取材:記事・写真/RanRanEntertainment
村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」が舞台化され、2月11日(火・祝)より上演される。主人公の岡田トオルが、猫の失踪や謎の女からの電話をきっかけに、奇妙な出来事に巻き込まれ、思いもしない戦いの当事者になっていく様(さま)を描いた本作は、村上が世界で評価されるきっかけともなった作品だ。そんな村上の代表作とも呼べる本作を舞台として創り上げるのは、イスラエルの奇才インバル・ピントと気鋭のアミール・グリガー、そして日本の演劇界に新しい風を送り続ける藤田大貴。音楽は独自の世界観を持つ大友良英が担当する。
本作に、死への興味を持つ風変わりな女子高生・笠原メイ役で出演する門脇麦に、舞台への思いや意気込みを聞いた。
――まずは、ご出演が決まったお気持ちをお聞かせください。
インバルの作品は何回か観させていただいていて、いつかご一緒したいと思っていたので、すごくうれしかったです。
――出演が発表された際にも「念願のインバル作品」とコメント出されていましたね。インバル作品のどのようなところに魅力を感じていらっしゃったんですか?
私は、『100万回生きたねこ』と『羅生門』を観劇させていただいたのですが、インバルは演出家でありながら、振付家でもあるので、ほかの演出家とは違う目線で舞台を作っていらっしゃる感じがします。セリフでストーリーを伝えるのではなく、役者の動きだったり、舞台の美術というもので作品の世界観を作り出しているところに魅力を感じます。
――現在、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』にもヒロインの駒役でご出演されていて、とてもお忙しいとは思うのですが、それでも出演したいと思われたのは、やはり「インバル作品」ということが大きかったのですか?
そうですね。それから、以前出演させて頂いたミュージカル『わたしは真悟』と同じプロデューサーの方で、彼女が作る世界観も好きなので、また一緒にお仕事できるということもありました。
――原作を読んだご感想は?
こんなに長くて難解なお話を一体どうやって2時間におさめるのだろう…と。さらに、歌ったり、踊ったりもするわけですから、正直、どうなるのか今も全く想像がついていません(苦笑)。
――門脇さんが演じるメイという役柄については、原作を読んだ時点ではどのようにとらえていますか?
思春期特有の危うさや好奇心、それから大人になったら求められないものへの執着心の強さを感じさせる女の子というイメージがあります。ある意味、残酷さも持っていて、そこがすごく魅力的だと感じます。
――本作は、門脇さんにとって約1年半ぶりの舞台出演になります。これまでもコンスタントに舞台に出演されていますが、舞台に出演することに対して、どのような思いを抱いていらっしゃいますか?
あまり舞台だから、映画だから、ドラマだからというのは気にしていないですが、舞台に出演すると役者としてすごく鍛えられるところはあると思います。なので1年に1回は舞台をやりたいと事務所にも伝えていて、それでそのようなスパンで出演させていただいています。
――舞台に出演することで鍛えられるというのは、どういった点で?
映像の場合、一度OKが出たら、そのシーンのことは考えなくなるんです。次のシーン、次のシーンとどんどんこなしていかなければいけないので、撮影現場で、自分の芝居を振り返って考えて…ということは難しいんですね。しかも、そうやって撮影したものが完成するのには、映画の場合、1年かかることもあります。そうすると、そこに写っている自分はある意味、過去の自分なんですよ。なので、完成したものを見つめ直して、何かを改善するというのが難しいんです。もちろん、反省することもありますし、自分を改めて見ることで思うこともあるのですが…。舞台は、毎日稽古があり、前日にできなかったことを次の日にやり直して…と繰り返し練習をすることができますし、一つの作品、芝居に向き合う期間が1カ月あるので、そこが大きいと思います。
後編に続く~
『ねじまき鳥クロニクル』
東京芸術劇場プレイハウス
2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日)
大阪公演
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
3月7日(土)・8日(日)
愛知公演
愛知県芸術劇場大ホール
3月14日(土)・15日(日)
原作:村上春樹
演出・振付・美術:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガー
脚本・演出:藤田貴大
音楽:大友良英
キャスト
<演じる・歌う・踊る>
成河/渡辺大知/門脇麦
大貫勇輔/徳永えり/松岡広大
成田亜佑美/さとうこうじ
吹越満/銀粉蝶
<特に踊る>
大宮大奨、加賀谷一肇、川合ロン、笹本龍史
東海林靖志、鈴木美奈子、西山友貴、皆川まゆむ
<演奏>
大友良英、イトケン、江川良子