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2017年6月10日 09:40

海老蔵に負けない中山優馬の目力 歌舞伎の魅力が加速するABKAI『石川五右衛門~外伝』

取材:記事/RanRanEntertainment
写真/RanRanEntertainment・ABKAI

「絶景かな~、絶景かな~」。市川海老蔵扮する石川五右衛門の「大見得」での台詞だが、それはまさにこの舞台を観た観客の気持ちそのものだ。6月9日に遂に初日の幕が上がったABKAI2017『石川五右衛門~外伝』。歌舞伎に新風を吹き込み、その魅力を広めたいと市川海老蔵自身が企画した自主公演ABKAIの第4回目となる今年は、ジャニーズ事務所の中山優馬や、前野朋哉、山本純大などの俳優陣を迎え、昨年大好評を得た「石川五右衛門」を新たなストーリーで、よりスケールアップした舞台で魅せる。初日舞台直前の東京・渋谷Bunkamuraシアターコクーンでは、マスコミに舞台稽古が公開され、座長の市川海老蔵をはじめ、中山優馬や、前野朋哉、山本純大、中村壱太郎、市川右團次が取材に応じた。

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江戸時代には庶民の一番の娯楽であった歌舞伎。現代では少し敷居の高いイメージだが、ABKAIでは、歌舞伎の魅力はそのままに、現代劇の俳優陣を上手く舞台に融合させ、現代人にとって分かりやすい楽しい舞台を見事に作り上げている。舞台稽古終了後の取材で海老蔵は、歌舞伎を初めてみるお客さんや、若いお客さんも多いと思うので、内容もわかりやすく、テンポ良く、お祭り感のある内容にしていきたい。初めて見る方には見やすい作品になったと思うと今回の舞台の製作意図を語った。

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なんといっても歌舞伎の舞台の魅力は、構図の美しさ。計算しつくされた歌舞伎独特の動きや、色鮮やかな色彩、人物の配置など、舞台のどの場面をとりあげても絵になっている。また、今回の会場シアターコクーンは、花道がない。しかしそれを逆手にとって役者たちが観客席の通路を縦横無尽に駆け抜けていく。臨場感、スピード感、そして役者の息遣い、汗なども生で感じられるファンにとっては嬉しい演出だ。さらに歌舞伎の魅力の一つ、和楽器の美しい音色や効果音、アクロバティックなアクションなどエンターテイメント性の高い舞台で、観客を惹きつける。

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歌舞伎の舞台に初挑戦となる中山。「すごく緊張しました。この舞台稽古だけでも、出る前に心臓がバクバクして、ずっと台詞と殺陣の確認をしてました」と話すが、立ち居振る舞いなどは堂にいったもので、ピンと張りつめた佇まいには貫禄すら感じさせる。また、目が印象的な中山だけあって、見得を切るときの目力も凄い。実はメイクも自分で行ったという中山。「海老蔵さんに教えていただきながらメイクしました。こういうお化粧をすると一段と気合も入も入ります。見得を切るのも、見ているのと全然違って、筋肉をすごく使うんです。こんなにキツイんだって初めて知りました」と初体験ならではの感想を語った。海老蔵はそんな中山に「センスがいい。少しアドバイスをすると、それがすぐにできてしまう」と絶賛した。

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前野と山本は、現代語で観客を物語に誘導し、コミカルな役どころで観客をなごます重要な役割を担っている。実は二人の掛け合いはアドリブで行っていることが取材時に判明。稽古時から毎日違うアドリブを二人で相談しながら入れているという。「毎回すべるんです。(前野の)顔を見てると結構引き攣ってる。俺もそれを見て引き攣っちゃうから」と話す山本だが、舞台稽古では前野と息がぴったりで、始終客席を沸かせていた。そんな前野は、取材の間中、海老蔵からいじられまくり。「名前なんでしたっけ?」「前野です」というやり取りを何回も繰り返し、「(前野は)緊張しそうにないタイプなのに布を持った手がカタカタ震えていた」と暴露され、一寸法師対五右衛門の闘いは完全に五右衛門に軍配が上がっていた。山本も「汗に見えるかもしれませんが、これ冷や汗ですからね。大変なところに足を踏み入れちゃったなと思いました。とにかく歌舞伎の動きは細かいんです」といつもの舞台とは勝手が違い、様式美を追及する歌舞伎の動きに苦労したエピソードを語った。

対する歌舞伎役者陣は、「(俳優陣の)一生懸命な気迫を感じ、その純粋さを見ていると、僕らも活力になる」と語る海老蔵を始め、右團次も「(俳優さんたちを見ていると)まだ何もわからなかった頃の純粋な気持ちに戻してもらえます。良い化学反応が起きて、面白いミスマッチみたいな、新しい世界ができるといい」と俳優陣の初々しさに初心に帰るような刺激を受けたと語った。舞台を観ているとそんな歌舞伎役者と俳優たちの化学反応が上手くいったことを感じられる。俳優陣のほどよい歌舞伎感が舞台にぴったりで、全く違和感がない。

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海老蔵の長女・麗禾ちゃんと長男・勸玄くんは、パパが演じる石川五右衛門が大好きだという。公演中、観客席の通路を海老蔵が駆け抜けていくシーンで、二人が通行人役で出演する可能性があることが取材で明かされ、ファンには嬉しいサプライズとなりそうだ。

舞台の幕が上がると、アクロバティックな動きに驚かされ、津軽三味線の音色に酔い、色彩の鮮やかさを楽しみ、笑い、華やかさに心が躍りとあっという間の2時間となる。特に今まで歌舞伎を見たことがない人にとって、「歌舞伎」がなぜこれほどまでの長い間、人々を魅了してきたのかを知ることができる最高の舞台がここにある。食わず嫌いをしていた方は、この機会にぜひ劇場に足を運んでみてはいかがだろう。

市川海老蔵 第四回 自主公演 ABKAI2017『石川五右衛門~外伝』は625日までBunkamuraシアターコクーンで上演される。

公式HP http://www.zen-a.co.jp/abkai2017/

 

 

 

 

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