取材:記事・写真/RanRanEntertainment
ミュージカル「デスノート」、東京・新国立劇場で2日から待望の東京公演を控え、9月1日(金)にゲネプロが公開され、囲み取材に、主要キャスト浦井健治、柿澤勇人、小池徹平が顔を揃えた。
柿澤勇人 浦井健治 小池徹平
3000万部を超える発行部数を打ち立て、アニメ、映画、ドラマ化などでも人気を誇る、言わずと知れた圧倒的なキラーコンテンツだ。2015年には「デスノート THE MUSICAL」として舞台化され大好評となった。そんな「デスノート THE MUSICAL 2017」に浦井健治、柿澤勇人、小池徹平のオリジナルキャストが2年ぶりに集結。リューク役に石井一孝、夜神総一郎役に別所哲也を迎えるなど、新たな魅力も加わり、こちらも絶賛の舞台となっている。
闇の中で不気味にカウントダウンを始めるデジタル時計。突然始まる「キラ」賛美の合唱。幕が上がった直後、私たちは一気に「デスノート」の世界に引き込まれる。「デスノート」とミュージカルの融合。これだけを聞くと原作ファンには違和感を覚える人も多いだろう。しかしこの「デスノートTHE MUSICAL」は、驚くほどに「デスノート」の世界観そのものを体現する。
韓国では日本版の演出ごと輸出され、韓国キャストで上演された舞台が韓国の主要新聞の一つイーデイリー紙が選ぶその年のベストミュージカルにも選出されている。今回の再演はその評価を受けたものであり、7月に行われた初の海外公演である台湾公演も、満員の観客にスタンディングオベーションの熱狂の中で幕を閉じた。囲み取材に応じた夜神月役を務める浦井健治、柿澤勇人(ダブルキャスト)、L役の小池徹平が台湾公演の観客の熱烈な反応についてこう語る。「熱かったね(浦井)」「カーテンコールとか『キーヤ-ァ』っていう熱狂というか、叫び声というか。舞台中でも笑い声とか『うわぁ』っていう日本では味わったことがないような反応があって、演ってる側も新鮮で楽しかったです(小池)」「カーテンコールでは黄色い声援を僕たちに向けてくださってアイドルになったようでした(柿澤)」「完全にそう思って勘違いしました(浦井)」「(浦井が)裏でずっとニヤニヤしてました」
海外でも高い評価を得ているこの作品。音楽は『ジキル&ハイド』など大ヒットミュージカルを生み出すブロードウェイの作曲家、鬼才フランク・ワイドホーン氏が手掛ける本格的なもの。もちろんオーケストラピットを持った生演奏で俳優たちの息遣いを感じながら、デスノートの世界観を高めてくれる。
夜神月やL、リュークやレムなどそれぞれのキャラクターに対してもこだわりや、愛着を持つファンが多い「デスノート」。初の映画版で夜神月とLを演じた藤原竜也と松山ケンイチの評価が高すぎた故に厳しい目を持たれがちだ。「デスノート THE MUSICAL」では、原作キャラクターの再現率が高いことも舞台好評の理由の一つだろう。特に小池演じるLや今回新キャストとなった石井一孝が演じるリュークなどは、視線やしぐさ、立ち居振る舞いなど原作キャラクターそのものといった感じで「デスノート」の世界が舞台の中に完全に立ち上がる。一方で、濱田めぐみが演じるレムなどは、独自の演じ方ではあるが「デスノート」という世界観の中には完璧にはまっている。これはキャスト一人ひとりが「デスノート」という作品への深い理解や、リスペクトも持っているからなのだろう。
キャストたちの歌唱力も特筆すべき点だ。ミュージカル版のデスノートでは、狂気に落ちていく夜神月や、弥海砂やレムや報われない想いなどが、音に載せることにより観客の胸に迫ってくる。また重要な役割を担っているのが総勢18人からなるコーラスの存在だ。ある時は、クラスメート、街中の通行人として登場するコーラス隊が、何気ない日常の中を表し、「新世界の神」を語る夜神月という特異な存在を浮き上がらせる効果を果たす。
再演として集結したキャスト同士のつながりも深いようだ。囲み取材では、お互いのコメントに「そう、そう」と深くうなずいたり、ツッコんだりと仲間内のノリで楽しそうに話す3人が見られた。浦井を「健ちゃん」と呼ぶ柿澤は、小池について「僕はLと対峙する役ですが、芝居中に目が合うと安心するんです。劇中では殺し合う役ですけど、プライベートでは愛し合ってます」と話す。小池は苦笑いしつつも、「二人とも私生活でも舞台でもむちゃ振りしてくるので、(Lの目の下のクマが)リアルにできそうなぐらいですけど、こんなパワフルな二人の相手ができて、それを相応の力で返せると自分の力にもなりますし、贅沢な環境です」と楽しそうに語った。この二人のパワーに打ち勝つために「すげえ、肉食べてます」と語る小池。そして「びっくりしたんですけど(小池は)セグウェイで移動してます」と浦井からの暴露もあった。この日のゲネプロでは、浦井と小池がカーテンコールでお互いに舞台の上手と下手にはける時、サインを送り合うという抜群のコンビネーションを見せていた。「各々が積み重ねてきたものをぶつけあうより高め合える関係」だと小池が語る通り、舞台での月とLの演技のぶつかり合いも見所の一つとなっている。
「一回一回を大切に。なぞらないこと」と栗山監督からは指導を受けたと話す浦井は、ミュージカルとなった「デスノート」の魅力について「原作ファンにずきんとくるセリフが歌になっていることも魅力。一回、一回消えていくけど、お客様の中に残るような宝物になればいいかなと思っていますね」と印象的な言葉を残した。小池は「1枚の板の上での集約された『デスノート』で、テンポもいいですし、とにかく勢いがあって、パワーと熱量のある作品です。劇場でしか体感できない『デスノート』だと思います」と締めくくった。
製作サイドから「ドーバー海峡を超えるという夢がある」と聞かされたと語る3人。今や日本が誇る文化となった漫画やアニメから由来するミュージカルが、ブロードウエイの才能と手を組んで、イギリス・ロンドンのウエストエンドで上演される日がくるのかもしれない。「デスノート」というコンテンツの魅力、そして「デスノート THE MUSICAL」の完成度の高さがその日が来ることもそう遠くない未来にあるように思わせる。この日の舞台では、取材に訪れた記者たちからの拍手が鳴りやまずゲネプロとしては異例の2回のカーテンコールが行われた。
「デスノート The Musical」ミュージカルは6月の富山公演で幕を開け、7月の台湾公演、8月の大阪公演を経て、9月2日~24日に新国立劇場・中劇場で上演される。
また、9月18日(月)12:30公演終了後に『浦井健治&柿澤勇人 アフタートーク』が、9月20日(水)13:30公演終了後には『石井一孝&濱田めぐみ 死神トーク』の開催が決定している。
キャスト
夜神月:浦井健治 / 柿澤勇人(ダブルキャスト)
L:小池徹平
弥海砂:唯月ふうか
夜神粧裕:高橋果鈴
レム:濱田めぐみ
リューク:石井一孝
夜神総一郎:別所哲也
公式HP http://hpot.jp/stage/death-note