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2022年3月1日 21:07

【前編】加藤和樹インタビュー! 舞台『冬のライオン』長男リチャード役 親子関係や愛されたい思いは今の時代にも通じる

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

佐々木蔵之介主演・森新太郎演出の舞台『冬のライオン』が2022年2月26日(土)~3月15日(火)まで東京芸術劇場 プレイハウスで上演される。本作は、1966年にブロードウェイで初演され1968年に映画化された作品。日本でも1981年、1997年、2010年に上演されている。英国国王ヘンリー二世(佐々木蔵之介)とその家族の愛と憎しみと欲望を重厚で独特な言葉遣いのセリフに込めて描き出すが、意外にも、赤裸々で熾烈な丁々発止が“コメディ”な家族劇。出演は佐々木蔵之介、葵わかな、加藤和樹、水田航生、永島敬三、浅利陽介、高畑淳子。ヘンリー二世の長男リチャード役の加藤和樹に役への思いや作品の見どころなどを聞いた。

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――出演が決まった時の心境を聞かせてください。

もちろん楽しみな気持ちもあるのですが、久々のストレートプレイということもあって、自分がこの作品の中でどう立ちまわるかということをすごく思いました。

――戯曲を読まれてみて、どんな感想を持ちましたか?

思ったよりも固くないなと思いました。シェイクスピアのような印象だったのですが、実際読んでみると、すごく位の高い家族のドタバタというか、どこか愛らしいというのか、馬鹿馬鹿しいというのか、作品として難しさは感じなかったです。やるのはもちろん難しいと思うのですが、これを観るお客さまがそんなに固い感じで観る作品ではないのだと思いました。時には柔らかさもあり、もちろん言葉での応酬がほとんどなので、上流階級の言葉遊びのようなもので相手を責め立てたり、自分を守ったり。言葉がものすごく重要だなと思いました。

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――加藤さんは長男リチャード役を演じられますが、彼についてはどのように捉えていますか?

実際にはヘンリーという兄がいたのですが、亡くなってしまったので今は実質的に長男といってもいい存在ですが、弟たちとそんなに交流があるわけでもないんです。今回、クリスマスの日にみんなが久し振りに会います。史実では、獅子心王と呼ばれるリチャードは戦いにすごく長けていることで知られていますが、この作品の中では戦いにも行かないので、彼の武勇を、そして彼をどう役作りしていくかは難しいところだと思っています。ただ、彼は母親にすごく可愛がられてはいるのですが、父親からの愛を受けたかったという望みをずっとずっと抱えて生きてきている。家族の中でも、知略があって人を騙すというよりは、本音を語る部分が多いので、彼の素直さ、戦いに身を置いているからこそのまじめさ、固さのようなものはすごく作りこみやすい部分かなと思いました。

――実在の人物ということで、どのような研究をなさったのですか?

彼の功績であったりとか文献は読んではいますが、役作りにどう生かされるかはあまり意味をなさないような気はしています。彼を知ることは重要ですが、彼が家族に相対して、どうふるまうかの方が重要だと思っています。実在の人物であっても今回の戯曲はフィクションですから。芝居をしながら作っていく方が強いのかなと思っています。

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――演出の森新太郎さんとは今回初めて一緒にお仕事をされるそうですが、森さんからはどのようなお話がありましたか?

シーン毎のそれぞれの役の居方であったり、彼はこういうことはこう思っていて、このシーンではこういうことを目的にしていて、と割りと細かくオーダーがありました。。僕は去年白井(晃)さんとご一緒した時に「こんど『冬のライオン』やるんでしょ?」という話から「森君初めて?俺よりけっこうしつこいから頑張って」と言われて(笑)、けっこうドキドキしている部分はあります。誰よりも作品の理解力が深く何を質問しても一緒に考えて、そこをすごく一緒に広げてくださるので、ものすごく信頼がおけますし、いろいろ試していく中で、“これはこっちなのじゃないか?”ということに関してはフレキシブルに対応してくださるので、昔の時代の物語ですが、昔っぽくなくうまく今の時代に合わせた『冬のライオン』を作られていくのではないかと思っています。

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――今の時代に合った『冬のライオン』と感じられるのはどういう部分ですか?

(舞台となっている)時代は古いですし、我々は王族でもないですし、その階級の人の暮らしはわからないのですが、根本にある親子関係とか、愛されたい、憧れといった家族の思い、思うが故のすれ違いというのは今の時代もあると思うんですよね。それを代弁している作品のような気がしています。観終わった後に、家族に対して素直になろうとか、通じるものがあるのではないかと思います。このヘンリーたちの愛の形は、我々常人には理解しがたい形ではあるのですが、それを観て、愛おしいとかこういう愛も素敵だなと感じてもらえるのではないかと思います。

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――今回は7人の精鋭による舞台です。父ヘンリー二世佐々木蔵之介さん、母エレノア高畑淳子さんとのやり取りなど、楽しみですが、本読みが始まって、印象はいかかですか?

お二人ともすごくパワーがあり、存在自体の大きさを感じています。そこに我々息子たちがどう対峙するかというところ。ただの母親ではないんです。淳子さんが演じるエレノアはフランスの王女で品もあれば、立場もある、過ごしてきた時間、成してきた功績もある。偉大な母と父に対して、どう立ち向かうか、罵倒するか(笑)。そこが実際のバトルではなく、言葉で闘うお話なので、プレッシャーに負けないように頑張らなければと感じています。二人とも、声の圧と言いますか、持っている力が言葉に乗るので、負けないようにしたいです。

――早速すごい勢いを感じていらっしゃるのでしょうか?

本読みの段階からすでに、貫禄を感じました。この二人には勝てないな(笑)と感じています。

――フィリップ役の水田航生さんとはいかがですか?共演のご経験もありますよね?

はい。フランス王のフィリップとリチャードとの関係性も見どころの一つだと思っています。

――弟役の、永島敬三さん、浅利陽介さんはいかがですか?

お二人とは今回初めてです。それぞれ三兄弟のキャラクターも全然違いますし、持っている特徴も、能力も違い、それが明確に分かれているので面白いと思います。兄弟間のやり取りに関しては演じていく中でいろいろとディスカッションしていきたいなと思っています。

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――王が寵愛する愛妾・アレー役の葵わかなさんにはどんな印象を持っていらっしゃいますか?

アレーはこの作品の中ですごく難しい立ち位置だと思います。可哀想ではあるのですけどすごく強い女性だと思っていて、葵さんの持っている高貴な感じと、すごく芯のある声をしているので、アレーにぴったりだと思いました。

――リチャードは強い人なのでしょうか?

『冬のライオン』の中のリチャードは、もちろん強いです。でも精神的にどうかというと脆い部分もあって、それは親に対する思いであったり、強くなれない、コンプレックスもあり、求めるものが父親の愛なので、認めて欲しいがために戦いに身を置いていたのではと思いますし、本当はすごく弱い人間なのではないかと僕は思いますね。

078s

後編~

 

『冬のライオン』
日程:2022 年 2 月 26 日(土)~3 月 15 日(火)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

作:ジェームズ・ゴールドマン
翻訳:小田島雄志
演出:森新太郎
出演:佐々木蔵之介/葵わかな 加藤和樹 水田航生 永島敬三 浅利陽介/高畑淳子
主催    公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場
公式サイト   https://www.thelioninwinter.jp/

 【ストーリー】
時は英国王家の草創期、1183年。場所はイングランドの国王ヘンリー二世が居城としていたフランス中部のシノン城。豪傑で実力と運を味方にしてきた国王が築き上げた領土、そして跡目を誰が継ぐのか決着をつけるべく、一同が会した。集まったのは、妻のエレノア、長男リチャード・次男ジェフリー・三男ジョン、そして王の寵愛するアレーと、その異母弟で敵国フランス王のフィリップ。
三男のジョンに家督を継がせたい国王、虎視眈々と跡継ぎの座を狙う長男リチャード。何度も反旗を翻したため長年幽閉されていながら、広大な領土を持ち王妃の立場にいるエレノア。若き愛妾との確執……。果たして、親子の、夫婦の、妻と愛妾の、イングランド王とフランス王の対決の決着はいかに…。

 

 

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