に備わった優雅さを武器に憎まれるべき王ではなく敬愛すべき王を、ジャン-ルイ・ルシャール役の牧島輝はサンソンに寄り添うまっすぐな青年を好演している。

サンソンは稲垣が「ぜひ演じてみたいと思っていた人物」であるという。「重い時代の中でも、社会を良くするために職務に忠実に生きた、サンソンという人物を精一杯演じたい」という言葉通り、彼は舞台の中でフランス革命という時代を生き抜き、全うしている。

 

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演出の自井は「ムッシュー・ド・バリと呼ばれたひとりの男がたどった人生は、今の私たちからはおよそ想像できないほど過酷なものだったはずです。しかし、その人生に迫ろうとキャスト、スタッフが懸命にリハーサルを積み重ねるうちに、人が集まり創造するという演劇の持つエネルギーが、私たちをどんどん前へと引っ張ってくれ、初めあった不安は少しずつ消えていきました。そして、今、死神のように恐れられたシャルル-アンリ・サンソンの、心の奥底に流れる優しさに触れることができた気がします」と語っている。

確かにこの舞台は、観ているのが辛くなるほどの痛みを伴った舞台だ。だがその痛みこそが、我々が今生きる世界を創っているのだとこの舞台は教えてくれる。そして、今それを壊そうとする流れが世界に生まれていることに私たちは全力で立ち向かわなければならないと警鐘を鳴らしているのかもしれない。

 

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東京公演は4月23日~5月9日まで(※4月28日~5月9日公演中止)東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて。大阪公演は5月21日~24日まで大阪・オリックス劇場にて、福岡公演は6月11日~13日まで福岡・久留米シティプラザにて上演される。

追加公演が昨日発表され、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場にて6月25日~27日まで行われることが決定された。チケット販売は、5月29日10:00より。

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