取材・撮影/RanRanEntertainment
映画『流浪(ルビ：るろう)の月』の完成披露試写会が4月13日（水）、都内で行われ、Ｗ主演の広瀬すず、松坂桃李、共演の横浜流星、多部未華子、そして李相日監督が登壇した。
原作は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位（日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門）に輝いた凪良ゆうによる傑作小説。10歳の時に、誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗（かない さらさ）を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文（さえき ふみ）を松坂が演じる。また、事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮を横浜流星が、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じている。
原作について李監督は「美しい物語でした。ただ綺麗な感じだけじゃなく、今僕たちが直面している社会の状況が鋭い視点で描かれていましたし、人と人の求める力というか魂と魂が結びついて、『名前がつけられない関係』って小説には書いてありましたけど、何かそういった定義を超えて純粋に繋がろうとするところがすごく美しい」と称賛、さらに「何よりも広瀬すずの代表作となりました」と広瀬をも称賛した。
李監督とは『怒り』以来二作目となる広瀬は「（前作以来）６年経っていろんなものを経験し、価値観とかお芝居の感覚とか私のなかでだいぶ変わってきたんですけど、監督にお会いしたときには、『ちょっとどうしたら（どう演じたら）いいか分からないんですけど』と、すぐに相談してしまいました」と亮（横浜）とどう演じるのかに戸惑ったことを明かした。「（李監督からは）それじゃこの映画はダメだねと言われ、亮との関係性を作るところにたくさん時間を設けていただき、文（松坂）のことは自分中に溜めて、違うところを全部亮君に捧げるように費やした毎日でした」と撮影時を振り返った。
文を演じた松坂は「僕史上一番難しくて、掘っても掘っても答えが見つからないというか、霧の中でもがいているような感じ。ずっと、酔っているような感じになったんですけれど、李さんも一緒にさまよってくれて、監督は一緒に寄り添ってくれるという感じではなく、一緒にその役になってくれる。更紗と文の終盤戦では何度もリハーサルを重ね、監督は『オレもホテルに帰って演ってみたんだよ』って仰ってくれて、それがすごく嬉しかった。役として同じ熱量というか、一緒に挑んでくれことは今まで味わったことがなく、すごく嬉しい瞬間でした」と笑顔で語った。
更紗の恋人・亮を演じた横浜は「チャレンジでしかなかったです。今回はより自分の中に大きな壁が立ちはだかったという感じ。自分のなかには亮の要素がないと思っていたので、今回は監督とすずちゃんに引き出しをもらって演りきったというのが一番でした」と難役を乗り切ったことをしみじみと語った。
亮と重ならなかったところを問われ、横浜は「自分を見失うことがない。どうしようもないことをしてしまったり、一番は甘えの部分です。十数年間空手をやってきたので、人に弱みを見せるな、涙を見せるとたたき込まれたので、甘えって何だ？というところから始まった。二人の距離感を感じるには、『膝枕をしてもらえ』と言われ、（広瀬に）膝枕をしてもらったんですけど、体重を掛けるのをためらったり･･･。二人で同じ時間を過ごして、甘えってこういうことなのかと亮を通じて感じられるようになってよかったです」とはにかんだ。
広瀬は「30分くらいリハーサル室で膝枕していただきました。（横浜とは）会ってから２日目か３日目でお互い極度の人見知り。全体重を乗せてくるのかと思ったけれど、１、２キロくらいしか乗っていなくて。敬語で喋っていましたけど、肉体的にちょっと触れるだけで距離感や心の開き方が違ってきました」と振り返った。
久しぶりの映画出演となった多部は「皆さんの裏話を聞いて、私は何もないまま撮影したんだなと思いました。現場で手を繋いでいようとか、抱きついてみようくらいでした。もうちょっといろいろしたかった（笑）」には、会場が大いに涌いた。
広瀬と松坂は映画では二度目の共演。広瀬は松坂について「誰だろうって思うくらい、お芝居中は文そのもの。でもカメラが回ってないときは桃李さんフラットのまま。不思議な方でした」と話し、松坂は広瀬を「前の現場とは全く違っていた。こっちが（本当の）広瀬すずかと思った。お芝居をするときはお互いはらわたを見せ合わないとできないような空気感で演じていた」と讃え合った。
横浜は広瀬について「パブリックイメージというか華やかで明るい印象があったけど、実際に会ってみると何か陰の部分も持っていると感じました。（更紗は）瞬発力というか爆発力がすごく、（亮は）全てがどんどん自分も見失っていて、更紗の心も離れていって、自分が惨めに感じるというか、（広瀬のお陰で）亮としてやりきれて有り難かった」と話す。
一方、広瀬は「更紗として亮君が今までと違うように見えてくるときには、亮君でいてくれる流星君にも涙が止まらないくらい涙腺が崩壊して、ホテルに帰ってテレビに出ている流星君を見ても涙が止まらなくなるほどでした」と亮を演じきった横浜を称賛した。
文に寄り添う谷あゆみを演じた多部は「松坂桃李の印象はいつも穏やかで優しくて受け身でいてくれてよく話を聞いてくれる。今回は関係性が特殊で難しい役を演じてらっしゃるし（芝居では）助けられました」と話す。
松坂の喫茶店でコーヒーを入れる役。劇中でコーヒーを文の入れるコーヒーを味わった多部は「撮影初日だったので、その一日がとても重く感じました」と話したが、実は多部はコーヒーが大の苦手だったそうで、それを聞いた松坂は芝居とはいえ、多部にコーヒーをすすめたことに平謝りだった。
映画『流浪(ルビ：るろう)の月』（配給：ギャガ）
5月13日（金）ロードショー
©2022「流浪の月」製作委員会
