ミュージカル『赤と黒』は、フランスの文豪・スタンダールによる同名小説を原作に、フレンチロックで紡いだ物語だ。『1789』や『ロックオペラ モーツァルト』などを手掛けたフランスのプロデューサー、アルベール・コーエンにより2016年にパリで初演されて大好評を博している。
今回の演出を手がけるのは、世界中で注目を集める話題作『SIX』共同演出家のジェイミー・アーミテージ。主演は『レ・ミゼラブル』や『千と千尋の神隠し』といった話題作に出演して注目を集める三浦宏規。また、夢咲ねね、田村芽実、東山光明、川口竜也、東山義久、駒田一といった豪華キャストが顔をそろえた。
12月7日(木)に東京芸術劇場プレイハウスにて行われた公開ゲネプロの様子をお届けしよう。
寡黙で聡明な青年ながら野心を内に秘めるジュリアンを演じる三浦は、ミステリアスな佇まい、力強い瞳と歌声が魅力的だ。登場人物の大半を占めるブルジョワ層の中で異彩を放ちながら静かに存在している。一方でダンスとともに激情を吐露したり、恋の悩みに戸惑ったり、二面性に惹きつけられる。ジュリアンの苦悩や憎しみを表現する、しなやかだが熾烈な身体表現が美しい。
また、ジュリアンには様々な試練が訪れるが、ルイーズとの幸せな日々、マチルドとのナポレオン談義や友人であるジェロニモ（東山義久）と過ごす時に見せる笑顔は年相応だ。「ブルジョワへの憎悪」や「出世に対する野心」という言葉から連想するのとは真逆のあどけなさが、物語の美しさや悲しさを際立てていると感じた。
彼を取り巻く女性たちも、対照的ながら魅力に溢れたヒロインだ。信心深く貞淑であるが故にジュリアンを振り回してしまうルイーズ（夢咲ねね）の可憐さ、奔放だが乙女らしい一面も持つマチルド（田村芽実）の愛らしさに、見ているこちらも魅了されてしまう。
そして、町長のレナール（東山光明）とライバル的存在のヴァルノ（駒田一）のバトルは緊張感がありつつユーモラス。見栄っ張りだがお茶目で可愛らしいレナールの言動や悪辣ながら憎みきれない愛嬌のあるヴァルノに、ゲネプロでも笑いが起きていた。
フレンチロックミュージカルと銘打たれている通り、楽曲も本作の大きな魅力だ。
重低音のビートが効いたクールな曲、美しいメロディが胸を打つ曲などがバンドの生演奏で次々に紡がれる。
ジュリアンやルイーズ、マチルドが心情を歌い上げるナンバーはもちろん、マチルドの父であるラ・モール侯爵（川口竜也）の愛情を感じさせるナンバー、ストーリーテラーを担うジェロニモのセクシーなナンバー……。キャッチーで多彩な旋律に印象深い歌詞と情熱的なダンスが組み合わさって物語をさらにドラマチックに彩っていた。
ジュリアンが運命に挑む姿とその結末を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
公開ゲネプロに向けてのコメント
演出／ジェイミー・アーミテージ
私たちが作った新バージョンの「赤と黒」を楽しんでいただけることを願っています。
私たちはこの美しい物語の核心に迫るスリリングな作品にしたいと思い、お芝居、歌、そしてダンスそれぞれに焦点を当てて素晴らしいキャストの皆様と創作してきました。キャストの皆様一人一人が、心震わせる上質な作品を作るために懸 命に取り組んできてくれました。
私はすべてのキャストの皆様そして最高のチームの皆様を誇りに思います。
主演・ジュリアン・ソレル役／三浦宏規
ようやくこの日がやって参りました！
演出家のジェイミーを筆頭に信頼のクリエイター陣、強烈な個性を放つ出演者、最高にロックなバンドメンバー、そして それらを全て支えてくださるスタッフの皆様。
この人達と一緒なら初日も全く怖くない！なんなら初日より怖い関係者が沢山いるゲネプロだって怖くない！笑 そう思える方々と出会えたことを今とても幸せに感じています。
この作品は 19 世紀初頭、ナポレオン失脚後、王政復古の時代となったフランスが舞台のお話です。
それが現代を生きる皆様の目にどう映るのか。何を感じ取っていただけるのか。
様々な感想を是非記事にしていただければと思います。
酷評の方はですね、私、凹んでしまうので、ほどほどにしていただけましたら幸いです。笑
それでは、どうぞ「赤と黒」の世界をお楽しみください。
本作は12月8日(金)から12月27日(水)まで東京芸術劇場プレイハウス、2024年1月3日(水)から1月9日(火)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。
