取材・撮影/RanRanEntertainment
舞台『室温〜夜の音楽〜』開幕前取材会およびゲネプロが6月24日(金)に世田谷パブリックシアターで行われ、古川雄輝、平野綾、浜野謙太、演出の河原雅彦が登壇した。
本作は、演劇界の第一線を走り続けるケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出を手がけた、ホラー・コメディ。人間が潜在的に秘めたる善と悪、正気と狂気の相反する感情を、恐怖と笑いに織り込んだ。河原による新演出版となる今回の上演では、河原の指名により、浜野がフロントマンを務める、ディープファンクバンド「在日ファンク」が全編生演奏で作品を盛り上げる。
取材会では、河原が「今まさにラストシーンの灯りを作っている最中で、今はパツパツですが」と苦笑いをしながら口火を切ると、「21年前にこの舞台の初演を拝見してからずっと頭の片隅に残っていました。今回、素晴らしい俳優さんたちを迎え、この人たちが引き受けてくれなかったらできないなと思っていた在日ファンクさんがバンド丸ごと参加してくれ、そしてハマケン(浜野)くんが、役者とボーカリストを兼ねてくれたので、こうして実現できました。とても嬉しいです」と挨拶。
「もちろん、美術も全て立ち会っている中で決めているので、(どうなるのかは)わかっていたんですが、劇場に入って(実物を)見たら、ちょっと引きました。うわーって」というほどこだわり抜いた美術セットだけに、河原は「個性的で、オリジナリティ溢れる舞台になるんじゃないかなと思っています」と胸を張った。
主演を務める古川は、舞台出演は3年ぶり。古川は「前々作ではこの世田谷パブリックシアターでやっていたので懐かしさもありますし、ワクワク感と緊張感もあります。とにかく早くお客さまに楽しんで観ていただきたいです」と思いを寄せた。
そして、本作の脚本について、「人間の二面性を描いている脚本だと河原さんがおっしゃっていましたが、誰とお芝居をしているかでお芝居のテイストを変えるようなやり方になっています」と説明し、「河原さんがすごく気になさっているのは、周りのリアクション。何かが起きているときに、周りのリアクションで笑いが起き、そのシーンが完成する。そうした演出をされていることが多かったので、舞台上に立っているときの他の方へのリアクションや細かい動作は気にしてやれたらいいなと思います」と語った。
一方、平野は「ストレートプレイは3年ぶりくらいですが、新鮮な気持ちで取り組むことができたと思っています。この作品は、ミュージカルではないですが、これだけ音楽がふんだんに入っている作品は出会ったことがなかったので、新しいジャンルを見ている感覚がありますし、観てくださる方もそれを感じていただけると思います。新しいジャンルが立ち上がる瞬間に立ち会えて嬉しいです」と笑顔を見せた。
また、「在日ファンク」として生演奏を披露するだけでなく、役者として運転手・木村役を演じる浜野は「思ったよりも、こっちに出て、あっちに出てと“また出ているよ”ってなるのでうざくならないように、みんなを立てられればという気持ちでやっています」と冗談めかしてコメントした。
取材会の最後には、古川は「ホラー・コメディというジャンルなので、怖さとクスッと笑ってしまう面白さを劇場で楽しんでいただけたらと思います」と締めくくった。
STORY 田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の娘・サオリの命日に、様々な人が集まってくる。巡回中の警察官(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという赤井(長井短)。そしてタクシー運転手(浜野謙太)は腹痛を訴えて転がり込み、加害者の少年のひとり、間宮(古川雄輝)が焼香したいと尋ねてくる・・・。
焼香を申し出る間宮(古川)を拒むキオリ(平野)
第1幕終盤には、空から・・・。
タクシー運転手・木村を演じる浜野は、ボーカルでは毎回衣装を替えて登場。着替えの速さも見どころ。
舞台『室温〜夜の音楽〜』は、6月25日〜7月10日に東京・世田谷パブリックシアター、7月22日〜24日に兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演。