2015.12. 取材・記事:写真/RanRan Entertainment
論文が書けない哲学研究者が、近所の森で見知らぬ女性と出会う。女性は、「森のカフェにようこそ」と言って、コーヒーをすすめるのだが……。12月12日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷を皮切りに順次全国公開される、映画『森のカフェ』(脚本・監督:榎本憲男)は、哲学的ウィットに富んだ内容を盛り込んだラブコメディ。この作品で謎の女性・森井洋子を演じている若井久美子さんにとって本格的な映像出演作となる。撮影時のエピソードについてお伺いしました!<前編>
Q:まずは、この映画に出演することになった経緯からお伺いできますか?
若井:去年の夏、榎本監督と初めてお会いしました。映画を撮るにあたり、大学生の役を探しているということで。私は卒業してからけっこう経ってるからダメかなと思ってたんですけど、どうやら大丈夫だったみたいようで(笑)、森野洋子役に決まりました。
監督はこの作品の脚本も書いていて、お会いした時はまだ完成していなかったんですね。私に会ってから、監督は森野洋子ちゃんを私に当てて書いてくださいました。
Q:そんな当て書きしている脚本を初めて読んだ時の感想はいかがでしたか?
若井:森野洋子ちゃんが、天真爛漫ですごくぶっとんでる役で描かれていました。監督の映画に出演したことがある人から、監督がわりと厳しい方だとお伺いしていたんですね。なので、初めて会った時は、ちょっと緊張しながら、受け答えも「……はい」っておとなしめな感じで、普段のおしゃべりな自分を隠していたつもりでした。だから、大人しめな感じになってくると思ってたのに、監督から「お前にそっくりに作ったんだよ」と言われて渡された脚本の洋子ちゃんはぶっ飛んでる役で(笑)。それがほんと普段の私と共通する部分が多くて。隠してたのに見抜かれていたんだなって、監督のすごさを感じました。
Q:若井さんの周囲の方にリサーチされていたんでしょうか?
若井:していないんですよ、驚きますよね! それから、私は劇中で歌を歌うんですけど、歌うシーンも当初は考えていなかったそうなんです。でも、何度かお会いしているうちに私が中学の時から歌をやってるのを聞いて、「じゃあ歌を入れてあげようか?」ってことでオリジナル曲ができたんです。
Q:監督フットワーク軽いですね! 出来上がった曲はいかがでしたか?
若井:監督が書いた歌詞を初めて見た時、シンプルなんだけど哲学的な要素の内容が歌詞にちゃんと表現されてて、作品を象徴するかのような曲になってると感じました。「監督さすが!」って(笑)。こんな曲を歌えるなんて、歌をやっていて良かった!と思いました。
Q:さきほど言われていた、森野洋子さんとご自身の似ている部分を具体的に教えてください!
若井:洋子ちゃんが劇中、大声で怒るところがあるんですけど、私も怒る時はあんな感じ(笑)。また、打ち解けてしまった相手に自分の思ったことをそのまま考えずに口に出しちゃうところとかも似ているなと思います。
Q:監督からの演技に対する指示はありましたか?
若井:「こう演じて」といった演技のイメージに対する指示はなくて、「このセリフはこうやって話してほしい」というような、1つ1つのセリフの言い方の指示を細かくされました。撮影前には読み合わせを何度もして時間をかけましたね。読み合わせの時、ひと言セリフを言うたびに監督に止められるんです。例えば、「そうなんだ」というセリフ1つとっても、「違う!一音上げて」「もっと低く」「もっと圧をかけて」とかすごく細かく指導されるんです。それで、できるまで、20回30回でも監督のイメージ通りになるまで繰り返す。監督はレコーダーを持参されていまして、読み合わせの役者の声を全部録音してて、その場で再生するんですよ。「2回目の声がいい」とかその場で実際に比較しながら。
Q:出演者全員がそういった指導を受けたんですか?
若井:主要キャストの4人ですね。読み合わせが足りなかったときの予備日まで準備されていました。
若井久美子(わかい・くみこ)プロフィール
1984年、東京都出身。東京音楽大学演奏家コース卒業後、同大学科目履修声楽コースに進学。在学中に第39回国際芸術連盟新人オーディション最優秀新人賞受賞。東宝ミュージカルアカデミーアドバンスコース修了。主な出演作に、音楽劇『しあわせのタネ』、『この森で、天使はバスを降りた』(ともに主演)など。2013年、2015年の東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』ではコゼットを演じている。
映画『森のカフェ』
2015年12月12日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて公開。
以後、順次全国公開。
公式サイト http://morinocafe.com/