取材:記事・写真/RanRanEntertainment
2017年9月23日より、KAAT神奈川芸術劇場にてKAAT×パルコ プロデュース公演『オーランドー』が日本初公演される。
ヴァージニア・ウルフの小説を原作に、アメリカの劇作家サラ・ルールが翻案・脚本した本作『オーランドー』は、16世紀のイングランドに生まれた少年貴族オーランドーが時と性を超越して真実の愛を追求する姿を描いた作品。KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督である白井晃が演出を務め、出演は、あらゆる女性を虜にする美貌の青年貴族・オーランドー役に多部未華子。オーランドーを寵愛するエリザベス女王には小日向文世。ミステリアスなロシアの姫君サーシャ役には小芝風花。さらに、TEAM NACSの戸次重幸や、池田鉄洋、野間口徹らが、年代や性別の異なる複数の人物を演じわけるというのも見どころ。
RanRan Entertainmentでは、本作に出演される個性派俳優の “イケテツ”さんこと池田鉄洋(いけだ・てつひろ)さんにインタビューを実施。ご自身も演出をされる池田さんに、白井晃さんの演出や女装役について、また共演者や作品に懸ける思いをたっぷりと語っていただいた。
<手加減しなくていい舞台に上がれることほど楽しいことはない>
――今回の公演『オーランドー』はどんな内容になると思われますか?
原作のヴァージニア・ウルフという方のお名前は、エドワード・オールビーの戯曲『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』という作品の名前でしか知らなくて、今回初めて作家の方だったという事を知ったんです(笑)。
その方の原作が、まあ、とてもぶっ飛んでいまして。それを下敷きにアメリカの劇作家サラ・ルールが翻案したものを舞台化した作品で、内容もかなりファンタジーなので、「これは戯曲だけ読んでも中々難しいぞ」と思いました。私も演出をするので、もし自分が演出するとしたら、ちゃんとしたルールを決めないといくらでもふざけられるし、いくらでも話は広げられるのですが、しっちゃかめっちゃかになってしまう。何か芯となるものを1つ作っておかないと、役者陣もどこをよりどころにしていいか、わからなくなって収集つかなくなるんじゃないかなと思うんですよね。白井さんはそんな部分をしっかりと決めてくださって、「ここが面白いところなんだよ」という軸を作ってくれるんです。以前、『4 four (2012年)』というお芝居でも、それを示してくださって。舞台を四角いリング上の空間に区切ってくれたんです。リングといっても四隅にポールがあってロープが張っているわけではないのですが、そこに入っていくと「ああ、自分は人々の前にさらされているんだな」と感じられるのです。白井さんは舞台空間からこんな感じでやればいいということを示してくださいました。
白井さんの作品を観るたびに、こういうセットでこういう演出だったら、みんなが自然と落ち着ける場所に落ち着くんだなって。今はそれを待っている状態で、何とも言えないのですが、白井さんはしっかりとそれを示してくださるので、後は私たち役者が好き勝手にやればいいと思うんですが(笑)。白井さんが「オイオイ!こっちだ」と言ってくれるので、私たちは力を出し惜しみせずに全力でふざけたり、泣き叫んだり、笑ったりすればいいんじゃないかと。手加減しなくていい舞台に上がれることほど楽しいことはないと思いますね。
――年代や性別の異なる複数の人物を演じわけるとのことですが。
多部さん、小日向さん、小芝さん以外は配役もまだ決まっていないのですが、決まったところで稽古に入ったら、まったく違うキャラクターを要求されるかもしれない。その瞬発力は必要だと思いますが、それが難しいと思うよりも、今のところはワクワクする感じですね。小日向さんもひとつの役だけではないと思いますし。また、きっと着替える暇もないと思うので、舞台上に落ちていたものを纏ってひとつの役を演じ、纏っていたものを捨てるのかもしれないし…さっぱりわかりません(笑)。同じ衣装でも違いを出さなければならないのは、相当テクニックが必要だと思うし、この歳じゃないと中々難しいんじゃないかな。47歳、頑張って役者を続けてきてよかったなって思います(笑)。
<サプライズを感じながら作っていけたらいい>
――稽古の方はこれからですか?
これからですし、まだ稽古まで日があるので、今は白井さんが「どうしようかな~」と四苦八苦されているんじゃないですかね(笑)。稽古も長くて1ヶ月半ぐらいあって、普通のお芝居よりもちょっと長めなんですよ。みっちりやるんじゃないんですかね、白井さん(笑)。
――稽古前に役作りをされてから稽古に入られると思いますが、今回は稽古しながら役を作っていく感じなのでしょうか?
そうですね、普通は事前に役作りしてから稽古に臨むのですが。或いは、そろそろこの役を覚えてほしいと言われるのか、まだわからない状態なので。主役の多部ちゃんはオーランドー役のセリフを覚えると思うのですが、先入観なく臨んだ方が楽なんじゃないかな。準備してもそれが徒労に終わりそうな気もして……。稽古場で出来上がっていく方が相当楽しいと思うので、許されるのであれば稽古場で、色々なサプライズを感じながら作っていけたらいいなと。その楽しさって、お客様にも伝わると思うんですよ。そうやって作っていったお芝居はまず、ハズレがないので。私の経験ですけどね。楽しく作っていけたらきっとお客様も楽しいと思います!
――池田さんは以前、白井晃さんが演出される舞台にご出演されていらっしゃいますが、白井さんの演出はどんな感じなのでしょうか?
作品によって違うのかも知れませんが、私が関わった時には、まず姿勢が本当に真面目でストイックなんですよ。「僕はあなたのことをちゃんと面白くするんだから!」という決意が見て取れるんです。白井さんも“役者、白井晃”というポジションをお持ちなので、たまに白井さん自ら演じて指導されるのですが、やっぱり上手いんですよね。それを見せられて、「よし!やってやろう!」と思えるぐらいの経験がないと負けちゃう。「白井さん上手いなぁ」と思ってしゅんとなっちゃうのもダメだし、白井さんを超える演技をしないといけないので、なかなか大変なんです(苦笑)。正解出されて、それを超えるような演技をしなければならないのは、結構しんどい。最近はどうなのかな?でも、大変なんですが、白井さんの手の運び方とか、とてもしなやかで綺麗なので「そういうところを大事にやってみよう!」と、私は楽しんでやっていますね。
後編に続く~
KAAT×PARCOプロデュース『オーランドー』
公演日程: 2017年9月23日(土・祝)~2017年10月9日(月・祝)
<KAAT公演>KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
2017年10月26日(木)~29日(日)
<東京公演> 新国立劇場 中劇場
2017年10月18日(水)
<松本公演>松本市民芸術館 主ホール
2017年10月21日(土)~22日(日)
<兵庫公演>兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
原作: ヴァージニア・ウルフ
翻案・脚本: サラ・ルール
演出: 白井晃
翻訳: 小田島恒志 小田島則子
出演: 多部未華子 小芝風花 戸次重幸 池田鉄洋 野間口徹 小日向文世
演奏: 林正樹 相川瞳 鈴木広志
白井晃演出で待望の日本初演!
時と性を超えるヴァージニア・ウルフの傑作を舞台化!!
一夜にして女性へと変貌し、時を超えて真実の愛を追求する、
美貌の青年貴族オーランドーに多部未華子が挑む!
共演者も時には男性として、時には女性としてオーランドーの数奇な運命の中で巡り合う!小日向文世はエリザベス女王で登場!
日本初演となる本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮で最も有名な女流作家のひとりであるヴァージニア・ウルフの代表作を、1974年生まれのアメリカの劇作家サラ・ルールが翻案。サリー・ポッター監督の映画「オルランド」(1992年)でも知られる人物オーランドーを、現代的に生き生きと甦らせる。
16世紀のイングランドに生を受けた少年貴族オーランドーは、エリザベス女王をはじめ、あらゆる女性を虜にする美貌の持ち主。しかし初めて恋に落ちたロシアの美姫サーシャには手ひどくフラれてしまう。傷心のオーランドーはトルコに渡る。その地で30歳を迎えた彼は、なんと一夜にして艶やかな女性に変身!
オーランドーは18世紀、19世紀と時を超えて生き続け、またもや運命の人に会い、それから……
奇想天外なストーリーながらも、数奇な運命をたどるオーランドーの人生をなぞり、“真の運命の相手には時代も国も性別も関係なく巡り合えるはず!”というヴァージニア・ウルフの強いメッセージが感じられる本作を演出するのは、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督・白井晃。これまでKAATプロデュース公演で演出してきた「ペール・ギュント」「夢の劇―ドリーム・プレイ―」「マハゴニー市の興亡」など上質でアカデミックな印象の作風を踏襲しつつも、わずか6名の俳優で、これまでとはひと味異なった新たな表現に挑戦する。