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2021年8月12日 09:13

渡辺えり&高畑淳子インタビュー! 『喜劇 老後の資金がありません』で初共演「老後の資金の話だからこそ、大笑いして泣かせたい」

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

2015年に刊行された垣谷美雨による大ベストセラー小説を初舞台化した『喜劇 老後の資金がありません』が8月13日(金)から、新橋演舞場で上演される。本作は、“老後の資金”という誰もが避けることのできない身近な問題を巡って右往左往する人々を描いた喜劇。渡辺えりと高畑淳子がダブル主演で舞台初共演する。今回は、渡辺と高畑にインタビューを敢行。本作への意気込みや“老後”の話を聞いた。

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――本作に出演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。

渡辺:私、老後の資金がないんですよ(笑)。だから、今、どうしようかなって悩んでいるんですが、そんな私が「老後の資金がないな」って思いながらこの芝居をやることが興味深いし楽しみです。このコロナ禍で、愛情や友情という目に見えないものも大切だとつくづく感じました。なので、今回は、夢のように明るく演じたいなと思ってます。だって、老後の資金がないわけですから(笑)。こういう時代だからこそ、楽しい芝居を目指して頑張っていきたいと思います。それから、高畑さんとは今回が舞台初共演になりますが、昔から共演したいと思っていたので、それも楽しみです。

高畑:えりさんはエネルギッシュな方で、今回の公演日程もなかなかエネルギッシュなので、体力と帳尻を合わせつつ、最後までお客さまに満足していただけるように臨みたいと思います。こういった時代に一番枯渇しているのは心の滋養だと思います。心が不安なんですよね。この間、私、映画館の客席でスクリーンを見ただけで泣いてしまって…。劇場には不思議な力があって、強さをくれる魔法のような場所なんだと改めて感じました。今回、演舞場で、お客さまが何かを見出して帰っていただける作品になればと思っています。

――今回は、歌あり、踊りありの作品になるそうですね。

渡辺:歌があることで時空が飛べるんですよ。小説をそのまま脚色するとかなり長い芝居になってしまいますが、間の時間を歌で解説できますし、歌が入ることで時間が飛んでも気持ちも切り替えられるんです。そういう意味で、歌と踊りはいいなと思いますし、私は好きです。

高畑:えりさんの言葉を聞いて、その通りだと感動しました。渡辺えりは演出家だな、と。私はそんな信頼できるえりさんの隣でのほほんと演じたいと思います(笑)。歌はあまり得意ではないので、頑張ります。

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――今回、公演タイトル通り「老後の資金」をテーマにした作品です。日本では老後の資金に最低2000万円必要だという話もありますが、実際にお2人は「老後」についてどのように考えていらっしゃるんですか?

渡辺:そのニュースが話題になった時、2000万円を持っている演劇人って誰もいなかったんですよ。だから、みんなで焦って「どうするんだ」ってしょっちゅう、飲み会で話題になっていたのを覚えています。しかも、2000万じゃ暮らせないという人も出て来て…私は、頑張って2000万円を貯めようと本気で思っていたので、足りないと聞いて、じゃあ、どういう計算をして、いくら持っていればいいのか悩んだ記憶があります。でも、そんなことを言っているうちに、今度はコロナがきてしまって…。そうしたらそんなこと言ってられないじゃないですか。どんどんマイナスになっていく。そんなときに、この作品のお話が来て、「老後の資金がありません」という芝居をしなくちゃいけないんだというので、重い責任を感じてます(笑)。資金がなくても、なんとか暮らしていけるようなアイディアを考えていかないといけないなと、私自身も思っています。

高畑:私はものすごく用心深いタイプなので、意外と貯め込むタイプなんですよ。でも、老後というのは、お金だけじゃなく、もっと精神的なものも必要だと思います。お金がいくらあっても悲しいこともくるので、もっと心の根っこを太くして自分がどんどん朽ち果てていくことに耐えていかないといけないんだと感じます。だって、人間って絶対に死ぬことが分かっていて生きているわけじゃないですか。そんな恐ろしいことよくできるなと思うんですよ。死を迎えるための心の準備というのも必要なのかなと私は思います。

渡辺:でも、実際にお金はかかりますからね。例えば、マンションを買っても、管理費は毎月何万も取られるんですよ。私、住む場所を手に入れておけばもう大丈夫だと思っていたんです。ところが、管理費がある。働いていなければ、マイナスになっていくだけですよね。私たちのような自営業の場合、年金で生活できるほどもらえませんし…。働けなくなってから死ぬまでに何年かかるかと逆算していくと、もう恐怖に近いようなものを感じますよ。お金に関して。だから、そういうことを考えないで演劇を観たいと、芝居に逃げてます(笑)。

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――では、お2人が考える幸せな老後って?

渡辺:「幸せな老後」っていわれると、テレビのドキュメンタリー番組で見られるような家族を想像してしまいますね。海外の国で親族が集まって、孫が何十人いて、みんなで暮らしているとか、お祝いをしている姿を見ると、ああ幸せそうだなって。だから、私には老後の幸せはないなと思っています。みんなから「演劇おばさん」というようなあだ名で呼ばれて、小劇場で芝居を観てたら客席で死んじゃったとなったら怖いですよね(笑)。なけなしの3000円を持って、小劇場に通って「客席で渡辺が死んでるよ」って言われちゃうんじゃないかなと思うんです(笑)。

――ある意味、劇場で死ねるとしたら、それはそれで幸せなのかもしれませんね。

渡辺:芝居を観ながら死ぬのはいいんですよ。でも、それがつまらない芝居だったらどうします? もう帰りたいなって思うような芝居の時に死んじゃったら(笑)。きっと、「渡辺はこの芝居を観ながら死んだ」って記事に書かれちゃうんですよ(笑)。よっぽど好きだったんだろうって。本当はつまらないと思っていたのに、そう書かれたら嫌ですよ(笑)。でも、幸せな老後には縁遠くても、なんとか自分のやりたいことをやって死んでいきたいとは思っています。

高畑:私はもう自分で老いてると思っていますし、おばあさんになったんだなってすごく痛感してます。

渡辺:本当に?どんなときに?

高畑:写真とか自分が出演したテレビのオンエアーを観て、もうちょっときれいだと思ってたんですけど、そうではないってことがだんだんわかってきて、老いたんだって。でもそれはいいと思ってるんです。お金はないですが、でもこの歳になってもこうやってお芝居に呼んでいただいて、それで稽古場にまだ行けるんですから。私、この仕事をこんなにも長くできると思っていなかったので、この歳になってもお芝居ができるという幸せが自分に来るなんて思わなかったんですよ。だから、今、ものすごく楽しいですし、例えば2年後くらいに死んでしまっても悔いはないです。この先は、もっともっと仕事は少なくなっていくと思いますし、こんなに大きなお役はできないかもしれませんが、作品にひょこっと出てくるヨボヨボしたおばあさんのような、味のあるおばあさんになって、何か好きな仕事をできたらいいなと思います。

――今回、舞台初共演となりますが、稽古場でどんなことを楽しみにしていますか?

渡辺:それはもう、高畑さんと芝居ができることです。

高畑:私もです。今日、初めてえりさんとお芝居の話をさせていただいて、すごく面白かったんです。私は、稽古は黙々とやるよりも、余計なことを考えたり、話したりする方が根っこが太くなると思うタイプなんですね。今回は、そういう時間がふんだんに持てるんじゃないかと楽しみにしています。今から40年くらい前に、仲良しの女優さんが会うたびに「渡辺えりは天才だ。すごい人だ」と言われてたんです。今日、話していて、それが分かる気がしました。私と全く違う回路で物事を考えていらっしゃるので、すごく刺激を受けますし、お芝居をするのがすごく楽しみです。

渡辺 私も高畑さんとはいろいろな話をしながら稽古を進めていけると思うので、すごく楽しみで仕方ないです。

――公演に向けて、改めて意気込みをお願いします。

渡辺:こういう時代だからこそ、「老後の資金の話」だからこそ、大笑いして泣かせたいと思います。これまで共演したいと思いながら今日までできなかった高畑さんとご一緒できるのが本当に嬉しいので、化学反応を起こしながら、お互いに楽しんで演じたいと思います。きっとお客さまにも喜んでいただける作品になると思っています。

高畑:来てよかったなって帰り道にいっていただける作品にしたいと思います。安くはないお切符代ではありますけれど、良かったなと思っていただけたら嬉しいです。

――ありがとうございました!

『喜劇 老後の資金がありません』は、8月13日(金)~26日(木)に東京・新橋演舞場、9月1日(水)~15日(水)に大阪松竹座で上演。

 

取材:文・写真/嶋田真己

 

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