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2019年12月7日 11:19

長塚圭史が戦後を代表する劇作家・秋元松代の最高傑作に挑む!白石加代子、中村ゆり、平埜生成らによる舞台『常陸坊海尊』いよいよ開幕!

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

KAAT神奈川芸術劇場(芸術監督:白井晃)では本年 4 月に芸術参与に就任した長塚圭史の就任後初演出の舞台『常陸坊海尊』(全三幕)が127日(土)より幕開けとなる。その前日の6日(金)に公開舞台稽古が行われた。出演は、白石加代子、中村ゆり、平埜生成、尾上寛之ほか。

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本作は、劇作家・ 秋元松代の最高傑作といわれ、日本にオリンピック大会が初めて招致された1964年発表当時、日本の演劇界に衝撃を与えた伝説の戯曲『常陸坊海尊』。歌舞伎『勧進帳』にも登場する常陸坊海尊を題材にしている現代劇だ。東京から学童児童として疎開に来た啓太と豊は、ある日雪乃(中村ゆり)という美しい少女に出会う。そして、常陸坊海尊の妻と名乗るおばば(白石加代子)と暮らしている雪乃に二人は海尊のミイラを見せられる・・・。

319A1986s疎開に来た啓太と豊(いずれも子役)は、ある日雪乃(中村ゆり)という美しい少女に出会う

319A2049s海尊の妻と名乗るおばば(白石加代子)と暮らす雪乃に、二人は海尊のミイラを見せられる

 

主君源義経を裏切った卑怯な逃亡者、罪深い裏切り者として汚名を残した常陸坊海尊は、義経の死後、自らの罪を懺悔して東北各地を流浪し、義経の武勇を語り歩く琵琶法師となって生き延びたとする仙人伝説が生まれた。戯曲では「自分の罪を悔い、懺悔し救いを求めた人間が、逆に救いを与える救済者になる」と語り聞かせて流浪する。

長塚は、「これは現在の私たちの社会に痛烈に響く現代劇です。そして私たちの踏みしめるこの大地に流れる血脈を知ることの出来る覚醒劇でもあります」とコメントを寄せている。

暗黒がメインの舞台、そしてシンプルな舞台装置が印象的だ。主役は常陸坊海尊なのだろう。しかし、常陸坊海尊はミイラと化し、海尊の“なれの果て”と称する四人の海尊が登場するが海尊として登場する時間はごくわずか。

ストーリーを引っ張っていくのは雪乃で、中村は可憐な少女と第三幕(16年後)での妖艶な巫女を見事に演じ分けている。貫禄たっぷりのおばばを熱演する白石は、第三幕には出てこない。

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雪乃に魂を抜かれて抜け殻となった啓太(平埜生成)

319A2211s成人した豊(尾上寛之)は、16年後、岬に近い格式の高い神社を訪ね、啓太と再会

 

第三幕では、東京に戻って成人した豊(尾上寛之)が、ある格式の高い神社で、巫女をつとめる雪乃と戦後おばばたちと共に消息を絶った啓太(平埜生成)を目撃する。魂を抜かれ抜け殻となった啓太、あざわらうかのように子守歌をうたう雪乃・・・。啓太は海尊に救いを求めるが、やがて自分自身が海尊となり、自らの罪を懺悔するため琵琶を抱いてさまよっていく。覚醒していく啓太を演じる平埜の熱演が本作のクライマックスだ。

319A2327s赤子を抱き、妖艶な雪乃

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第三の海尊(真那胡敬二)に救いを求める啓太

319A2418s琵琶を奏でられるようになり自らが海尊となる啓太

 

各幕の終盤に登場する三人の琵琶を弾く海尊(大森博史、平原慎太郞、真那胡敬二)、田中知之(FPM)の音楽も印象的だった。

 

長塚圭史(演出)コメント  秋元松代最高傑作とも言われる「常陸坊海尊」を演出することになってしまいました。しまいましたというのは極めて困難な道程になることは明白だからです。生半可な劇ではないのです。しかしこの険しい道の先にはきっと眩い光があるという確信が私を突き動かします。これは現在の私たちの社会に痛烈に響く現代劇です。そして私たちの踏みしめるこの大地に流れる血脈を知ることの出来る覚醒劇でもあります。絶頂を目指して濃厚なスタッフ・キャストと共に邁進して行きたいと思います。

白石加代子(おばば役) コメント 長塚圭史さんの作品への独特なアプローチをわたしは「探検」と呼ぶことにしています。お稽古場はさながら深い森のようで、出口を探し、スタッフ・俳優一丸となって藪をかき分けて一歩一歩進んでいく、つまり探検隊です。しかも長塚さんは安易な道がお嫌い。(笑) 「常陸坊海尊」はさらに巨大な森です。何度かご一緒したわたしに分かることは、一筋縄ではいかないこの作品が長塚圭史さんを探しあて、身を委ねたのだと思います。わたしもしっかりついていき、一緒に探検を楽しみたいと思っています。

田中知之 (FPM)(音楽) コメント 長塚圭史君から、直々に音楽の依頼を受けて、断る理由なんてあるはずがない。実はまだ企画の概要を聞いて戯曲を受け取り、軽くそれを読んだだけで、何ら具体的なディレクションを受けたわけでもない。なのに私の中で壮大な妄想が膨らんで、巨大な怪物が生まれようとしている。私はまだ指一本動かしていないし、鼻唄の一節さえ諳んじていないのだが、この怪物がさぞかし良い仕事をしてくれるだろうという期待しかない。

319A2059s319A2178s上:第一の海尊(大森博史)  下:第二の海尊(平原慎太郞)

 

原慎太郎(第二の海尊役) コメント 常陸坊海尊を題材にと長塚氏からお話しがあり、その戯曲を読み一気に引き込まれました。で、ふと物語の中の身体を考えた時に「永遠を生きる身体」とはどういったものかと立ち止まりました。皮膚の動き、呼気の状態、体重を感じさせないだろう所作など、全てが現実のそれとは逸しているのではないか。さらにそれを取り巻く環境とはー。自然も人も今より生きていた時代のお話と察します。その「生きる肉体」にしっかりフォーカスを当てて長塚氏の世界観と物語を彩る一部になればという風に思います。妖にこそ肉体が付随するという事を信じて。

 

舞台『常陸坊海尊』
2019127()22 ()※27日(土)・8日(日)はプレビュー公演
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
<兵庫公演>2020111日(土)、12日(日) 兵庫県芸術文化センター阪急中ホール
<岩手公演>2020116日(木) 岩手県民会館 大ホール
<新潟公演>2020125日(土) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

 

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