
加藤和樹がホストを務め、ゲストアーティストのルーツを、歌とトークで辿る『THE Roots』の第 4 弾『THE Roots2026』が、ゲストに橋本さとしを迎えて、2 月 7 日(土) 大阪・住友生命いずみホール、8 日(日) 東京・第一生命ホールで行われた。取材に訪れたのは 8 日の夜の部。日中、東京地方は雪が舞い、白く覆われたホール周辺だったが、一歩会場に足を踏み入れると、終始、熱気に満ちた空間となっていた。
開演の時間を迎え、ステージ上には「山下康介&THE Roots チェンバーオーケストラ」の面々が登場。軽やかで胸躍る「ショーほど素敵な商売はない」が Overture で流れ、加藤和樹とゲストの橋本さとしの登場を待つ。曲が終わると、華やかなイントロが流れ、ステージ下手(しもて)から“好きなんだけどー” という歌声とともに加藤が登場。さらに次の“好きなんだけどー”のフレーズでステージ上手(かみて)から橋本が登場。西郷輝彦の「星のフラメンコ」で幕を開けた。この曲は橋本が生まれた 1966 年のヒット曲。拍手喝采でルーツを辿る旅がど派手に始まった。

加藤「ようこそお越しくださいました。僕の大好きなこの方のルーツをお届けしたいと思います」
橋本「僕の大好きな加藤和樹くんに呼ばれまして、馳せ参じさせていただきました」二人が挨拶をし、早速橋本の幼少期の話に。「人見知りだったとか?」と加藤が投げかけ、「そうなんですよ。今も実は無理してるんです(笑)」と橋本。軽妙なやりとりで会場の笑いを誘った。さらに、橋本の“初めて買ったレコード”という話題に。8 歳の時、沢田研二の名曲「追憶」というシングルレコードを購入したのが最初だという。「母がジュリー(沢田研二)好きだったので、お年玉で母を喜ばせようと思って買ったのが『追憶』だったんです」と橋本。 8 歳にして、ジュリーの世界に魅せられたとのことで、まさに橋本が持つ大人の色気はここにルーツがあったのか、と感じさせられた。

この「追憶」をドラマチックに歌い上げ、さらに「追憶」のリリースされた 1974 年から加藤が生まれた 1984 年の 10 年あまりの、少年時代から青春時代に橋本が親しんだ名曲たちを二人によるメドレーで畳みかけた。「学園天国」、「時の過ぎ行くままに」、「およげたいたきくん」。さらには「ラヴ・イズ・オーヴァー」、「悲しい色やね」「星空のディスタンス」など、時代を彩った名曲が続いた。
途中、橋本により沢田研二の「勝手にしやがれ」も披露され、ハットを客席側に投げ込むという当時のジュリーそのままのシーンも見せ、場を盛り上げた。メドレーでは随所で手拍子も巻き起こり、思わず口ずさみながら楽しむ客席の姿も。“昭和歌謡”の世界が会場全体を包み込み、その熱度をグッと高めた。メドレーが終わると「誰よりも僕が楽しんでいるんじゃないかと心配になりました(笑)」と笑顔を見せる橋本。「昭和臭プンプンで」と橋本が言うと「香ってます」と即座にツッコむ加藤。『カムフロムアウェイ』、『ラブ・ネバー・ダイ』で共演を重ねた二人だけにその息はぴったり。

続いて届けられたのは KISS の「Beth」を橋本が、さらに QUEEN の「I Was Born To Love You」を加藤が、洋楽の名曲で盛り上げた。KISS は「小 6 の時にテレビで見て心をつかまれた」という橋本。「(テレビで見た)KISS が火吹きをやっていて、どうしてもやってみたくて、公園で火吹きの練習をしていたこともある」という驚きのエピソードも披露してくれた。
ここで早くも第一部のラスト。“今までなかなか歌えなかった楽曲”というテーマで歌うことになり、橋本は安全地帯の「あなたに」をチョイス。この曲は「歌っていると途中で歌詞とメロディーが僕の涙腺を刺激してくる」と話す 1 曲。そして、橋本の選曲で、アリスの「冬の稲妻」を加藤、橋本のデュエットで披露し、第一部の締めくくりとなった。

休憩を挟んで、第二部は、加藤のやってみたいことを叶えよう、という企画コーナーから。今回は「さとしさんとアニメ主題歌を歌いたいんです」という加藤の夢を叶えることに。このアニメ主題歌のメドレーは圧巻。アニメの有名曲を並べるというだけでなく、『鉄腕アトム』から始まり、『ちびまる子ちゃん』まで、テレビアニメのヒストリーを存分に楽しめる展開となった。『北斗の拳』の「愛をとりもどせ」や、「キャッツアイ」など二人の高音の響き合いと歌声の迫力が見事にジャストフィットする楽曲から、『キャンディキャンディ』や『Dr.スランプアラレちゃん』、『ドラえもん』『アンパンマン』など、ここだけでしか見られないような二人のキャラクターとは全く違う世界も次々に。様々なタイプの曲が詰め込まれた 14 分あまり。思わず手拍子が巻き起こり、観客と一体感も高まるひとときとなった。

「アニソンは血が騒ぐね」と橋本。その興奮も冷めやらぬ中、橋本さんがヴォイスキャストを務めた『リメンバー・ミー』の話に。伝説の歌手・エルネスト・デラクルスを演じた橋本。オーディションで勝ち取ったエピソードなど貴重な話を聞かせてくれた。
この「リメンバー・ミー」に続いては、いよいよ「ミュージカル曲も」と最後のブロックへ。『ミス・サイゴン』の千秋楽の 3 日後に『レ・ミゼラブル』の初日を迎える、という離れ業ともいえる橋本のかつてのエピソードの話になり、(『ミス・サイゴン』の)エンジニアから(『レ・ミゼラブル』の)ジャンバルジャンへと 180 度違うともいってもいい役柄への変化は橋本自身も「さすがにしびれました」と語り、その時の出来事を笑いも交えつつ語ってくれた。
そんな思い出の 2 作品から、橋本は『ミス・サイゴン』の「If you Want to Die in Bod」、そして『レ・ミゼラブル』の「独白」を披露。作品出演後、初めてこの歌を歌うという橋本の全身全霊で演じ、歌うその姿は、役がここに息づいたとしか思えないような迫力で、ステージ上が特別な空間に。さらに、加藤は『レ・ミゼラブル』の「STARS」を披露。威風堂々とした歌いっぷりに会場全体が圧倒された。
そして、二人の共演作品『ラブ・ネバー・ダイ』からは、「なぜ僕を愛する?」を加藤が情熱溢れるパフォーマンスで聴かせ、続く「負ければ地獄」では、二人の掛け合いで舞台上の空気を一変させた。向き合い、時につかみ合い、ぶつかり合うようにして歌うこの姿は、息をのむ迫力で、ここでしか観られない贅沢な時間を生み出していた。
興奮冷めやらぬままいよいよエンディングへ。「最後にもう一つ僕たちが共演した作品の曲を」と『カムフロムアウェイ』から「Stop the world」を披露し、フィナーレを迎えた。 …と、もちろんここで終わるわけもなく、湧き上がるアンコールの拍手に促されて再び二人がステージ上に。

アンコールでは二人で狩人の『あずさ 2 号』を熱唱。これは橋本が“兄弟だと思っている加藤くんと歌いたい曲”と事前に挙げていた曲だという。最後はまた「昭和歌謡」ど真ん中の楽曲を時折向き合いながら、残りの時間をいとおしむように高らかに歌い上げた。
時代を彩った「昭和歌謡」の名曲から理屈抜きで楽しめる「アニメ主題歌」や洋楽、そして震えるようなミュージカル楽曲たち。「表現者・橋本さとし」を生み出したといえる「Roots」の曲たちは、この日の会場を常に幸せな空間にしてくれた。重なり合う歌声に、時代を超えた名曲たちの魅力と俳優としての表現力。さらには二人ならではの軽やかなトーク。その全てが詰め込まれた心を熱くする 2 時間あまりとなった。
なおこのコンサートの模様は 5 月 17 日に CS 衛星劇場で放送される。

(公演後のコメント)
加藤和樹「4 回目を迎える『THE Roots』。今回は橋本さとしさんをゲストに迎えてルーツを辿ったわけですけれど、楽しかったです。さとしさんのエンターテイナーとしての素晴らしさというものを改めて思い知りましたし、その根底にあるものが垣間見えたコンサートになったなと思います。ご出演いただいて嬉しかったですし、またどこかで共演したいと思います」
橋本さとし「和樹くんから、こういう企画があるんですけど、って聞いたときには、即決で“ぜひ、出させて”と答えたんですけど、ただ、コンサートなど、そういったことは今まであまりやってこなかったですし、特にこうやってフルオーケストラのもとでやらせていただくという機会が今までほとんどなかった…というか、どちらかといえば避けてきていたんです。でも、こういう機会を与えていただけて本当に幸せなひとときを過ごすことができました。本当に感謝しています。この恩は必ず返そうと思っています」


