取材・撮影/RanRanEntertainment
新作ミュージカル『COLOR』が9月5日(月)に東京・新国立劇場 小劇場で開幕する。9月4日(日)にゲネプロ公開とそれに先立ち、質疑応答の時間が設けられ、植村花菜(作曲)、浦井健治、成河、濱田めぐみ、柚希礼音が登壇した。
オフィシャル提供(撮影:田中亜紀)
本作は、草木染作家の坪倉優介著のノンフィクション「記憶喪失になったぼくが見た世界」(朝日文庫)をベースにした新作ミュージカル。「トイレの神様」などで知られるシンガーソングライターの植村花菜が自身初となるミュージカル楽曲を担当。脚本はミュージカル『生きる』、『バケモノの子』などを手掛ける高橋知伽江。演出は小山ゆうな、編曲・音楽監督は木原健太郎。出演は浦井健治(ぼく/大切な人たち)、成河(ぼく/大切な人たち)、濱田めぐみ(母)、柚希礼音(母)。今作は2チームの固定制で上演される。
植村は「このお話をいただいたのは今から2年前。ミュージカルの作曲は初めてなので、ワクワクドキドキ、この2年間は『COLOR』のことばかり考えて暮らしてきました。明日初日を迎えることに本当に感無量です」と今の思いを述べた。
浦井は「3人のキャストしか舞台上には参加しない。2チームあるので、僕と成河にとっては体力勝負の部分もある作品」と語り、「全員でクリエイティブに作ってきた作品。どちらを見ていただいても作品のメッセージが伝わります。お稽古が終わった時に『良かったね』と拍手できるような時間を過ごしてこられた財産だと思える作品です」と胸を張った。
成河は「作る作業がとにかく楽しくて、全員で知恵と技術と感性を持ち寄って作り続けている、今その最中なんです。今度はお客さまと一緒に作っていく作業になると思います。(原作の)坪倉さんたちとたくさんコミュニケーションをとって取材しながらやっている現在進行形の話です。お客さまと一緒に創造し続けて、日々更新され、考えが深めていくことを千秋楽までやれたらと思っています」と、進行中であることを強調した。
濱田は「ようやくこの日が来たなという感じがしています。お稽古場では今までにないほどクリエイターの方と役者とスタッフの全員が意見を出し合いながら、手作りでゼロから作って立ち上げてきた作品です。アイディアを出し合いながら作っている最中。終着点がない作品に逆になれたらいいと思っています。観ていただいた方が何かを持って帰っていただいて、人生の中で1つの転換期となる作品になれば嬉しいです」と話した。
柚希も「稽古期間がかけがえのない時間でした」と振り返った。「作品からも、キャストからもクリエイターチームからも坪倉家の皆さまからもいろいろなものをいただきながら日々稽古をしてきました。今もたくさんのメッセージを感じています。それを観てくださる皆さまにお届けできるように初日から日々集中してやっていきたいと思っています」と意気込みを語った。
記憶をなくしてしまったぼくに向き合う母役に挑戦した柚希と濱田。浦井演じるぼくの母役、柚希は「こんなにちゃんとした母役をするのも初めてで、お稽古の最初はどうしたらいいものかと思っていました。でも、息子と向き合って、目を見ていたらだんだんそのような気持ちになれた」と話し、「実際の坪倉さんのお母さまにお話を伺えたことも大きく、お母さまは『常に絶対に何とかなる、この子を何とかすると思って、全然大変じゃなかった』とおっしゃって、そこを大切に思って“この子を絶対にまた世に戻すのだ”という気持ちでやりたいと思います」と力を込めた。
成河演じるぼくの母役となる濱田は「こちらが息子と思っていても、母親への対応をしてくれない(記憶喪失のぼく)。今まで持っていた価値観が通らない複雑な状況で、母親の定義でこの役を通していいのかなと思いました。一概に親子というだけでは括れないデリケートな感覚がこの作品の親子関係にはあると思ったし、非常に複雑で多次元的な感じで役を捉えなくてはいけない」と最初は戸惑ったことを明かした。さらに、「役として、成河君と向き合った時に、人と人が向き合うのは理屈ではなく、その時の生の感情でのぶつかり合いが一番だと思いました」と行きついた先にあったものを熱く語った。
一方、ぼくを演じる浦井は、「柚希さんは背負って生きている、それは坪倉さんのご両親ともリンクしている。とても強く、いろいろなことを考えてきたお母さん。ご両親の素敵さが舞台上に流れていると感じています。家族の形はどんなことになっても変わらないということを柚希さんのお母さんから受け取って、毎回感動しています」と微笑んだ。
そして成河は「家族が一番、親子なら何でも乗り越えられる、という話ではない。むしろ、家族とは何なのだろう?親子ってこうなのかもしれない、家族ってこうなのかもしれないと乗り越えていく。今なお続いている人生を描いています。ゴールはないです。編集者の目を通して親子の形、家族の形を一緒に考えていく話になっています」と本作の本質を語った。
最後にこれからご覧になるお客さまに向けてメッセージが送られた。
植村「2チームの稽古を拝見しましたが、本当に違うんです。同じ演目でこんなにも違うのだとびっくりしました。両方観ていただけたらと思います。生きていく上で大事なものって何なのだろう。COLOR、自分の色って何なのだろう?それを発見できる作品になってくれるのではないかと思っています。自分の本当の色を見つけていただけたらと思います」
柚希「この作品をやっていて、毎日、自分の色って何なのだろうと考えていました。がむしゃらに目の前のこと必死にやってきた先に何かが見えてきたのではないかなという答えになりました。これからもまだまだ探し続けると思います」
濱田「この作品に参加してもらって、キャストもスタッフもこの作品に関わると、全員が、自分って何なのだろう、誰だろうと、自分が求めていくべき色は何なのだろう、と探し出す不思議な世界になります。この劇場の中が一つの空間になります。千秋楽まで自分探しの旅を、そして自分の色を探しに行き続けられたらと思います」
成河「坪倉さんたちが30年以上経験してきている世界を初めて演劇で伝える。僕にとってはすごく大きな実験です」
浦井「きっと人間の遺伝子レベルで何かを伝えていく、繋がっていくことが人間に許された知識であるなら、演劇がずっと続いている理由があるのだと思います。それを実は坪倉さんが感じていらっしゃるのではないかと思っています。坪倉さんは自然災害で無くなってしまう木を、染物にして残そうとしている。それは演劇と似ているなと思います。ロビーには坪倉さんが染めた春夏秋冬の着物があります。一期一会でこの作品が染まっていくのだなと思っています。毎回白からお客さまと染めていくのだなと思っています」
この日行われたゲネプロ①では、ぼく役を浦井健治、母役を柚希礼音、大切な人たち役を成河が演じた。ゲネプロ②では、ぼく役を成河、母役を濱田めぐみ、大切な人たち役を浦井健治が演じた。
新作ミュージカル『COLOR』
東京公演 2022年9月5日(月)~9月25日(日) 新国立劇場 小劇場
大阪公演 2022年9月28日(水)~10月2日(日) サンケイホールブリーゼ
愛知公演 2022年10月9日(日)~10月10日(月祝) ウインクあいち
公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/color2022/
【ストーリー】
雨が降る日の夕方。帰宅途中に乗っていたスクーターが、トラックに衝突。救急車で搬送されるが、そのまま意識不明の重体に。集中治療室に入って10日後、奇跡的に目覚める。しかし、両親のこと、友人のこと、自分自身のこと、そして、食べる、眠るなどの感覚さえも、何もかもすべて、忘れていた。目の前に出されたお米は、「きらきら光る、つぶつぶ」としか思えなかった“ぼく”には、世界はどのように見えたのか…。目の前に立つ「オカアサン」という女性のことを、心から本当の「お母さん」と呼べるようになったのか…。
“母”の大きな愛。日常に沢山転がっているキラキラひかる幸せ。“ぼく”が歩み始める新しい世界はどんな世界なのか