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2023年1月22日 16:07

【前編】中川晃教インタビュー ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』2020年公演中止は「2023年に幕を開けるための必然だった」

取材/RanRanEntertainment

惣領冬実による大ヒット歴史漫画をミュージカル化した『チェーザレ 破壊の創造者』が、2023年1月7日(土)から明治座で開幕した。本作は、明治座始まって以来、初の幻のオーケストラピットを稼働し、生演奏で作り上げる本格オリジナルミュージカル。ルネッサンス期のイタリア半島で活躍した伝説の英雄チェーザレ・ボルジアの物語を圧倒的なスケールで描く。主人公のチェーザレを演じる中川晃教に、公演への思いや役作りについてなどを聞いた。

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――2020年に開幕間近で中止となり、今回改めて上演が決まった本作ですが、まずは、上演が決まった時のお気持ちを聞かせてください!

本当にうれしかったです。今回、初演に携わっていただいたキャストの方々もたくさん参加されていて、新しく加わってくださった方もいらして、こうして動き出せたことは奇跡のようだと思います。僕自身は、中止というよりも、ただ止まっていただけという感覚があったんです。なので、こうして取材をしていただいたり、製作発表を行ったり、稽古をしたりすることで、この日を待っていたんだと改めて思いました。

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――2020年に公演中止になる前には、稽古はほぼ終わっていたと聞いています。今回、改めて稽古をするにあたり、前回の稽古が活きていると感じることはありますか?

 全てにおいてそう思います。前回は、確かに上演することが出来ずに終わってしまいましたが、僕自身は、こんなにも贅沢な経験をさせていただき、ありがたいという思いです。当時は、未知のコロナウイルスというものに対し、どうすればいいのかも分からない緊張感が続いている中で稽古をしていましたが、1日も、1秒も無駄にしたくないというくらい稽古時間は貴重でした。というのも、やはりそれくらいオリジナルの新作ミュージカルを作り上げるというのは大変な苦労があるんです。

しかも、前回は2チーム制での上演を予定していたので、余計に時間が必要でした。そうして、作り上げたものですから、それが中止となった時にまるで化石のミイラのように美しい状態で保存されたんです。それを今回、パカッと開け、その時の綺麗なままの状態で取り出した。そんな感覚です。なので、確実に役に対する解釈も作品に対する解釈も進化しています。それはもちろん、演出の小山ゆうなさんも同じで、小山さんが僕たちに演出される中で、共通言語も進化していきますし、ボキャブラリーも変化していきます。それは3年前よりも分かりやすいことだったり、あるいは感覚として捉えられる表現だったりするので、前回以上にキャストみんなが、この作品をどういう作品にしていくのか共通認識を持っていると感じています。

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――現在は、チェーザレを演じるにあたって、どんなところにポイントを置いていますか?

チェーザレ・ボルジアという人物は、歴史上ではレーニンやヒトラーのような独裁者と同列に表現されることがあるんです。なので、ニヒルな人物という印象がありますが、惣領先生が描いた原作を元に作り上げるこの作品のチェーザレは、16歳の学生です。実は、チェーザレの若い頃はあまり表に出ていないんです。なので、そうした彼の学生時代に焦点を当てて描こうとされた惣領先生は、相当な勉強をされて、その上でご自身の描きたいと思う世界観を注ぎ込んで完成させているんだと思います。そう考えると、ある意味ではこの作品のチェーザレは、オリジナルな部分が多分にあると思います。

それから、学生時代にフォーカスを当てていることで、彼が悩んだり、葛藤したり、ごくごく当たり前の経験をしている姿が描かれていきます。覇権を争っている当時のヨーロッパを表わすかのように、チェーザレが通う学校でも親たちが争っている。その中で、チェーザレたち学生は、反骨精神を持って、親の考えに従うのではなく、より良い政治のあり方や、ヨーロッパをどうまとめ上げていけばいいのかを考え、理想のリーダーを思い描いていく。キャラクターそれぞれに背景があり、親との関係がありますが、チェーザレは、誰よりも先を見すえて行動する能力を持っています。どこにでもいそうな学生だけど、どこか違う。そんなチェーザレの成長や葛藤を今回、お客さまにお見せできたらと思っています。

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――中川さんご自身は、チェーザレに共感できるところはありますか?

(山崎大輝と赤澤遼太郎がWキャストで演じる)アンジェロとのシーンは、共感のような、不思議な感覚を味わっています。彼らは立場が全く違うもの同士なのに、出会ったことで不思議な縁が紡がれていきます。世の中には、不思議なことがたくさんありますよね? 第六感なんて呼ばれているような、言葉で表現できない不思議な感覚が。それをアンジェロに感じるのです。その感覚はきっとチェーザレが感じたものと同じものなんじゃないかなと思います。

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――まるでチェーザレに同化したかのような感覚ということですね。

それから、物語の最初にチェーザレの「私の母は娼婦、父は怪物だ」というセリフがあるのですが、この言葉をチェーザレが選んだ意図を考えると、すごく納得できるところがあって、印象に残っています。とても劇画的な言葉ですが、僕は、彼は意外にもストレートな意味で言っているのではないかと思うんです。父親は、とても自分が超えることが出来ない怪物的な人物。そして、彼は私生児なので、母親に対してコンプレックスがあり、だからこそ「娼婦」という言葉を使った。彼がきっと、大人になって、愛を知った時には「娼婦」という言葉で表すことはなくなるかもしれないですが、16歳の少年は「娼婦」という言葉と、「怪物」という言葉を選んだ。そこにすごく共感します。自分の父や母がそうだということではなく、その言葉を選んだ彼に共感しています。

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ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』

原作:惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』(講談社「モーニング」所載)
原作監修:原 基晶
脚本:荻田浩一
演出:小山ゆうな
音楽:島 健

出演:
中川晃教
橘ケンチ(EXILE)
[スクアドラ ヴェルデ] 山崎大輝 風間由次郎 近藤頌利 木戸邑弥 (Wキャスト)
[スクアドラ ロッサ] 赤澤遼太郎 鍵本 輝 本田礼生 健人 (Wキャスト)
藤岡正明 今 拓哉 丘山晴己 横山だいすけ 岡 幸二郎
別所哲也 ほか

日程・会場:2月5日(日)まで明治座で上演中!
お問い合わせ:明治座チケットセンター       03-3666-6666(10:00〜17:00)
公式ツイッター:@cesare_stage
公式サイト:https://www.cesare-stage.com

 

 

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