取材:記事/RanRanEntertainment 写真提供/オフィシャル
南原清隆と近藤芳正による二人芝居『あんまと泥棒』が開幕目前の11月26日(木)に公開ゲネプロと囲み取材が行われた。
掲載写真撮影:宮川舞子
本作は、1951年にNHKラジオドラマとして放送され、その後、故中村勘三郎たっての希望で1966年に舞台化された人情喜劇。2019年に劇作家・演出家の倉持裕が脚色・再構築し、南原清隆、近藤芳正出演で、愛媛県内子座にて一日限りの公演が行われた。その幻ともいわれる舞台が、下北沢・本多劇場で復活する。
南原は、業突く張りな盲目のあんま・秀の市を、近藤はあんまの元に忍びこんだ人のいい泥棒・権太郎を演じる。
南原と近藤は本番の衣装を身に着け登壇。2019年の愛媛県内子座での公演の思い出を問われた南原は「大正時代から100年も続く由緒ある舞台小屋だったので、夜が明けるシーンでは、それに合わせてカーテンを開けると日光が入ってくるという演出でした。去年は平和だったので(笑)。皆さんのいる桟敷に降りていったり、地元の方との交流するような、お芝居の原点のような体験ができました」と語り、近藤も「木造だったので、お客さんの笑い声とか拍手の音が、初体験の興奮を呼ぶような振動で伝わってきました。お客さんとの一体感がめちゃめちゃ楽しくて、またぜひどこかの芝居小屋でやりたいねという話をしていたんです」と話し、本多劇場については「小劇場のメッカですから。若い時にはここに立つことが目標だったんです。ここに今立てるというのは幸せなことでございます」と、自身の昔を振り返っていた。
前回の公演の時には、南原を誘ったのが近藤だが、劇団七曜日時代から、ウッチャンナンチャンとは顔見知りの近藤は、「プロデュースをやるようになって、ナンチャンに出てもらって以来の知り合いで、内子座でやると決まった時に、ナンチャンは狂言もやって、全国の小屋も慣れているから、ふっと(南原がいいと)浮かんだ」そうだ。南原の魅力は、「役と素の出入りが非常にスムーズにでき、なかなか役者にはできないことなんです。役者には無い魅力で、そこが大好き」と熱く語った。南原は「近藤さんは、僕がアドリブで言ったところを受け止めてくれるので、非常にやりやすい」と返した。
この一年を振り返り、近藤は「津川雅彦さんがよく生前おっしゃっていた“起きたことが正解”という言葉がコロナになってからずっと頭の中に流れていますね。ちょっとくじけそうになった時にはこの言葉が自分自身の指針になっています。苦しみながら楽しむこともあると思いますので、前向きに楽しんでいきたいなと思っています」と心情を吐露した。
南原は、「一年が二年ぐらいに感じたぐらい、いろいろなことがありまして、その中で、できる事を探してやってきました。日常の有難みもわかりつつ、人と人との絆が、やっぱりそこが大事なんだなぁと改めて気づかされました。これからも状況は変わっていくと思いますが、人と人との絆を大切にしながら進んでいきたいと思います。先程の津川さんの言葉を心に秘めまして、僕の場合は“朝起きれたら爽快”(笑)」と語った。
最後に、近藤は「2年ぶりにナンチャンと一緒にやらせていただきます。人情喜劇です。歌舞伎にも落語にもなっている楽しい芝居です。コントのような部分もあります。今の世知辛い状況ではありますが、ナンチャンと近藤とのやり取りを笑っていただけたらと思います」、南原は「今だからこそ、ほっこり笑ってもらって、明るい方へ明るい方へ、持って行ってもらいたいと思います。配信もやっていますので、そちらの方もぜひチェックしていただけたらと思います」と締めくくった。
続いて行われた公開ゲネプロでは、二人はまず、黒子の衣装で登場。どこまでが台詞で、どこからがアドリブなのか?どこからが芝居なのか?風刺もたっぷり効いた舞台となっている。あんま・秀の市(南原)と泥棒・権太郎(近藤)の掛け合いは、次に何が出てくるかわからない、近藤が会見で語っていたように、役に入ったり、素に戻ったり、鮮やかな転換が見逃がせない、笑い一杯の舞台である。
■日程 2020年11月27日(金)~29日(日)
■会場 本多劇場
■脚本 村上元三
■脚色・演出 倉持裕
■出演 南原清隆 近藤芳正
■主催・製作 (株)M&Oplays
※『あんまと泥棒』ストリーミング配信について(11月29日(日)13時公演を収録)
視聴券販売URL https://eplus.jp/anma-streaming/
(ご購入にはイープラスの会員登録が必要です。)
視聴券販売期間:11月24日(火)~12月15日(火)22:00
動画配信期間:12月9日(水)12:00~12月15日(火)23:59
【あらすじ】
夜更け、泥棒・権太郎(近藤芳正)は、あんま・秀の市(南原清隆)の家へ泥棒に押し入る。権太郎は、秀の市が高利貸しの烏金を貯めていると噂を聞きつけ、秀の市に金を出すように迫る。しかし、秀の市はしらばくれて、利息はもらっているもののほとんど貸し倒ればかりだと言い逃れる。権太郎は金のありかを白状させようとするが、秀の市はとぼけるばかり。やがて、二人は台所にある焼酎を飲み始め、お互いの身の上話を始める。そのうち、日が昇り始めるので、権太郎が家の中を物色し始めると、位牌が出てくる。すると、秀の市は死んだ女房に仏壇を買ってやりたいが、金が貯まらないと言って涙を流す。これを気の毒に思った権太郎は、盗みを諦め、秀の市に金まで与え出ていく。これに感謝する秀の市だが …。