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2018年3月1日 15:41

ミュージカル『ジキル&ハイド』ルーシー役の笹本玲奈インタビュー!「ミュージカルは自分にとってかけがえのない場所だと再確認した」<前編>

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

日本ミュージカル界に新たな旋風を巻き起こし、人間の持つ内面の“表と裏”を描き出した衝撃のミュージカル『ジキル&ハイド』が2018年3月3日より再演される。

主役のジキル博士&ハイド氏には2012年より、今作で3度目となる石丸幹二が続投。さらに、2012年版、16年版でジキルの婚約者エマ役を演じていた笹本玲奈が、今作ではハイドに翻弄される娼婦ルーシー役を演じることでも注目を集めている。

ランランエンタメでは、結婚、出産を経て女優としてますます魅力を増した笹本玲奈さんにインタビューを実施。女優復帰作第一弾として臨む作品への意気込みやルーシー像について、また出産を機に変わったという価値観について話を伺った。

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――『ジキル&ハイド』で歴代ルーシー役の濱田めぐみさんと共演(2012年、2016年)されていますが、これまでのルーシー役にはどのような印象を持たれていましたか?

過去に2回、めぐさんのルーシーを見ながらエマを演じてきたので、私の中でルーシーといったら濱田めぐみさんで固まってしまっているんです。歌の上手な方ですし、しなやかで妖艶な大人の女性というイメージが強く印象に残っています。会見で(田代)万里生くんも言っていましたが、ルーシーは原作には出てこない役。それはすごくありがたいことで、年齢設定や生きてきた背景などを自分の考える役作りでできるということです。今までマルシアさん、香寿たつきさん、濱田めぐみさんといろいろな方がルーシーを演じられていますが、ガラッと違うものを作れるんだという期待感がとても大きいです。

――具体的なバックグラウンドは考えていますか?

ルーシーがヘンリー(・ジキル)のことを「あの人は私に優しかった」と一言話す台詞があるのですが、その言葉ってすごく悲しいと思うし、その言葉が今までのルーシーの人生すべてを表していると感じました。ヘンリーから、たった一言優しい言葉をかけられただけで、ルーシーの内面が変わるほど感動したなんて、きっと親の愛を受けられず、想像もつかないような苦労と残酷な人生を歩んできたことがわかる台詞だと思いました。もちろん男性に心から愛されることもなかったでしょうし、娼婦ですので体は求められても心を見てくれない扱いをされてきて、計り知れない悲しさとせつなさがある女性だとも……。
私は家族みんな仲がよく幸せな人生を歩んできているので、正直、ルーシーの壮絶な人生は想像できないのですが、少なからず女性って愛されていたい、さびしさを埋めてもらいたいという気持ちがあると思います。きっとそういう部分がルーシーに対して女性のみなさんが共感できるポイントなのかなと思います。

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――ルーシー役で大事にしたいことは?

ルーシーは幼少期から不幸な生活を送っていたであろうというのは想像なのですが、その中でピュアな部分も持ち合わせていた女性だと思います。いくら男性たちに体を売っても、芯の部分は純粋で少女のような気持ちを持っているから、ヘンリーの優しさにふれたときに、ガッチガチに鍵をかけられていた純粋な部分が、少しずつ解かれていくのではないかと。その段階をうまく表現できたらいいですね。劇中曲の『あんなひとが』や『新たな生活』は、ルーシーがまだピュアな部分を持ち合わせているからこそ、出てくる言葉だと思います。「私は人生を捨てたの」「どうでもいいの」と装いながら、心のどこかでは憧れや希望や夢を固い箱に閉じ込めて何十年も生きてきた。そんなことをどこかでお見せできたらいいなと思っています。

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『石丸さんは私にとってお兄ちゃんみたいな存在』

――ヘンリーに心惹かれながらも、一方ではハイドの背徳的な快楽にも心が揺れてしまう女心についてはいかがですか?

ルーシーもジキルとハイドのような二面性を持ち合わせていると思うんです。人間ってみんな心で思っていてもなかなか口には出せない、二面性を持っている生き物だと思うので。ルーシーも頭と心では“この人に引っかかってはいけない”とわかっているけれど、体がいうことを聞かないという、一致しないところはどこかでハイドっぽいような……。惹かれる部分はルーシーの中のハイド的な部分なのかなと思いますね。

――ルーシー役は色気というものが大きなテーマになってきますね。

そうですね(笑)。昨日の本読みの時にも山田(和也)さんに「ハイドとルーシーのシーンは最大にセクシーなシーンだからよろしくね」と言われました(笑)。石丸さんとは前回エマ役で美しい夫婦を演じ、『日本人のへそ』という作品では、やくざとその彼女を演じましたが、あそこまで濃密なラブシーンをやるのは今回が初めてなので、ちょっと照れくさいですね。私にとってはお兄ちゃんみたいな存在なので(笑)。石丸さんとあのラブシーンをやるんだと思うと、私自身まだ恥ずかしい気持ちがあります(笑)。

――石丸さんも「声を合わせた時のルーシーの歌声が色っぽくて衝撃を受けた」と絶賛されていたようです。

照れますね()。本当に楽曲も大変な曲が多くて。今までは『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』など自分の音域にピッタリな曲ばかりをやらせていただきましたが、今回の曲はキーの幅も広く、かつ今までのような子供っぽいベルティングで歌うことは許されなくて、ねっとり歌うことを求められる役。この1ヵ月で変わっていきたい、変わっていかなければと思っているところです。
コンサートではルーシーの楽曲も自分らしく歌ってしまえばよかったのですが、いざルーシーとして歌うとなると、声の使い方も違うしメロディへの歌詞の乗せ方もまったく違ってくるので、新しい曲を覚えている感覚ですね。

――ワイルドホーンさんの楽曲の魅力についてはいかがでしょうか?

『ジキル&ハイド』と『ルドルフ』という作品に出ていますが、役者泣かせですよね。本当に喉に負担がかかる曲ばかり(笑)。喉が強くないと出られない作品が多いんです。そのかわり、歌っていると音楽の力に乗せられて次々と感情があふれ出てくる曲が多く、またどこまで転調するのかというくらい転調が多い。『時が来た』をはじめ私が歌う曲も絶対転調しますよね。転調が多いと気持ちも乗ってくるし、観ているお客様も心をわしづかみされますし、音を聴いているだけでも感動してくるのがワイルドホーンさんの魅力であり才能であると思います。

――転調と言えば、前回はエマ、今回はルーシーで役者としても転調されました。

特にイギリスは階級社会なので、エマとルーシーでは階級が頂点と底辺でまったく違います。でも、エマとルーシーもどこかで共通している部分があると思うんです。純粋な気持ちで人を見た目で判断しないような、上辺だけでなく心の中も読み取れることが二人の共通点かなと。だからエマとルーシーが『その目に』をデュエットで歌う場面があるのだと思います。ヘンリーの上辺だけでなく心と向き合っている点では共通していると思いますね。

――この作品の凄味や面白いと思う部分はどのようなところだと思われますか?

人間の本質をついていますよね。舞台を観た後に「楽しかった」と帰るのではなく、「自分にもハイド的な部分があるかもしれない」と考えさせられる作品。もちろん殺人は決してよくないことですが、ハイドが悪者たちをどんどん殺していくのはちょっと爽快だったりするんです。自分でも気づかないところでハイド的な要素があるんじゃないかと思うと怖くなって、「もしかして自分は今思っている自分ではないのでは?」と考えてしまう。この作品はそのようなことに「あなたはどうでしょう?」と投げかけているように思います。それに楽曲の素晴らしさが加わって相乗効果を生んでいる、一切無駄のない作品だと思います。

後編へ続く~

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ミュージカル『ジキル&ハイド』
◆東京公演
201833日(土)~18日(日)
東京国際フォーラム ホールC
◆名古屋公演
2018324日(土)~325日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
◆大阪公演
2018330日(金)~41日(日)
梅田芸術劇場メインホール 

■出演:
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二
ルーシー・ハリス:笹本玲奈
エマ・カルー:宮澤エマ
ジョン・アターソン:田代万里生
サイモン・ストライド:畠中洋
執事プール:花王おさむ
ダンヴァース・カルー卿:福井貴一
宮川浩 / 川口竜也 / 阿部裕 / 松之木天辺 / 塩田朋子 / 麻田キョウヤ / 川島大典 / 杉山有大 / 安福毅 / 美麗 / 折井理子 / 七瀬りりこ / 真記子 / 三木麻衣子 / 森実友紀
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎

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