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2024年2月9日 22:24

香取慎吾らが、寺山修司の世界を現代に描き出す 音楽劇『テラヤマキャバレー』 が開幕

平間壮一  村川絵梨  伊礼彼方 香取慎吾  成河 凪七瑠海 デヴィッド・ルヴォー 池田亮

没後40周年を迎え、稀有な才能に再び注目が集まっている寺山修司。彼が今生きていたら何を思い何を表現したのかを、脚本 池田亮、演出 デヴィッド・ルヴォー、主演 香取慎吾主演で描き出す。初日を前に舞台挨拶とゲネプロが行われた。

舞台挨拶には、脚本の池田亮、演出のデヴィット・ルヴォー、主演の香取慎吾、成河、伊礼彼方、村川絵梨、平間壮一、凪七瑠海が登壇した。

池田は「寺山修司さんが今まで書いてきた戯曲や詩、エッセイなどを読み漁り、今生きている自分たちがどういうものを作れるかセッションしながら作ってきました。その中で思うのが、多くの人に影響を与えた寺山修司という人の言葉を、今生きている自分たちがどう面白く表現できるかということに対峙し続けたということ。文字で書いていたものが、俳優の肉体を伴ってこれほど立体的になるとは思っていませんでした。書いたのは僕ですが、皆さん、そして観客の皆さんによって完成する作品だと思っています」と、脚本に対する思いを語る。

演出のルヴォーは「寺山修司との出会いは、彼の劇団がロンドンに来たときでした。当時は若く、自分が将来、日本の演劇と関わるとは思っていませんでした。今回は非常にラッキーなチャンスでした。亮さんと何回も打ち合わせをし、エンターテインメントを作っていきたいこと、一人の芸術家が我々は何者かを探るような物語にしたいと決めました。そのため、制作にあたって日本の様々な芸術を旅するような形の作品になりました。個人的なことを言えば、日本の演劇に対する私からのラブレター。日本で学んだ様々なことへのお返しです。幸運にも、才能あふれるキャストの皆さんとご一緒し、色々なチャレンジができました」と、本作や日本への思いを明かす。

香取が「寺山修司さんが亡くなるストーリーですが、僕はこの稽古中に彼が亡くなった年齢と同じ年になりました。寺山修司役ですが、彼ではない瞬間もあって不思議な感じ。見ていただくとわかる通り、みんなとんでもない格好(笑)」と話すと、平間が胸を張ったり、伊礼が「あなた(寺山)が作ったんでしょう」とツッコミを入れたり、和気あいあいとした雰囲気。

香取は「池田さんが寺山さんの言葉を拾い集めて紡いでくれ、ルヴォーさんがそれを優しく一人ひとりに植え付けてくれました。稽古をするうちにこの世界大好きになりました。観に来ていただいた方にも、夢の世界を感じていただける作品になっています」と語る。

成河は夢の中の劇団員・白がゆ役。「日本で演劇を作る外国人演出家は多くいますが、ルヴォーさんほど日本の芸能や日本語、日本自体に対する興味・関心を持ち続けている方はそうそういません。30年間日本のことを考え続けてきたルヴォーさんの集大成になっていると思います」と話す。

伊礼は「いつもはシュッとした役や悪役が多いですが、新たなチャレンジです。僕が演じる蚊は寺山さんが肝硬変で亡くなったというイメージで生まれた役だそうです。脚本を読んだ時はちんぷんかんぷんでした。でも通してみるとすごくエネルギッシュ。32公演できる気がしません(笑)。蚊はいろんな人の血を混ぜて新しい刺激を求めていきます。この作品でも、キャスト・スタッフのエネルギーが混ざって客席に伝わったら刺激的なショックを受けてもらえると思います。全部受け止めて帰ってください!」と熱くアピールする。

凪七は「私は、ご自分が亡くなると気づいていない寺山さんに時計の針が止まったと伝える死の役。私自身、宝塚以外の作品に出演するのは初めて。全てが新鮮で刺激的で衝撃です。ただただ圧倒される日々でしたが、ルヴォーさんの演出のもと、皆さんから多くを学んでいます。死としてこの作品にエッセンスを加えられるように頑張ります」と意気込み、村川は「劇団員・アパートをはじめ、色々な役を演じます。何も想像できないまま稽古に入り、ルヴォーさんのもと未知の旅をしてきました。お客様も想像できないと思いますが、伊礼さんもおっしゃったように、熱量とジェットコースターのような緩急が待ち受けています。皆さんの感想が楽しみな作品です」と期待を寄せる。

平間は「稽古中にルヴォーさんが戦争の話をしてくださったことがありました。その理由は、この作品が人間や愛、正しい・間違っているなど、人間に関する色々なことがテーマになっているからだと思いました。僕のセリフで「不完全なものが消え去っていってしまうんです」というものもありますが、最近は完璧なものを求めがち。だけど、間違っていつものに面白みがあったり、不完全だから深みがあったり、みんなで一つのことを考える中でコミュニケーションが広まったりする。人間って素敵だと直感的に思うことが多い作品だと思います。セリフ以外の部分で温かみを感じる作品だと思いました。その理由は、池田さんやルヴォーさん、慎吾さんの愛や熱量があるから。深い愛を受け取りに劇場に来てくれたら嬉しいです。」

続いて、池田とルヴォー、香取による質疑応答が行われた。

香取演じる寺山の仕上がりについて聞かれたルヴォーは、「役者としての慎吾さんをとても尊敬しています。自然と観客の皆さんと一体化して繋がれる、とても恵まれた才能があると感じます。特にこの作品は、寺山修司という役が客席と繋がる必要があります。(香取は)語り手として本当に素晴らしいと思っています。ご一緒するのは今回が初めてですが、稽古初日に「舞台で客席の皆さんと繋がってください」と伝えました。初めてやった時、魔法の世界が広がり、これはいい作品になると感じました。この物語を一緒に作るのが非常に楽しかったです」と絶賛。

稽古中のエピソードを尋ねられた香取は「稽古は1月頭から毎日やっていて、舞台の経験が多い方ではないので、「本当に毎日やるんだ」とびっくりしました。あと、稽古が始まってすぐルヴォーさんから「君はシャイなのかい?」と聞かれ、「シャイじゃなく必死なんです」と答えて初めて、役者としての自分が必死だったと気付きました。ルヴォーさんが優しく導いてくれるので、みんなで演出と池田さんの本を信じてここまで進んできました。千秋楽まで頑張ります」と意気込んだ。

続いて池田に、脚本を書くときに寺山と香取を重ねた部分があるかという質問が出る。池田は「かなりあります。書き方としては、寺山修司の書物を寝ずに読む、ということをして、眠気の限界が来た時に慎吾さんのことを考えて爆睡し、その時の夢を書き出すみたいな。自分の頭の中で慎吾さんと寺山修司さんが混ざり合っているような。共存しているイメージなので、二人を当て書きしたような感じになりました。慎吾さんにこんなセリフを言ってもらいたい、こんな歌を歌ってほしいという思いで。本作のキーとして「質問」というものがあるんですが、台本が僕から慎吾さんに「こういうものをやっていただけますか?」という質問になっていた感覚です」と、台本に込めたメッセージを明かす。

また、初日に合わせて、作中で香取が歌うソロの1つである「質問」の配信もスタートした。香取は「もちろん名前は知っていましたが、詳しくは知りませんでした。この作品をやることになり、ルヴォーさんと池田さんに色々教えていただく中で役が育っていきました。複雑さ・難しさを感じたものの、その先には僕も感じたことがある、「生きる」ということがあり、それが寺山修司という人なのかなと感じています。今回は音楽劇になっていて、「質問」という楽曲を作中でも歌います。約3年前にプロデューサーからの思いを聞き、いつか歌えたらと思っていたところにこの舞台のお話をいただき、寺山修司さん作詞の曲と舞台が繋がって配信させていただくことになりました。「質問」というのが舞台でもとても大切なキーワードになっています。僕もたくさんの質問を、舞台からもこれからも色々な方に投げかけていきたいと思います。ぜひ聴いてください」と思いを語った。

香取「日常生活の中で、笑顔でいることばかりじゃないと思います。劇場に来ていただき、この作品を見てもらえたら、帰る時に上を向いて自分の中に残った言葉を見つめる時間が訪れると思います。少しでも先の未来の笑顔に向かっていける作品です。ぜひ劇場に足を運んでいただき、何かを感じ取ってもらえたらと思います」と締め括った。

会見でルヴォーが香取に「客席と繋がってほしい」と伝えたと話していたが、ゲネプロを見るとその理由が理解できた。夢と現実、寺山が生きていた時代と現代がリンクしていくような不思議な感覚になる作品の中で、香取演じる寺山の言葉が力強く響く。寺山が紡いだ言葉や世界を再構築し、今だから作れる作品をカンパニー全員が熱量を持って描き出していると感じた。

また、アングラな雰囲気の衣装や美術も魅力的。寺山がオーナーを務めるキャバレーのメンバーが勢揃いすると、個性豊かで見応え十分だ。寺山作品のポスターを連想させるモチーフが散りばめられたビビッドな世界は見ているだけでも楽しい。

寺山の言葉を一つひとつ丁寧に届けるような香取のソロがあったり、ユーモラスなダンスや演出で楽しませてくれる楽曲があったりと、音楽劇としての魅力にも満ちている。夢の世界を、ぜひ劇場で体感してほしい。

本作は2月9日(金)~29日(木)まで日生劇場で上演され、3月5日(火)~10日(日)には梅田芸術劇場メインホールでも公演が行われる。

 

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